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『愛慾に至る病』 あとがき

こんばんは、渡橋銀杏です。
この度、第44回の横溝正史ミステリ&ホラー大賞に応募させていただく作品
「愛慾に至る病」が完成しました。
https://kakuyomu.jp/works/16817330656171308439

あとがきはすでに2回ほど書いているのですが、この作品。現時点で自他共に認める代表作となったこの作品の完結、および公募への応募を経て、渡橋銀杏という作家の生き方について考えさせてもらいました。

あとがき兼決意表明のような形の記事として読んでもらえると幸いです。

あとがき

まずは、愛慾に至る病を読んでいただきありがとうございます。

この作品のタイトルは、皆様もご存じであろう名作ぞろいの「~~に至る病」という作品群からいただいています。
キルケゴールの「死に至る病」
我孫子武丸先生の「殺戮に至る病」
櫛木理宇先生の「死刑に至る病」
斜線堂有紀先生の「恋に至る病」

それらの作品、そして敬愛する湊かなえ先生の作品など様々な作品のキメラ的な作品だと思っています。間違いなく、これまでの読書経験が作り上げてくれた、十年間の読書生活を結晶化させた作品だと思います。

この作品は、元々が鷹山彩音、新村翼、梶原良太の三人にフォーカスした悲恋を描こうとした話でした。主人公の後藤光誠や、長峰千草などは影も形もなく、その時点と共通しているのは鷹山彩音が亡くなること、そして新村翼と梶原良太が性的な関係にあること。それくらいだと思います。

では、なぜそれを方向転換したのか。それは、映画「死刑に至る病」を見終わった後に、ふと降りてきたという表現が最も正しいと思います。素晴らしい作品と、素晴らしい演技。非常に楽しませていただきましたが、「愛慾に至る病」とストーリーの大筋として共通する部分は、上記にあげた四作品の中でも最も少ないと思います。なぜ、その映画を見たとたんにストーリーが降ってきたのかはわかりません。もしもこの作品が賞をいただいて書籍化されれば、それは神様からの贈り物だというふうに解釈したいと思います。

そこからは早く、一日で一万文字を書きあげるほどのスピード。まさに勝手に手が動くというか、一時間で六千文字をかけることもありました。何も考えずに、気づけばキーボードをたたいている。アイデアが浮かばないことよりも、手が疲れてしまって執筆ができない。こんな経験は初めてでした。

間違いなく、渡橋銀杏を変えた作品と言えます。

登場人物の名前の由来

後藤光誠 
「誠」という文字をいれたかっただけです
鷹山彩音  
名前を考えていると、戦国時代の武将である鷹山弘頼が目に入りました
梶原良太
考えている間に、キングコングの梶原さんの顔が浮かびました
新村翼
男性でも女性も使える名前が良かったので、翼にしました
長峰千草
三秋縋先生の「君が電話をかけていた場所」「僕が電話をかけていた場所」に登場する、荻上千草という登場人物から拝借しました。

最終の改稿を終えて

改稿を終えた感想は、「大丈夫かな」でした

ありがたいことに、たくさんの方からお褒めの言葉をいただき、アドバイスをいただきました。自分の中で武器になるものは、恋愛、性的衝動に至る際の心情描写であるということを確認させていただきました。

ですが、アドバイスでもいただき、個人的にも感じていた「ミステリー」としての弱さは払拭しきれていませんし、完成度も高くはないと思います。
一般的な書き方としては、
謎の提示(主人公の恋人である彩音の死)
       ↓
それに向かって解決する様子やそのヒント(?)
       ↓
解決編(彩音の死、そして女子高生連続殺人事件の真相)

となるはずですが、最新の改稿版を読んでいただいた方ならわかると思いますが、この作品で双方の謎を解き明かすのはただの女子高生です。推理パートもなければ、主人公との会話も10ラリーくらいしかありません。

読者が謎を解こうとする場合は、主人公の視点から語られる登場人物がそれぞれ胸に抱く愛から推理するしかないという、ハチャメチャな構成です。

心配要素としてはそれです。ですが、この作品の謎が彩音の死の真相ではなくて、「愛とは何か」という問いかけである場合はどうでしょう。

謎の提示(愛とは何か?)
       ↓
それに向かって解決する様子やヒント
(過去と現実を行き来する視点から紐とく、五人の抱える愛のカタチ)
       ↓
解決編(五人の愛をそれぞれ解明し、それを解決編とする)

かなり無理筋ですが、これなら物語として成立はします。
こういう作品を書く、そうすることしか小説家・渡橋銀杏の生きる道はないと思います。自分よりも面白いミステリーを書く人はたくさんいますから。

ですが、自分よりも「愛」について書ける人は見たことがありません。
(勉強不足かもしれませんが)
家族愛、友人愛、恋愛などジャンルを分ければ違いますが、サスペンスミステリーにおいては、自分が「愛」というテーマを書くことで1番です。

湊かなえさんになりたいという無理な憧れを捨てて、ここに至りました。

これからも、「愛」をテーマにしたミステリーとも、サスペンスとも、純文学とも、恋愛小説とも言えないような小説を書いていきたいと思います。
                              渡橋銀杏

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