見出し画像

ツバキ文具店

小川糸さんの「ツバキ文具店」は、鎌倉で文具店と代書屋を営む主人公・鳩子の物語です。鳩子は、様々な依頼者の思いを手紙にすることで、自分の過去や祖母との関係に向き合っていきます。この小説は、手紙というコミュニケーション手段を通して、人と人とのつながりや想いを描いた作品です。

鳩子は、祖母に反発して家を出た過去を持ち、代書屋の仕事にも最初は消極的でした。しかし、依頼者の人生に関わりながら、自分の気持ちや祖母への想いに気づいていきます。鳩子の代書する手紙は、依頼者の言葉や感情をそのまま伝えるのではなく、鳩子自身の感性や工夫が加わっています。そのため、手紙は依頼者だけでなく、鳩子自身の心の変化も表しています。鳩子の成長は、手紙の内容や文体にも現れていると思いました。

また、鳩子の周りには、個性豊かな人々が登場します。例えば、鳩子の隣人であるバーバラ婦人は、上品で気品ある老婦人ですが、実は鳩子の親友であり、鳩子にアドバイスや励ましをしてくれます。また、鳩子の文通相手であるQPちゃんは、5歳の少女ですが、鳩子に手紙を書くことで、鳩子の仕事や人生に影響を与えます。このように、鳩子は、様々な人との交流を通して、自分の人生を見つめ直していきます。この小説のいちばんの魅力は、登場人物の個性と鳩子の成長だと感じました。


この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?