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リスキリングで中小企業診断士になる

最近、「リスキリング」という言葉が流行していますね。人生100年時代を迎え、70歳まで働くことが現実になるかもしれません。そんな中、現状維持では不十分と感じる方も多いのではないでしょうか。

私自身、2021年11月(39歳の時)に「人生の後半戦、このままではいけない」と感じ、リスキリングを始めました。約1年間の学習の末、中小企業診断士試験に合格し、2023年5月に中小企業診断士として登録しました。

今回の記事では、「中小企業診断士」とは何か、どのように勉強すればよいのか、そして資格取得後にどんな可能性が広がるのかについてご紹介します。

  • 何か資格を取りたいけど、なかなか踏み切れない方

  • 中小企業診断士に興味があるものの、資格とって何か変わるのか?!と漠然とした不安がある方

  • 中小企業診断士の資格の概要とその勉強方法を知りたい方

に、この記事がお役立てできれば幸いです。

最後までお読みいただけると嬉しいです。


中小企業診断士とは

中小企業診断士は「国家資格」

中小企業診断士は、経営コンサルタントとしての唯一の国家資格です。弁護士や会計士と同じ〝仕業〟の1つではありますが、その知名度はまだ高くないのが現状です。独占業務は存在しないため、資格を取得しただけで直ちに高収入を得られるわけではありません。

しかしながら、独立開業も可能な資格であり、日本経済新聞社が2022年1月に発表した「40代からの学び直し、専門家が選んだ役立つ資格は」では、中小企業診断士が1位になりました。

中小企業診断士の役割は?

「中小企業診断士」は、実は、単なるコンサルタントというだけでなく、日本の中小企業の現状を踏まえた重要な役割も担っています。

日本の企業の99.7%が中小企業であることをご存じでしょうか。労働者の約70%も中小企業で働いています。このように日本の経済の中核を担う中小企業の「経営者に寄り添い、経営の診断・助言をする」「国や県の施策を利用して支援する」ことで企業価値を向上させ、日本経済に貢献することが中小企業診断士の使命です。

ちょっとカッコイイですよね!


〝中小企業診断士〟な人々

中小企業診断士には、実に様々な人がいるのがスゴイところです。
他の士業の方は主に独占業務を中心に活動するのに対し、中小企業診断士は独占業務がないため、様々なバックグラウンドを持つ人が存在している。

(と、個人的には思います)

診断士1年生(令和4年度試験合格)の私が、これまで出会った同僚診断士の方々をご紹介します。

  1. 企業内診断士(企業内に勤めながら診断士登録をしている人)
    企業内診断士の割合が一番多いです。勤め先も実に様々です。
    ・将来独立開業を目指している方
    ・副業として補助金申請の支援を行っている方
    ・教育機関の職員の方

  2. 独立診断士(独立して診断士を生業としている人)
    ・定年退職を機に診断士資格を取得し、第二のキャリアを築かれている方(皆さんバイタリティがすごい)
    ・他の専門資格を持つの方(社労士、会計士、税理士、行政書士、ITコーディネーター、販売士、技術士、FPなど)
    ・セミナー講師として活躍する人
    ・銀行の相談役として顧問契約を結んでいる人
    ・補助金申請支援をメインとして稼ぐ人

中小企業診断士になるプロセス

中小企業診断士になるためには、一般に約1000時間の勉強が必要とされています。200時間の勉強で受かる強者もいらっしゃるとか・・・。私自身は1100時間を費やしました。
合格に至るまでのステップとその概要は次の通りです。

  1. 一次試験の合格(試験時期は8月上旬)
    全7科目あり、ワークシート形式です。経営全般の広い知識が要求されます。7科目、多いと感じる方もいると思いますが、各科目で60%の得点を取れば合格となります。科目合格や免除制度も存在しますので、2年間で7科目全てに合格するという手もあります。
    また、知識問題ですので、通勤時間やスキマ時間を利用して効率的に学習することができます。

    以下が出題される7科目と、その内容のイメージです。

    企業経営理論・・・ザ経営戦略というイメージ
    財務・会計・・・簿記+α
    運営管理・・・工場や店舗の運営のこと
    経済学・経済政策・・・マクロ経済、ミクロ経済、需要と供給など
    経営情報システム・・・ITパスポート程度
    経営法務・・・ビジネス実務法務2級程度
    中小企業経営・中小企業政策・・・中小企業と国の政策を知る!

  2. 二次試験の合格(試験時期は10月下旬)
    中小企業の診断及び助言に関する4つの事例が出題され、筆記試験形式です。経営全般の知識を基にした論理的な思考能力が問われます。具体的には、企業の概要が記載された文章が数ページあり、それに基づいて4~5問ほどの設問が出題されます。

    一次試験からわずか3カ月しかないため、8月~10月が勉強の山場です。筆記試験のため、書く練習が不可欠です。スキマ時間で・・・というのはなかなか難くなりますが、工夫次第である程度対応が可能です。(これについては別の機会に詳しく書こうと思います)

    各事例のテーマは以下の通りです。

    事例Ⅰ:企業の組織戦略・人事戦略
    事例Ⅱ:マーケティング戦略
    事例Ⅲ:生産管理
    事例Ⅳ:財務会計

  3. 口述試験の合格(試験時期は翌年の1月下旬)
    この試験は面接官との対話形式で実施される簡易的な二次試験といった感じです。当日時間通りに行って「無言でなければ」受かるといわれていますので、二次試験に合格した段階で「中小企業診断士に合格」といっても過言ではありません。

中小企業診断士の勉強方法

中小企業診断士とはどういう資格で、どうやったら取得できるのか、について概観してきました。

頑張ればなんとかなりそう・・・、と思ってもらえたら、幸いです。

資格取得への「ポイント」や「覚悟」の部分をお伝えします。

①未来の「なりたい自分」を想像する
未来の「なりたい自分」を想像しましょう。ただ中小企業診断士になりたいわけではなく、「想い」があるはずです。

「自分の限界に挑戦したい」「自分の可能性を広げたい」「こんなところで終われない」そういった想いを紙に書き出し、日々目にすることでモチベーションを保ちましょう。

私の場合は、「人生は一度きり、後悔はしたくない」と、書いた紙を毎日見えるところに張っていました。今日は勉強きついな、と思う日もその紙を見ると初心を思い出して頑張れました。

②計画を立てる
月単位程度でいいので計画を立てましょう。細かい誤差は都度見なおせば大丈夫です。1年で合格するか、2年かけるかを考え、無理のない計画を立てましょう。

特に、ボトルネックとなるのが以下の2点です。


〇一次試験が7科目もあり、初めに勉強したことをどんどん忘れていくこと

【対策のポイント】

・参考書でインプットして、問題集を3回まわす
1科目づつ時間をかけて順番に7科目を行う勉強法は、序盤に勉強した科目をどんどん忘れていってしまうので非効率です。
科目ごとに1ヶ月程度を目安にして、参考書でのインプットと問題集でのアウトプットを行い、各科目を平行してすすめましょう。
問題集は3回まわすことを目標にしましょう。

・企業経営理論、運営管理は早期に勉強
企業経営理論、運営管理は二次試験でも使用するので早期から学習し、長期記憶に定着させる(二次試験では筆記でアウトプットを求められます)

・知識系科目は後回し
経済学・経済政策、経営情報システム、経営法務、中小企業経営・中小企業政策は知識系のため、試験直前の2~3ヶ月で、集中的に学習し短期記憶に効率的にインプットする(企業経営理論、運営管理の問題も忘れないようにたまにやる)

・財務会計が苦手な人は注意
財務・会計が苦手な人は、あらかじめ簿記3級を勉強することをオススメします。二次試験の事例Ⅳ財務・会計の問題です。

〇一次試験から二次試験まで3カ月しかなく勉強期間が限られること
【対策のポイント】

・一次試験の勉強の段階から「二次試験」を意識した勉強をする


企業経営理論、運営管理の中で、組織・人事、マーケティング、生産管理にかかわる部分は二次試験に直結するので、一次試験の勉強の段階からアウトプットを意識して勉強する。

・二次試験の解答アウトプットの精度とスピードをひたすら上げる


二次試験は各科目80分です。長いと思われるかもしれませんが、初めて過去問を解くと全く時間が足りないことに気づきます。
私の場合は、二次試験直前でも解くのに75分前後かかっていました。見直し時間はほとんどありません。
文章やキーワードが反射的に出る状態にし、自分なりの問題の解き方を確立し、解答の再現性を高める訓練をすることが必要です。

③覚悟を決める
中小企業診断士の資格取得に向けて、最も重要なのは覚悟を決めることです。私自身の経験を例に挙げると、以下のような行動を取りました。

・スマホゲームをアンインストール
長年にわたり数十万円を課金していたスマホゲームを断腸の思いでアンインストールしました。勉強に集中するためには、妨げになる要素はすべて取り除く必要があります。「○○イベント開催中」といった通知は勉強への集中力を削ぐ「毒」となり得ます。

・家族への協力要請
ご家族がいる場合は、自身の覚悟を伝え、将来のビジョンを共有し、協力を求めることが重要です。毎日の勉強を1年以上続けることを考えれば、家族の理解と協力が不可欠です。

・飲み会の誘いは断る
特に会社の飲み会はうまく断ることが大切です。資格取得への道のりは長く、エネルギーを要するものですから、無駄な時間を避け、勉強に集中するための選択をすることが必要です。

中小企業診断士資格を取るとどうなる?

皆さまのモチベーション向上に寄与できればと思い、診断士1年目の私が現在感じていることをお伝えします。

【仕事面】

  • 圧倒的な説明スキル
    試験勉強と実務補習を通じて、論理的な思考と迅速なアウトプット、説明スキルが身に付きます。提案書作成が格段に容易になります。

  • 絶対的な基準が分かり自信に繋がる
    経営全般に関する学習を通じて、経営や業務の全体像の俯瞰が可能になり、確固たる基準を持てるようになります。これにより、自信を持って提案や発言ができるようになります。

  • 社内評価の向上とキャリアアップ
    資格取得により社内評価が向上し、新しい仕事の機会も得られます。私の場合、経営企画にも携わることができ、業務範囲が広がりました。

【診断士活動面】

  • 刺激的な人脈の広がり
    1年間で100人以上の方と名刺交換しました。多種多様な方との活動と交流を通じて、視野が広がり、自分の市場価値が客観的に理解できるようになりました。

  • 常に自己研鑽の機会がある
    「診断協会」に参加すると、自分の興味のある分野に関する研究会や勉強会に参加でき、常に学びの機会があります。

  • 同期会が楽しい
    同じ年度に登録した仲間との「同期会」は、毎月開催され、交流や勉強会が行われます。同じ試験を乗り越えた仲間との熱いトークは、会社では得られない貴重な経験です。

  • 年齢や立場に関わらずとにかくフラットな関係
    診断士になると、会社の肩書や政治的な問題は関係なくなります。診断士としての個々の努力と魅力で関係が築かれ、自分らしい診断士ライフを送ることができます。

  • 会社外でのキャリアの可能性
    診断士としてのキャリアを積むことで、会社勤め以外の道が見えてきます。例えば、独立開業、副業、ビジネス開業、公的機関での経営相談員などです。会社外の選択肢を持つことで、心にも余裕が生まれ、会社の人間関係も割り切って付き合えます。

まとめ

皆さん、いかがでしたでしょうか。この記事では、中小企業診断士の魅力と勉強方法の要点を、エッセンスとしてまとめてみました。確かに難関資格ですが、40歳からのリスキリングとしてキャリアアップのために挑戦する方が増えています。

人生100年時代を迎え、まだまだ道は長く、人生は一度きりです。
この記事が、皆さんの新たな挑戦へのきっかけとなることを心から願っています。

ここまで読んでいただき本当にありがとうございます。ほんの少しでも興味を持って頂いた方は♡ボタンと「フォロー」をよろしくお願いいたします。


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