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各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑥国民民主党からにじむ「加速主義」の気配


エネルギー政策は「安全保障政策」枠

ここまで地味に続けている各政党の「脱炭素政策」比較ですが、今回は国民民主党を見ていきたいと思います。ちょうど今、協調路線を続けていた与党との決裂を宣言して話題になっていますが、まあその辺の動きは置いておいて、ここでは愚直に政策集を見ていきます。

まず、公式ホームページにある国民民主党の政策5本柱を見ていきましょう。

この党が主に掲げているのは、積極財政による賃金アップの実現や「日本型ベーシックインカム」の導入などです。特にベーシックインカムとかは個人的にかなり興味深いのですが、ここでは触れずに「脱炭素」関連の内容を探すと……。

「『積極財政』に転換」の項目のなかに、

人づくり、デジタル化、カーボン・ニュートラルなどに「大規模、長期、計画的」な投資を行います

とあるので「脱炭素」分野は有望な投資先の一つ、という位置づけの模様。ただしそれ以上の具体的な言及はここではなし。

エネルギー関連については、「自分の国は『自分で守る』」の項目の中で、

安全基準を満たした原子力発電所は動かすとともに、次世代炉等へのリプレース(建て替え)を行います

電気とエネルギーの安定供給を確保し、国富や技術力が海外に流出することを防ぎます

とありました。国民民主にとっては、エネルギー政策は気候変動対策というより「安全保障政策」という位置づけのようです。

また原発政策については、既存原発の再稼働だけでなく新たに建て替えることまで認めており、元は同じ民主党だった立憲民主党が「原発ゼロ社会を一日も早く実現します」と掲げているのとは対照的です。


国民民主党ホームページより

さらっと「ジオエンジニアリング」に言及

さて、より詳しい政策は「政策パンフレット2022」に載っておりますので見ていきましょう。

「デジタル化、カーボン・ニュートラル投資の加速」の項目では、こんな文言がありました。

デジタル化、カーボン・ニュートラル(CO2排出量の収支実質ゼロ化)を長期的、計画的に促進するための基金を創設します

再生可能エネルギー技術への投資を加速し、分散型エネルギー社会の構築を目指します。特に、洋上風力、地熱の活用に注力します

デジタル化と一緒くたにされているのが若干気になりますが、この分野への投資のための基金の創設とか、洋上風力と地熱に注力して分散型エネルギー社会の構築を目指すとか、まあ特に目を見張る点はないながらも、まっとうな事が書かれているように思えます。

「分散型エネルギー社会」の項目には、さらに細かい記述がありました。

2030年代には電源構成比で再エネ比率が40%以上となるよう着実な取り組みを進めます

とあります。現政権がつくった第6次エネルギー基本計画における2030年度の電源構成比が再エネ比率「36~38%」ですから、「30年代で40%以上」となると、これとほとんど変らないというか、むしろちょっと後退している感すらあり、かな~~~り抑制的な目標であるように見えます。

この項目には、次のような記述もありました。

共生・自律・分散型のエネルギーネットワークを構築し、再生可能エネルギー社会の構築をめざします。とくに洋上風力、地熱の活用に注力するとともに、ジオエンジニアリングに取り組みます

ジオエンジニアリングを政策集に盛り込んでいるのは他党には見られない特徴のように思います。これ、なにかというと、テクノロジーを大規模に利用して、人為的に地球温暖化を押さえようという技術のことです。

たとえば、研究が進んでいる「太陽放射管理」という技術では、大気中に硫酸エアロゾルという物質を大量に散布することで、太陽光の一部を反射させて地表に届かなくし、気温の上昇を抑えることができるとされています。こうした技術を使っていけば、「脱炭素」がうまくいかなかった場合でも人類を気候変動の被害から救うことができる、というわけです。

ただ、こうした技術には大きなリスクがあります。一度実施したら取り返しのつかない影響を自然環境に与えますし、目論見通り気温が下がって利益を得る人々がいたとしても、ある地域では農作物の育ちが悪くなって大変な損害が出るかもしれません。

こうした点から、百歩譲ってこれらの技術をいざという時のために開発しておくべきだとしても、使用する時は本当の「最終手段」であることを意識しないといけないと思います。

私としてはこういう理解でいるので、国民民主党が洋上風力や地熱とならべて、「ジオエンジニアリングにも取り組みます」とさらっと宣言しているのには若干違和感がありました。


国民民主党「政策パンフレット2022」より

立憲民主とは対照的な「加速主義」路線

ちょっと脱線しましたが、政策集に話を戻しますと、「地球温暖化対策」の項目には、次のような説明がありました。

2050年カーボン・ニュートラル社会の実現や「パリ協定」の推進に向け、徹底した省エネルギーと、電源の低・脱炭素化や電化の推進、運輸部門における電動車の普及促進(インフラ整備を含む)、蓄電池やCO2フリーの水素・合成燃料(バイオジェット・e-fuel等)の開発・生産支援を行うなど、革新的なイノベーションとその社会実装を通じた大幅なCO2削減を目指します

ここでもさっきと同じく、一見するとごく常識的な記述かなあ、と思います。

ただ、ここで思い出していただきたいのですが、立憲民主党の政策集では、〈技術革新に過度に依存せず、既存の省エネ・再エネ技術で最大限の温室効果ガス削減を行います〉という文言がありました。

一方で、この国民民主党の記述では、〈革新的なイノベーションとその社会実装を通じた大幅なCO2削減を目指します〉とあります。

既存技術中心での脱炭素なのか、革新的なイノベーションによる脱炭素なのか。

前者であれば、すでに技術がある再エネの普及加速や省エネ、建物の断熱などが政策の中心になるでしょう。これに対して、後者であれば研究・開発中の「次世代型原発」や「CCS(二酸化炭素回収・貯留)」「火力発電の水素・アンモニア混焼」、さらに進んで「ジオエンジニアリング」などといった方向性になってくるかと思います。

後者のように科学技術の進歩によって問題を解決していこうという姿勢は「加速主義」とも言われるそうですが、国民民主党の方向性というのはまさにこれなのかな、と思います。

ここまで色々読んできた書物などから個人的に考えるところでは、「加速主義」の人々が考える通りに新技術の開発が進む保証はどこにもなく、ジオエンジニアリングも予期できない、かつ取り返しがつかない被害をもたらす可能性がありますから、これらに頼るのは危険があると思います。

一方で、再エネや省エネといったすでにある技術を早く普及させる路線のほうが確実性があり、個人的にはこちらを推したいです。その際の経済構造の変化で貧困に陥る人が出ないようにセーフティーネットをしっかりつくる必要があるわけで、そこで国民民主党の掲げる「ベーシックインカム」的な方法は大いに力を発揮するのではないかと思います。

今回はちょっと個人の意見を多めに書いてしまいました。全体としては、国民民主党の政策集では脱炭素政策について基本的なことはきちんと書いてあるものの、目標が現政権に比べてもそれほど高くなく、記述の量や斬新なアイディアも少ないので、全体的には脱炭素政策の優先度はそれほど高く設定されていないのかな、という印象を受けました。

【このシリーズの記事一覧はこちら】
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた①自民党は記述少なく、にじむ原発推進への思い
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた②立憲民主党は「2050年再エネ100%」ぶち上げ
各政党の「脱炭素政策」を読み比べてみた③日本維新の会は「原発熱心、再エネ興味薄?」
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた④共産党は「大企業にムチ」で最もラディカル
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑤公明党は「水素・アンモニア」志向
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑥国民民主党からにじむ「加速主義」の気配
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑦れいわ新選組は「30年までに石炭火力全廃」言い切り

【参考資料】
国民民主党ホームページより「政策
同「政策パンフレット2022」(PDF)

(タイトル画像)
Unsplashdrmakete labが撮影した写真


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