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各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑦れいわ新選組は「30年までに石炭火力全廃」言い切り

記事本文はおよそ2500文字です。

「原発と石炭火力廃止」のフルスイング

さて、ここまでやってきた各政党の「脱炭素政策」比較、ついに7回目までたどり着きました。ということで、今回見ていくのは新興政党として存在感を示している「れいわ新選組」です。

党の公式サイトにある「参院選2022緊急政策」を見ると、筆頭に掲げらえているのは「消費税廃止・インボイス廃止」。なんといっても貧困対策や、庶民の生活を向上させろ、という主張を前面に出してきた党ですから、脱炭素政策が出てくるのは11番目と、優先順位は決して高くないようです。

ただ、登場順は遅くても、内容はなかなかラディカル、とんがっています。以下、引用します(改行などはこちらで編集しました)。

⑪脱原発!グリーン・ニューディール政策
(※毎年5兆円、民間需要15兆円=10年間で200兆円)

2030年の石炭火力ゼロ(温室効果ガス排出量は50%以上削減)、2050年のカーボンニュートラル達成のための大胆な「自然エネルギー」(太陽、風力、地熱、水力)地域分散型の普及を目指します。

自然エネ100%達成まではつなぎのエネルギー源の主力はガス火力とします。

地震大国の日本では原発は即時禁止。原発を国有化。
(後略)

れいわ新選組「参院選2022緊急政策」より

まず、目を引くのは「2030年石炭火力ゼロ」です。現状で日本の電源構成の中で石炭火力発電は3割程度を占めるほどの存在感を持っていますから、今から6年後にこれを「ゼロ」というのは相当なスピードであり、野心的な目標です。

そのためには「自然エネ100%」を目指し、つなぎはガス火力を利用する、とのこと。それに加えて原発は「即時禁止」して、廃炉などの後始末は国有化して行う。いやあ、これはもう、フルスイングな政策です。


れいわ新選組ホームページより

再エネ導入目標は立憲民主と同等

より詳しい政策については、公式サイトで読める「脱原発!グリーンニューディール」にまとめられています。ビックリマークがついているあたりが「れいわ新選組」らしいですね。


れいわ新選組ホームページより

ここでは先ほどの目標についても、もう少し詳しく載っていました。

原発を即時禁止した上で、2050年までに自然エネルギー(再生可能エネルギー)100%、温室効果ガス排出ゼロを目指します。エネルギー利用効率の向上を徹底し、エネルギー消費量の6割削減を目指します。2030年までの目標として、石炭火力は全廃し、発電量に占める自然エネルギーの比率を50%まで高めることを目指します。

2030年までに石炭火力を全廃するという点は突出していますが、「2030年に再エネ比率50%、2050年までに100%」という再エネ導入目標は立憲民主党と同じです。

また、「炭素税」絡みの政策としてはこんな記述がありました。

(3)バッズ課税を、すべての人々の命と暮らしを支える再分配に活用する

炭素税などの「カーボン・プライシング」の重要性は認めつつ、これが経済的に不利な状況に置かれた人々に負担を押しつけることのないよう、現金給付を優先したうえで炭素税の課税を行う「炭素配当」とします。交通が不便な地域や寒冷地に住む人々にも配慮します〉

れいわ新選組「脱原発!グリーンニューディール」より

「バッズ課税」というのは私の不勉強で聞きなれない言葉だったんですが、「bads課税」のことで、悪いこと(ここでは環境に悪い炭素の排出)に課税することでそうした行動を抑制するインセンティブを働かせる、ということのようです。

「炭素配当」も聞いたことがない人が多いかと思いますが(私もでした)、アメリカのNGO「Climate Leadership Council」が提言している概念で、国民から炭素税を集め、その税収を国民に還元する仕組みのことのようです。

正直申し上げていまこの概念を詳しく説明する知識は私も持ち合わせていませんが、ざっくり言うならば「炭素税は大事だから徴収するけど、貧しい人の負担にはならないようちゃんと配慮しますよ」といったところでしょうか。

「ぶっとんでる」くらいの案じゃないと…

といったところで、さすが「しがらみ」とは無縁な新興政党だけあって、スパッと思い切りの良い政策を出してきたなあ、という印象を受けました。共産党もラディカルでしたが、それと同等か、さらに上をいくくらいです。

正直な感想としては、「これほど急激な変革が現実問題として可能なのか」「相当、経済的ダメージを伴うんじゃないか」と思ってしまう部分もあります。ただ、ここにも書かれているように2030年に「温室効果ガス排出量50%以上削減」を本気で実現しようとしたら、これくらいやる必要があるのかもしれません。

というのも、いま日本を始めとした先進国各国が出している目標程度では、世界の気温上昇を人類がギリギリ適応可能な1.5度以内に押さえるのは難しいと言われているわけですから、国連やIPCCが求めているような対策というのは、この「れいわ新選組」の案や、「日本共産党」が出しているものに近いのかもしれません。

少なくとも「過激すぎる」「ぶっとんでる」などと簡単に否定していいものではないと思います。「ぶっとんでる」くらいの政策を実施しないと、気候危機は回避できないわけですから。

共産党の時も思いましたが、少なくとも貧困対策をしっかりやるのとセットじゃないと、多くの人が苦しむことになると思います。その点、両党とも貧困対策の方がむしろ力が入っていますから、その点は矛盾はないのかもしれません。

……と、そもそもこの企画で各党の政策の優劣をジャッジするようなつもりもなければ、そんな知識も能力もまだまだありませんので、これくらいにしておきます。

さて、7政党の脱炭素政策を見てきて、この形は一端ここまでとさせていただくつもりです。今後はもうちょっと角度を変えた政策比較などにもチャレンジしていく所存です。読んでいただいてありがとうございました!

【前回までの記事はこちら】
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた①自民党は記述少なく、にじむ原発推進への思い
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた②立憲民主党は「2050年再エネ100%」ぶち上げ
各政党の「脱炭素政策」を読み比べてみた③日本維新の会は「原発熱心、再エネ興味薄?」
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた④共産党は「大企業にムチ」で最もラディカル
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑤公明党は「水素・アンモニア」志向
各政党「脱炭素政策」を読み比べてみた⑥国民民主党からにじむ「加速主義」の気配

【参考資料】
れいわ新選組ホームページ「参院選選挙2022緊急政策
同「脱原発!グリーンニューディール

(タイトル画像)
UnsplashMeiying Ngが撮影した写真

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