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ハックとよばれた少年

夏が終わり、小学四年生の二学期が始まった。暑い季節も終わりを告げ、私たちは友達4人で近所の公園でボール遊びを楽しんでいた。

#学校

夕暮れの時間が少しずつ早くなっていたある日、あだ名がハックと呼ばれている同級生がやってきた。

そのあだ名の由来は、「トムソーヤの冒険」に登場するハックルベリー・フィンにちなんでいるそうだ。

公園で遊んでいる私たちにハックが声をかけてきた。

「寿司おごったるわ」と言うのだ。私は同級生たちと喜んだ。

#カウンター

私たちはハックに連れられて、駅前の回転寿司屋に入った。ハックがカウンターに座ると、私たちも続いてカウンターに座った。
目の前を流れる回転寿司を見て、ハックと私たちは目を輝かせながら食べた。「好きなもの食べやぁ」とハックは言った。私たちはハックがおごりなので、自分たちの好きなネタの寿司を食べた。

#寿司

お腹いっぱいになった私たちは、カウンターの向こうから笑い声が聞こえた。しかし、店主たちの顔とゴツい体に似合わない繊細な寿司を握っている様子を見て、ハックと私たちは少し違和感を感じた。

友達のひとりがトイレに行った。ハックは爪楊枝を使って何かをしていた。そして、ハックは回転寿司屋の入口近くに座っていた。
この時点ではまだ私たちは何も気付いていなかった。しかし、友達がトイレから戻ってきたとき、私たちは驚いた。ハックがいないのだ。

#逃げる

「どないしよう!」と友達が言った。

私たちは顔を見合わせ、「逃げるしかない」という結論に達した。お互いに疑心暗鬼になりながらも、誰から逃げるのかがわかるような目で見つめ合っていた。

突然、回転寿司屋の店主が私たちに声をかけた。「お前ら子供だけで金持ってるんか!」私たちにはお金がなかった。答える前に、私たちは一目散に逃げ出した。

必死に逃げる私たち。後ろから店主が鬼のような形相で追いかけてきた。 


路地裏には文化住宅が無秩序に立ち並び、私たちはそれに紛れて逃げた。

なんとか寿司屋の店主から逃げ切った私たち。翌日、ハックは学校で何一つ悪びれていなかった。むしろ、「昨日の寿司美味かったなぁー」と口にしていた。

#鋼のメンタル

私はついにハックがなぜハックと呼ばれているのか理解した。ハックルベリー・フィンは「宿なしハック」だったのだ。

#想い出

さらに、ハックは小学三年生の時にはヒッチハイクで大阪から名古屋に行ったこともある。ハックの「寿司おごったるわ」という一言に私たちは騙されたのだ。

#ヒッチハイク

ハックはこの後も自由奔放に生きていくだろう。補導されることも何度もあるかもしれないが、ハックはハックのままだ。

ハックとの冒険は私たちにとって大きな思い出だ。でも、ハックが実は羽田君であることを私は一年以上も思い出せなかった。

ハックは今も昔も変わらずハックだ。

ハックが今どこにいるのか知らないが、間違いなく君は僕たちの永遠のハックルベリー・フィンなのだ。

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