42歳一独身公務員の旅行記(インド編) ④「This is India!」
インディラ・ガンディー空港近くにあるホリデイインは僕史上、最高にイケてるホテルだった。14000円位だったが、その値段を出せばインドならば相当豪華なホテルに泊まれるらしい。
時間はもう深夜2時半を過ぎていた。眠かった。非常に眠かった。が、寝てしまったらこの豪華な夜が終わっちまうじゃないか。
回転する豪華なイスに座りグルグル回った。夜景を観てウットリした。用もないのに2回ロビーに降りた。しかしもう限界でベッドにダイブし意識を失った。
翌日。初めて体験するインドの朝。
今日1日、インドは何を見せつけてくれるのだろう⁈ まずは朝食バイキングで腹拵えだ!
食事を終え、ザックを背負ってホテルをチェックアウトする。外ではけたたましくクラクションが鳴り響いている。
まずは地下鉄の駅に行く。そしてニューデリー駅に向かう。ニューデリー近くのキャロル・バーグという駅の近くにホテルを3泊分とっているのだ。それ以外の予定は何もない・・。
ニューデリー駅着。
階段を上がり地上にでた。僕はデリーの地に足を踏み入れた。
埃っぽい空気。ムワッした熱気。臭気。並ぶリキシャ。トラック。自転車。破れたビニールシートの屋台。モノ売りの男の子。ターバンを巻いたおっちゃん。猥雑で混沌とした場所だった。
生まれてはじめてみる景色に、僕はなんだか、モーレツに感動していた。
「 これがデリーかあー」
ニューデリー駅からでてわずか3分。夢中でスマホで写真を撮っていると、背後からただならぬ雰囲気を感じる。
振り返ると、インド人のおっちゃんが微笑みを浮かべてこちらを直視している。めちゃくちゃ目があう!
「⁉︎」
気のせいか⁈僕じゃないよな⁈ 小走りでその場から逃げ去る。かなり離れた。50mは走ったか。そーっとまた振り返る。
「ワッ!!」思わず声が出た。さっきのおっちゃんがすぐ真後ろにいて、やはり微笑んでいる!!ちょっと‼️近いよ‼️
「な、なんですか⁈」
「マイフレンド、ホンダ、知ってる?」
「ホンダ?サッカーの?知ってますけど・・・」
「オー、僕のイトコ、ホンダで働いてる。ワタシ、日本大好き。オー、フレンド」
(そっか、車のホンダね。イトコが日本で働いていて、それで日本が好きで声かけてくれたってワケか・・・)
僕はこの旅行で、現実を直視できず、いい風にいい風に都合よく考えようとする場面があった。
「オー、フレンド、リキシャ、街中まで乗らない?安くするよ」
(街中?!確かに旅行の計画を立てるためにも街中にあるHISのデリー支店にいこうとは思っていた。ちょうどいいじゃないか・・)
「じゃあ、HISまでお願いします!」
「オッケー、フレンド」
かくして僕は生まれてはじめてリキシャに乗ったのだ!
リキシャから見える景色に僕は夢中だった!
クラクションは鳴りまくり、埃っぽい風が当たりまくり、道路にはリキシャ、オートバイ、車、かと思えば人、野犬、さらには牛まで歩いていた!!何なんだこの国は⁈カオスにも程があるぞ⁈凄すぎてニヤけてきていた。
HISデリー支店に到着!良かったー、とホッとしたのもつかの間。
スーッとリキシャがHISの前を素通りしていく。
「えっ?」
「ソーリー、ストップ、ストップ、ここでいいです」
しかし、運転手は全く止まる気配がなくズンズン進んでいくじゃないか!いやいや!
「ちょっと!ストップ!」叫んだ!
「オー、ストップしないからね」運転手がケロリと言った。
「え?」
「オー、フレンド、HISはよくないね。もっといいとっておきの旅行会社を紹介してあげる。まかせて」なぞ、さも当然かのようにいってくる。めっちゃ騙そうとしてるやん!!ふざけるな!!カーッと頭に血が上った。
「降ろしてください!!」僕はかなり強引にリキシャから飛び降りようとするフリをしてやった!!運転手もさすがに驚いたか、ギョギョ!てなってリキシャを止めてくれた。
「オー、なんで!?いい旅行会社なのに?」運転手は両手を広げて言った。「ノーサンキュー!」それでも僕は突っぱねた。
ガンジーが印刷された100ルピー紙幣を荒々しく渡すと、その場から走り去ってやった‼️
走りながら、HISに向かいながら、僕はちょっと泣きそうになっていた。怖かったからじゃない。奇妙な感動を覚えていたからだ。
「自分の感情を爆発させて怒ったなんて、一体いつ以来だろう?」
職場では怒られることは山程あっても怒ることはない。なんだか自分が他人に対して怒ることができたことが、いや、というより、きちんと主張できたことが、無性に嬉しかったのだー。
「できたやん」僕は走りながら僕につぶやいた。
「これがインドなんだ」
その後僕はHISデリー支店にいき、アラカワさん、という駐在職員さんからガンジス川の1泊2日ツアーを購入したのであった・・・。
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