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この旅の買いつけ;600gの栗

買ったもののどうしよう…まぁでも、次の週末にでも調理したらいいか。
と先延ばしにしようものなら、「早くどうにかして〜!」
はたまた母からの指令に突き動かされたのだった。
というのも、“やぁ、虫さん、こんにちは”状態だったためである。
ビニール袋のなかの、新聞紙でくるんだ栗から、出てきた虫さん。
新聞紙とビニール袋の間に小さくコロコロと3匹転がっているのを見たわたしも、
こりゃ早く調理しなくちゃ、とせき立てられた。

おやおや
やぁ、虫さん、こんにちは😃

①『栗 虫』で検索
目が悪いにも程があるが、わたしは初め、この小さな生き物たちを米粒だと思っていた。なんでこんなビニール袋に米粒ついているんだ?と。
まぁ、でも。じーっとよく見たら動いている。(当たり前だ、生きているのだから)
こんな硬い栗の皮をムニムニした米粒が、よくもまぁ、中から元気に出てきたものだ、と感心してしまった。
なんという名前なのかと気になって検索をかけてみると、『クリジギゾウムシ』『クリミガ』と出てきた。農家を困らせる、食害を引き起こす虫だそう。でも、カブトムシや蛾の幼虫より、米粒サイズで名前に「クリ」と入っているこの子たちのほうが断然、可愛がれるな、と思った。

なんで米粒が?🌾

②『栗 剥き方』で検索
簡単で手っ取り早く処理したい、面倒くさがりでせっかちなわたしは、数箇所のサイトを取っ替え引っ替えしながら、でも結局時間がかかった下処理になった。
・まず、皮を柔らかくするために、水に一晩浸ける。
・虫さんに別れを告げるために、熱湯にもつける。そして、天日干しも。
・乾いて、皮が硬くなった気がして、また、ぬるま湯に浸ける。
・包丁を使って力技で皮を剥く。
・渋皮がうまく取れず、包丁で剥いでいく。
なんて、非効率的…
一晩と1日コースの下拵えになった。
参考にならないから、真似しないでほしい。
だけど、最後の渋皮を剥き終わったあとの、腱鞘炎になりそうな手首の痛みの達成感といったら、マラソンでゴールテープを切ったような快感だった。

下ごしらえは マラソンです

③『栗ごはん』
あとは、“超”がつくほど簡単。
剥き終えた“パステルイエローカラー”をした全ての栗たちを
剥き終えるまで静かに待っていてくれた、研ぎおえた米と炊飯器のなかで合流させるだけなのだ。
最後に塩をパラパラとまぶす。
おいしく炊き上がりますように、と願いを込めて。

ピーピーピー
炊けた音がする。
残念ながら、わたしは燃え尽き、腕もさすりながらキッチンを後にした。
食卓からは「おいしい!」「栗の甘みが〜!」と称賛する声が聞こえた。

翌朝、もう2杯分ほどしか残っていなかった栗ご飯を茶碗によそい、食べた。
白ごはんにまで甘みが染みていて、「おいしい」と意図せずとも一言こぼれた。

あの下処理は無駄ではなかったのだ。
一手間かける美味しさは、やはり存在するのだ。
“クリムシさん”たちも、そりゃぁ、食べたくなるわ。
と栗に体も心もホクホクさせられた始まりの朝だった。

天津栗にモンブランに栗きんとん…
栗のごはんやスイーツはコンビニやスーパー、デパートと店に行けばすぐに手に入る。
でも、市場で生栗を買い、自分で下処理や準備、調理をして食べることで、
過程のありがたさや発見が見つかる。
時間をかけるか、お金をかけるか。

600g以上のものをご馳走になった思い出の栗になった。

ほっこり 栗さんと

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