見出し画像

『生誕300年記念 池大雅ー陽光の山水』 出光美術館

文人画、山水画、ともに今ひとつ良さが分からずにいたのですが本展覧会のおかげで、少しだけ素晴らしさが理解できた気がしております。

カタログ冒頭、池大雅の専門家でもある出光館長の文章にこうありました。若き日に応挙の《波濤図》を見に行ったら大雅に衝撃を受けたと。

円山応挙をはじめとする写生派を研究対称に選びたいと思ってました。しかし、東京国立博物館に応挙の「波濤図」(重要文化財、金剛寺蔵)を見に行った時、たまたまその対面に展示してあった大雅の国宝「楼閣山水図屏風」(別命「岳陽楼・酔翁亭図屏風」)に衝撃を受けたのです。ドドーンと大きな波音が絵の中から聞こえてくるではありませんか。
〜この屏風との出会いをきっかけに、写生派よりも、別の意味で写実的な大雅の絵における実感表現の秘密を知りたいというのが、私の美術研究の出発点となりました。

出光佐千子 展覧会カタログより

館長が衝撃を受けた《楼閣山水屏風》は国宝。
本展覧会でもメインの場所にドーンと展示されてました。一橋徳川家伝来で総金地に鮮やかな彩色。眩しいです。

ただ他の大雅作品とは別格。宮家の婚礼調度品のようなので豪華絢爛なのでしょうね。

他の作品はどれも、おおらかというか、ゆったりとしている印象。

第2展示室に入った瞬間に目に飛び込んでくるのが、
《餘杭幽勝図屏風》(よこうゆうしょうずびょうぶ)。いやー素晴らしい、雄大です。しかも約90年ぶりの展示。

《餘杭幽勝図屏風》右隻 カタログより

右隻の左上には「餘杭幽勝」=杭州の優れて美しい景色、の題字。

《餘杭幽勝図屏風》左隻 カタログより

眼の前の湖、雄大な山々。リアルに眺めているような錯覚に陥ります。

湖に浮かぶ小舟、更に奥に見える橋と、うっすら見える更に遠くの山。じっくり見れば見るほど浮遊感を感じる不思議な絵でした。
今回はこちらの作品が一番良かったです。

《餘杭幽勝図屏風》のとなりには王羲之が41人の名士を招いた宴を描いた《蘭亭曲水図屏風》。
楽しげな文人が多数。41人以上描かれていました。

《蘭亭曲水図屏風》 カタログより 

当時の京都には、大雅の他に若冲、応挙、蕭白も住んでいて、しかも比較的ご近所に住んでいた筈と先日読んだ本にありました。

4人ともそれぞれ異なるジャンルの作風で、突き抜けていて、しかも令和の時代に各所で展覧会で開かれているのも不思議な感じです。

因みに大雅は生誕300年ですが、若冲は307年、蕭白は293年、応挙は290年でした。年齢近っ!

300年前の名作が今でも見られる日々に改めて感謝。美術館の皆様、ありがとうございます。


この記事が参加している募集

404美術館

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?