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親父からの帝王学 会社を継ぐまでの思い出

会社を継いだのが25年前になる。
親父は帝王学を何も教えてくれなかった。
とにかく、
照れの裏返しか何か知らないけど、
何にもアドバイスをくれなかった。
だから、
おかしなもので、
同じ会社をやっているのに、
継いでから引退するまで、
一緒に経営をしたという感じがない。

ある協力会に参加することになった。
それも、急に電話で来いと言った具合だ。

どんな服装で行けばいいの?
と親父に聞いた。
馬鹿だなあ、ちょっとした集まりだから、
そんなもんは、なんでも良いんだよ。
遅れるなよ。
とそれだけ言われた。

内容も何も教えてくれないから、
現場からそのまま向かった。

ある会議室に通されると、
参加者は全員ビシっとスーツを来て、
作業着を羽織っているのは私だけだった。
しかも、
会合が終わるとそのまま宴席になった。
これには参った。
とにかく、恥ずかしかった。

そんな中、
親父は私を引き連れて、
取り引き先の人や、
業界の社長さんに紹介を始めた。

コイツ馬鹿でしょう!
昔から常識が無くて困ってるんですよ。
こんな服装で来るなんてねw

こんなヤツですがよろしくお願いします。

こんな感じで次々と紹介していく。
仕方なく、よろしくお願いします。
とペコッと頭をさげるしかなかった。


社長になる時はこんな感じだった。
おい、ちょっといいか!
と応接室に呼び出された。

お前来月から社長な!
俺はもう引退するからよろしく!
といきなり言われた。

さすがに、
1ヶ月では早いから半年くれ、
と言うと、

なんでだあ???まあ、良いけど、
お前は変わってるよ。
と返事が返ってきた。

せっかちな性格がモロに出ている。

俺はもうお母さんと一緒に居たいんだよ。
わかるだろ?

と念を押す感じで言われた。
これを言われたら、
何も言い返せなかった。
結局、社長就任は半年後にしたが、
実質は来月どころか、
次の日から会社に来なくなってしまった。


今度は銀行との引き継ぎだった。
私が社長になったとはいえ、
資金繰りは俺が目を張るくらいなことを、
当初は話していたが、
やはり、お前がやれよとなった。

とはいえ、資金繰りは会社の要だから、
最低1年は俺の横で、
話をきいてもらうことになるぞ!
と引き継ぎ期間を付けることになった。

この時、
初めて親父のビジネススキルを、
間近で経験させて貰えると、
少し嬉しかったのを覚えている。

私にとってやはり親父の存在は大きいのだ。

ところがだ…
銀行との初めての打ち合わせで、
開口一番出てきた言葉がこれだ。

明日からコイツがやるから、
よろしく頼みますわ!

ん???
引き継ぎは???
明日から???

何をいっているのか初め理解できなかった。
銀行の担当者もポカンとしていた。

こんなせっかちな親父なので、
まだまだ、おかしなエピソードは沢山ある。

私の前では、
褒めたりすることは決して無かった。
ただ、私がやることには、
一切口を出さなかった。
良く言えば自由放任、
悪く言えばほったらかしだ。

面白いのが、ほったらかしのくせに、
私がミスをした時には、
裏でコソコソとやってくれていたりしていた。

そういうことは本人からは話さない。
意地が悪いとかそんなことではなく、
まあ、照れの裏返しとしか言いようがない。

世の中では、
跡継ぎに帝王学を、
学ばせたりするみたいだが、
そんなことは一切無かった。

私にとっての帝王学は、
ほったらかしにしたことで、
自然と誰にも頼らないことを、
覚えたのかもしれない。

あっ、
そう言えば、
1度だけ褒められたようなことがあった。

2人でホテルのBarで酒を飲んでいる時、
ふと、親父がこんなことを言った。

俺とお前じゃあ、
やり方がぜんぜん違うよな。

なんだか嬉しそうだった。

たぶん褒めてくれたのだろうと思う。

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