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精神障害をお持ちの方の就職活動について

これまで障害をお持ちの方の就職支援に携わってきて、多くの方が無事に就職をされていくのを見てきました。

私は就労移行支援事業所で支援を行なっていました。
就労移行支援事業所とは、障害をお持ちの方の一般就労へのサポートをする通所型の福祉サービスです。私が従事していた事業所は主に発達障害者・精神障害者の方を対象にした事業所だったので、関わる方々は診断は違えど、何かしらの「働くことの難しさ」や「生きづらさ」を感じておられる方々でした。

たくさんの方々とお会いする中で、ほとんどの方が就職されていきますが、中には途中でお付き合いがなくなってしまう方々がいるのも事実です。
その違いは何なのか、就職された方でもイキイキと働いている人と、しんどさを抱えながらなんとか働いている人の違いは何のか。

障害をお持ちの方の今後の転職活動や、今にも会社を辞めたいと感じている方々の参考になればと思います。

1.障害についての捉え方

私個人的には、ここが全てのような気がしています。よく「自己理解」と言われることが多いと思いますが、自己理解よりもっと前の段階、「障害受容」ができているかが大きいと感じています。

グリーフケアを先に学んでいた私は、障害をお持ちの方の障害の捉え方について、キュブラー・ロスの死の受容5段階のステップに似ているな、と考えています。

発達障害は生まれつきと言われていますが、幼少期から診断を受ける方もいれば、働き出してから何かしら業務に支障が出て受診し、診断を受ける方もいます。
発達障害だけではなく、適応障害やうつ、統合失調症などさまざまです。併存されている方もいらっしゃいます。

学校を卒業して、就職して、いざ働きだしてから見出されることも多い大人の発達障害ですが、多くの方はうつ傾向なのでメンタルクリニックに通われたが、診察をしていくなかで検査をし、発達障害と診断されることが多いです。

診断を受けて、働くことでの困りごとの理由がわかったことで腑に落ちる方もいれば、まさか自分が、そんなはずはない、と受け入れない方もいらっしゃいます。

20年30年、もしくは40年以上も生きてきて、ある日突然「あなたは発達障害です」「あなたは双極性障害です」と告知されて、すぐに「そうなんだ」とならないが普通だと思います。

中には精神保健福祉手帳の取得や、障害年金受給を頑なに拒む方がいらっしゃいました。その方は「手帳を持ったら自分は『精神障害者』だと認めることになる。それはできない」と話される気持ちを考えると、今でも胸が締め付けらます。

しかしそこをせず、そのままクローズ就労しても、働きやすく・生きやすくなることはないと考えています。

2.自己理解と試行錯誤

もちろん、障害を受け入れることは簡単なことではないですし、辛いことです。先ほどのように障害自体を受け入れない場合だけではなく、次に何か起こった時に「やっぱり自分は障害者だからダメなんだ」と自分自身を否定してしまいます。

今後働いていく中で自己理解が重要になってきますが、その作業は自分と向き合うことでもあります。向き合うことをせず、変わることはできません。しんどくなっった時は今の気持ちに素直に耳を傾けてみてください。常にエンジン全開で走る必要はなく、しんどくなったらブレーキを踏んで、自分を休めることも大切なことです。

そうして自分と向き合っていく中で、「こういう作業は自分は苦手だな」「この進め方よりこっちのほうがやりやすいな」など苦手なことがわかってきます。逆に「これは自分が好きな作業かも」「これは得意かも」と、新たな自分を発見することができます。

この時、自己受容ができていないと「できないこと」ばかりにフォーカスがいきがちです。自己理解に必要なのは、できる・できないを明確にすることはもちろんですが、できない・苦手なことが何かがわかることでストレスを減らすことです。

そうしていく中で、自分の好きなことや得意なこともわかってきます。「自分には得意なことも強みになることもありません」とよく話されるのですが、今まで働きづらさに目が向いていたため、本来持っている強みに目が向いていないのです。

自己理解を進めていくと、必ず得意なことや強みは出てきます。出てこないのは本当の意味で自分に向き合っていないともいえます。今まで怒られたりした経験がある方は、どうしても自分を卑下してしまいます。強みは意外と自分にとっては当たり前のことだったりするので埋もれがちですが、こちらもしっかり把握しましょう。

3.就労後に必要なこと

障害者雇用であれ、一般のオープン就労であれ、面接の時にはご自身の障害について語る必要があります。ここで大事なことは、障害を隠そうとしたり、そこまで困りごとはないと装ってしまわないことです。確かに同じ障害者雇用でも3つ配慮が必要な人と5つ配慮が必要な人であれば、少ないにこしたことはありません。しかし企業が聞きたいのはどういった配慮が必要で、どういう環境であれば能力が発揮できるのか、またその環境を提供することができるのか、です。

企業は決して、あなたが無理をして体調もメンタルもズタズタになって苦手な作業をすることに対価を払うのではありません。少しの配慮で作業がスムーズにでき、得意な分野で活躍することに対価を払うのです。

入社した後も、ずっと順調に仕事ができるとは限りません。時にはしんどくなる時もありますが、その時に必要になってくるのが自分から助けを求めることです。中には相談することに抵抗がある方もいると思いますが、いくら理解のある企業や上司、同僚に恵まれても、全てを理解してくれるとは限りません。定期的に面談を行なってくれることもありますが、その時まで我慢せず、ご自分の中で「ちょっとやばいかも」と感じたら、SOSを発信するスキルは必要です。

仕事以外でも、帰宅後や休日などにできるストレス対処法を持っておくことも大切です。できれば複数持つことをおすすめします。自己理解ができると、どういう時にストレスを感じるのか、どういった対処方法が有効なのかがわかってきます。

4.自分らしく働くために

働く理由を考えた時に、お金のためかもしれないし、生きていくために必要だからかも知れません。障害のある・なしに関わらず、やはり経済的に必要なものではあります。しかしどうやって働くかは自分で決めることができます。誰でもお金のためとはいえ、自分を押し殺して働くことも違うと思っています。自分らしく働くことは理想ではありますが、私自身の経験からの難しいことでもあります。しかし自分自身と向き合い、自己理解を深めていくことで、障害うんぬんではなく、ご自身の理想の働き方ができ、そういった経験をすることで自分のことも受け入れて好きになっていくんだな、と就職をした方々を見て学んできたように思います。

「障害だから」と諦めるのではなく、自分らしく働き、自分らしく生きていけるようにサポートしていきたらいいな、と準備を進めています。開業の際はまたここで告知させていただければと思います。


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