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キタダヒロヒコ詩歌集 98 海辺のダーツ



13年前、海の近くの町でダーツに興じる人々のことを
ひらかなばかりの連作短歌に歌ったことがあります。
漢字かな混じりの表記を添えて。




キタタヒロヒコ


うはたまのよるのそこひをきりさきのひかりにすさふとはのりはつし
(烏羽玉の夜の底ひを切り先の光りに遊ぶ(荒ぶ)鳥羽の(永久の)理髪師)



あをやきのいとひくことくきりさきはまとのまとかのしんをうかてり
(青柳の糸引く如く(孤独)切り先は的の円の芯を(心を)穿てり)
※「あをやぎの」は枕詞。



くはたててこのきりさきともろともにまとのまとかにすはれてしかな
(企ててこの切り先と諸共に的の円に吸はれてしがな)
※「くはだてて」には「爪先立ちで」の意もあり。



つかのきのつきつきにいるきりさきをあつめてまとはいたからめやも
(栂の木の次々に射る切り先を集めて的は痛からめやも)
※「つがのきの」は枕詞。



   とものみなかへれは
こまかにもかへのうかちのますままにむなしきへやをよはのしほさゐ
   (友の皆帰れば
細かにも壁の穿ちの増すままに空しき部屋を夜半の潮騒)





  

ひとつのことばの意味はひとつではない。
思いは、ひとつのことばには収められない。

いま、そういう気分の中にいる。
心の中の部屋に、どこからともなく潮騒が響いている。






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