ちちんぷいぷい、とんでいけ。
今の時代の母親は使うかわからないけど、少なくとも私の世代のほとんどの人は、幼い頃に母親から聞かされた記憶がある言葉だろう。
正確には「ちちんぷいぷい、痛いの痛いの、飛んで行け!」だったと思う。
転んで膝を擦りむいたり、頭をぶつけてこぶができた子供を安心させて落ち着かせるために母親が使う「おまじない」だ。
大人になってからはその言葉を聞く機会は無くなったが、つらい時や苦しい時、あるいは何かに挑戦する時、何かしらの「おまじない」のような言葉で自分を励ましたり勇気を振り絞ることは、時代や年齢を問わずに誰にでもあるはず。
「おまじない」は、どんな時に必要か?
もう間もなくパリオリンピックが開幕する。
世界で最も「おまじない」が唱えられる「おまじないセール期間」だ。世界的スポーツの祭典が2週間というのはやや短い気もするけど、願いを叶える神さまの立場になればその位が限界かもしれない。
それはさておき、この2週間を戦い抜くアスリートたちはいったいどんな「おまじない」を唱えるのだろうか?
「ちちんぷいぷい」はリズムも良いので、競技中に叫んだらテンションも上げやすい気がする。
槍投げの選手なら、「ちちんぷいぷい、世界の果てまで飛んでいけ~!」
棒高跳びの選手なら、「ちちんぷいぷい、天までと届け~!」
かもしれないし、日本のお家芸である柔道選手なら全員共通で、
「ちちんぷいぷい、金メダル!」が相応しい。
オリンピック本番はもちろんだが、これまでで戦い抜いてきた予選、あるいはそれ以前のもっと前から「ゲン担ぎ」として必ず唱える「おまじない」のような言葉が、選手一人ひとりに存在しているような気がする。そこにスポットをあてるTVの特番があったら面白そうだ。
でも、ちちんぷいぷいは本来、転んで怪我した時のように、失敗した時の不安な心を落ち着かせる時の方が一般的な使い方だろう。
それに、オリンピック選手になれる人はごくわずか。一般庶民の「ちちんぷいぷい」はもう少し日常に寄り添ったものであるべきで、人それぞれの性格や癖みたいなものに対して、幾度となく重ねた失敗を繰り返さないために使う方が「庶民的なちちんぷいぷい」だと思う。
「ちちんぷいぷい」本来のヘビーユーザーはやはり、「母と子」だろう。
「母と子のちちんぷいぷい」で寄り添い型のシーンと言えば、好き嫌いのあるお子様に苦戦する母親の姿が目に浮かぶ。
ニンジンなどの野菜を細かく刻んで、目には見えない状態にしたカレーやスープを作るシーンで、
「ちちんぷいぷい、大きくなあれ!げんきになあれ!お野菜が好きになれますように!」
と唱える「おまじない」があったら、多くの母親に共感されそうだ。
「ちちんぷいぷい」はその使い方から子供だましのように感じるが、考えてみれば、「大人のちちんぷいぷい」だってたくさんありそうだ。クラスメートに片思いしてる女子高生が授業中ひそかに
「ちちんぷいぷい、お願いこっち見て!」
と、唱えている姿も想像できる。しかも、偶然目が合ったりしたら、それこそ「神業レベルのちちんぷいぷい」である。
「働く男のちちんぷいぷい」だってある。これは私の実際の経験談だが、少し信用できそうにないと一方的に感じてしまっている取引先の担当者からの返事をまだかまだかと待ちわびる間に、よろしくない想像ばかりしていたところに届いたメールが、案の定、全く期待外れの答えだった。それを見た瞬間に私はお朝得ていた感情が高ぶり、「怒りのメール」を返信してしまった。
しかし、冷静になってからあらためて読み返してスクロールしたら、下の方にちゃんと求めていた回答が記載されていた・・・。
「短気は損気」なんて言葉があるが、年を重ねてからその言葉を身にしみて感じている。なので、最近は「落ち着け!」「見直せ!」と心の中で唱えることを心がけるようになり、「セーフ!」になることも増えてきた。社会に身を置く限り、性格や癖の良し悪しは、それぞれみんなで「お互い様」であり、相手を受けいれることも「大人の作法」なのだ。
~本日の善玉訓(きん)~
✓ちちんぷいぷい、ここが我慢のしどころです!
【★★★】困難を乗り越え、より良い結果が得られる!
それが、働く大人たちの最も共通する「おまじない」かもしれない。
(ぴん👆)