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【読書日記】 「森美術館のSNS マーケティング戦略 シェアする美術」を読む


行ったことはないけれどもSNSで「知ってる気分」になっている森美術館。「美術館のマーケティング戦略って?」と興味がわきました。



第1刷:2019年6月12日
発行元:株式会社 翔泳社
著者:洞田貫 晋一郎
内容:2018年美術展覧会「入場者数」1位・2位を達成した森美術館がこれまでに取り組んできた展覧会におけるさまざまなSNSの取り組みを紹介します。


森美術館 行ったことないけど「なんだか他の美術館とは違う」というイメージは本当だった

本を読む前から、森美術館が「なんだか他の美術館とは違う」という印象を持っていました。
西洋美術が好きな私は、現代美術を扱う森美術館へは行ったことがなく、美術館巡りの行き先候補の下の方です。

けれども、TwitterもInstagramもフォローし、ちょくちょく閲覧します。行ったことがなく、行く予定も今のところない美術館のSNSをフォローしているのは森美術館だけです。

他の美術館は「今度行くから混在状況を知る」「次の企画展の情報を得る」など明確な目的があり、フォローしています。

そういった点から考えても、私にとっての森美術館は「ちょっと違う」「SNS見るだけでもいい気分になれる」という”異質感”を持つところだったのです。


その”異質感”は、読後、さらに高まりました。


Twitter、Instagramのフォロワー数が日本で最大規模である、とか、基本的に作品は全て撮影OKとか、そういった表面的なことだけではありません。私がこの本から感じ取った森美術館の”異質感”は次の3つです。

  • SNSを通じて森美術館へ行った気分になれる
    森美術館のSNSは、来館者向けの事務的?な情報伝達よりもは作品が中心です。そのため、「行く」「行かない」という自分の動きを考えずに、作品に浸ることができる→無意識のうちに森美術館へ行って作品を見ている気分になるのです。
    内容はもちろん、作品の並べ方など、細かい点まで工夫され流されているSNSなのです。

  • 森美術館への来館者も増えるが、来館しない”客”も増える
    レアンドロ・エルリッヒ展では、SNSの戦略によってその年の入場者ランキング1位になったことの理由を分析し、説明されています。「こんな細かいことまで考えられているのか」と驚きました。しかし、そういった戦略があるからこそ、印象派ではなく、現代アートの分野で来館者を増やすことができたのです。一方で、「遠い」「時間がない」「興味はあるけれどもそれほどでもない」などの理由で来館しない人がいます。その来館しない人の中にTwitterやInstagramをフォローし、アート作品に対峙する人が激増し、まさに「来館しない”客”」も多くいると思うのです。

  • 森美術館のSNS管理者のプロ意識が高い
    多くの美術館では、SNSの担当者は専任ではなく、メインの業務の片手間にSNSをやっているそうです。
    確かに、私がフォローしているいくつかの美術館のTwitterの内容は、実に事務的であったりします。なるほど納得です。
    森美術館にはSNS管理者は「ソーシャルメディア・マネージャー」とよばれる専任です。その管理者はSNSに関わるあらゆることをしておられます。投稿はもちろんのこと、ユーザーの分析、結果報告、SNSを担当しているからこそのプロモーションの発想などです。
    文面から、「ソーシャルメディア・マネージャー」としての高いプロ意識を感じとりました。さまざまな業務をこなし、成果をあげ、プロとしての自信をもつことのできる、そのような仕事の仕方にはあこがれます。

    以上、この本から私が感じ取った森美術館の”異質感”でした。
    「戦略」「秒との戦い」など、美術館のイメージからは遠い言葉が出てくるのも面白かったです。

    これまで「来館しない”客”」の私でしたが、近い将来「来館する”客”」になるでしょう。



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