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「DXのアプローチ:日本固有の問題を乗り越えてゴールを目指す」

日本固有の問題

日本でDXを進めていくうえでは、残念な現実をしっかり受け止めた上で、なかなか高いハードルを越えなければなりません。

そして、陳腐化し、アリバイ化して、本来の目的を失ったマネジメントシステムの見直しもハードルのひとつになるでしょう。

日本のITが現場業務転写型になっているという問題

  1. 日本のコンピュータシステム(コンピュータ&ネットワーク)は、紙ベースの業務プロシージャをそのまま転写したソフトウェアのまま現在に至っている。しかも、それが日本だけであり、欧米のみならず世界から取り残されていることに気づいていない。

  2. コンピュータシステムが、物理制約を取り除いた企業活動をソフトウェア化して動かせる論理空間を提供するものであると理解している人が圧倒的に少ない。

  3. 物理制約を取り除いたリレーショナルデータベースを中心にしてオンラインリアルタイムでのトランザクションベースのソフトウェアを設計できるエンジニアが圧倒的に少ない。結果、外国から持ってきた統合ソフトウェアパッケージ(SAPなど)の構造を理解できないため、本来の設計思想にもとづいて導入することができない。

従業員が企業に対して強い従属関係にあるという問題

日本では、一般に従業員が企業に対して強い従属関係にあるため、上意下達風土が蔓延しやすく、単純にSNSなどを導入して、多少なりともコミュニケーションの活発化には寄与できても、まだまだ社会の一員としての見識が企業の運営に活かされる状況にはありません。また、活かすべく個人としての見識やノウハウ・スキルを高める意識も低いという現実を踏まえざるを得ません。

業務処理が硬直的で変えにくいという問題

コンピュータ化されている如何に関わらず、紙ベースの業務になっているので、ルーティン業務が硬直的で、表面的なことであっても変更コスト(時間と手間)が高くつため、環境変化等についても追加追加の業務積み増し方式になりやすく、時間経過とともに業務負荷が高まることになります。そんな業務をシステムに転写してもそのシステムは生まれた時から不良資産です。

そもそも日本人は理屈が嫌いという問題

そして、そもそも日本人は理屈が嫌いという問題もしっかりと腹に入れておく必要があるでしょう。

  • 思想と理論と手法(実践)における理論

  • 概念と論理と物理(実装)における論理

  • 理想と行動計画と現実における行動計画

を話題にするのを本当に嫌がる人が多い。思想と理論ばかりで実践がないとか、概念と論理ばかり実装がからきしな外国人も多いのですが、DXは理論/論理(理屈)空間を中心した話し。
理屈が嫌いなんて言っていられないのです。

それぞれで出発して最後に合流する

DX-Readyと言えない多くの日本企業のDXはどうやって進めればいいのでしょう?

やはり具体的にはITガラパゴスの日本に記載した方法をベースに計画するしかないように思います。それぞれで出発し、できるだけ早期に成果を享受/確認しながら、日本を主戦場にしている企業は、日本人の生活がDX化されてしまわないうちに、そして、ミラーワールドをベースした生活が若者を中心に一般化してしまわないうちに、外国に追いついて追い越すという戦法です。まだ数年の猶予はあるでしょう。

ただ、日本資本のグローバル企業の場合には、日本のDXが海外法人のDXの足を引っ張るようなことだけは避けていただきたいと心から願います。

日本企業のDXアプローチ

現実的にはかなり根深い日本固有の問題を乗り越えながら、DXを進めるアプローチ(シナリオ)がなくもありません。ITガラパゴスの日本で記載したシナリオをベースに再整理してみます。
まあ、一番の問題は、日本人の文化とも言える理屈嫌いですが、背に腹は代えられないことを頭で理解してもらうしかありません。

最初に取り組むべきこと(前提条件の整備)

最初に取り組むべきこととして、経営陣や主要組織長による、日本企業が陥っている根本問題に対する理解と、それを含めて解決しながら進むべしという、総論レベルであっても、ある程度の合意形成を確保することです。

同時並行で取り組みべき4つのこと

やはり、実業務転写型でバッチ中心かつ、顧客や取引先との手続きとも相互依存している既存システムの構造的問題と、そのために現時点では必要とされないために論理空間設計能力を持つ技術者がいない問題は、現実として相当厳しいと言わざるを得ません。

ただ、この技術者がいない問題についての明るい話題は、一般的なPCの画面によるユーザーインターフェースを有するPC系や何らかの機械装置をコントロールするためのソフトウェアを設計構築しているエンジニアのスキルは、論理空間設計のスキルとの共通性が極めて高いので、論理空間設計のできるビジネスシステム系エンジニアへの転身は容易と考えてよさそうだということです。

推奨したいアプローチは、以下の狙いをもって、

・部分であっても早期にDXの成果を確認する。
・顧客提供価値創出のために常時最善を尽くす風土醸成/スキル修得を図る。
・論理空間設計能力をもった技術者を育成する。
・精神論でない全体最適の一つの切り口を理解する。
・新しい事業の種をまく。

DX0.0は前提条件として整えながら、DXの3つのステージを意識した4つの取り組みを同時並行で走らせ、それらの活動を通じて、組織的に当事者能力を身に着け、真の全体最適化とエコシステムへの展開から真のBPRにつなげてDXのゴールに向かえるようにするというものです。

  1. 基幹業務周辺領域のDXで早期成果創出:DX1.0
    顧客接点のデジタル化/生産工程の自動化/BIGDATA&AI活用による分析の高度化等

  2. 新事業や新サービスの企画・検討・導入:DX3.0

  3. データレベルで最適化を目指した全社統合DMP構築と活用推進:DX1.0/DX2.0
    この活動には、データ設計とデータマネジメント体制作りが必須であり、データモデリングやデータ設計、オントロジーへの拡張を意識したデータディクショナリー作りを通じて、論理空間設計能力を持った技術者を育成していく意味があります。

  4. 複数部門横断の業務範囲で全体最適化を目指したオペレーショナルエクセレンス(OE):DX1.0/DX2.0
    この活動では、論理空間設計能力習得のOJTを兼ねてノーマライズを追求したテータモデルを作成し、そのデータモデルをもとに全体最適化したシステム設計と業務設計を行い、システムを構築・導入することで、全体最適の意味と価値と運用の要諦を組織知とすることができます。

リアルタイムオペレーションへの変革とエコシステム連結でDXのゴールへ

オペレーションと基幹業務システム

リアルタイムでトランザクション一気通貫型の業務システムと業務プロシージャにする。(事実上はERPをフル活用することになるだろう)
現場の装置とリアルタイムに繋げ、資産移動をリアルタイムに把握可能にする。
重要なエコシステム(バリューネットワーク)を構成する重要な取引先とリアルタイムにプロセスを連結、取引関連業務プロシージャを自動化するとともに顧客への提供価値を向上させる。
法人としての法定の存続手続などを除き、顧客への提供価値創造に寄与しない仕事は無くし、必要な事務処理は簡素化して自動化する。
新事業のスケーラビリティを拡大する。

データ管理と活用

全社DMPを短い間隔でタイムスタンプとともに全データを更新するとともに、非構造化データ含めて構築し、全社をスコープとしたプロセスマイニングや各種のデータ解析を可能にする。
データレイクにクラウドサービスのヒストリカルデータを格納し、データ安全保障を確保する。
そして、全体最適スコープでのオペレーショナルエクセレンス(OE)活動を支援する。

組織と人財

事務処理業務から組み立てたピラミッド型組織から、情報共有&コミュニケーションシステムをフルに活用した、顧客視点・全体最適・全員参画を志向した人財成長プールとテーマ推進チームを組み合わせたネットワーク型組織となり、企業と一人ひとりの関係は対等な関係になって総力戦を戦う体制を作り上げる。

#DX
#デジタルトランスフォーメーション

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