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「DXのアプローチ/日本固有の問題を理解する」

DXを考えるうえで重要だけれども、言及されないDXのレイヤー構造と、各レイヤーを同期させながら、DXのステージを上げていって、社会のデジタル変容を牽引する存在になってその先へ進んでいく、というのがDXロードマップの王道と言えます。
変革の大義を明確にし、ゴールに向けて実際にロードマップを進めていくにしても、日本固有の問題を理解したうえで、その問題解決とともに進めないことには、結局上滑りの活動になって、せっかくのDXもいつの間にか昔の話となり、益々日本は世界に取り残され、しかも取り残されていることに気づかないまま、どんどん外国資本に浸食され、外国資本の下請けで生きていくことになるでしょう。是が非でもそれを避けたいと思って書いています。

DXレイヤーとDXのステージ

DXのレイヤー

  1. 一人ひとりの個人
    すべての基本となる一人ひとりの働き方、企業・団体との関係性のレイヤー

  2. 業務オペレーション
    特定の何かをアウトプットするための様々な業務オペレーション(コンピュータ・専用機器・人間の作業による)のレイヤー

  3. 組織と組織間連携
    企業内の組織、業務委託先、購買先、販売先、仲介先など、お客様がその企業が提供する価値(製品・サービス)を受け取っていただくための価値創造ネットワークのレイヤー

  4. 事業(ビジネスモデル)
    お客様の問題解決に寄与する価値(製品・サービス)を創造し提供する仕組みのレイヤー

  5. 社会
    企業が属する業界のみならず、学会なども含めた社会全体におけるあり方のレイヤー

DXのステージ

日本のDX固有の問題を解決しながら進める

実際にDXを進めていくにしても、ITのみならず日本のDX固有の問題があることをしっかりと理解し、その問題を解決しながら進めていく必要があります。
つまり、ほとんどの企業が他国と違い、DX Readyの状態にないという事なのです。
ITに関していえば、ITガラパゴスの日本でも書きましたが、伝統的日本企業の多くは、コンピュータ&ネットワークを「計算と記録と通信」という機能としてのみ活用し、物理制約を取り除いた企業活動をソフトウェア化できる論理空間を提供してくれる機能として理解していないため、紙ベースの業務プロシージャをそのまま転写した基本構造のまま進歩していません。しかも、IT化の裾野だけは拡大し、構成するソフトウェアの規模は転写方式あるいは離れ小島方式で今も膨らみ続けています。

日本固有のIT問題

ITについては特に以下3つの問題がある事を認識してもらいたいと思います。

  1. 日本のコンピュータシステム(コンピュータ&ネットワーク)は、紙ベースの業務プロシージャをそのまま転写したソフトウェアのまま現在に至っている。しかも、それが日本だけであり、欧米のみならず世界から取り残されていることに気づいていない。

  2. コンピュータシステムが、物理制約を取り除いた企業活動をソフトウェア化して動かせる論理空間を提供するものであると理解している人が圧倒的に少ない。

  3. 物理制約を取り除いたリレーショナルデータベースを中心にしてオンラインリアルタイムでのトランザクションベースのソフトウェアを設計できるエンジニアが圧倒的に少ない。結果、外国から持ってきた統合ソフトウェアパッケージ(SAPなど)を本来の設計思想にもとづいて導入することができない。

従業員が企業に対して強い従属関係にあるという問題

また、特に従業員と企業の関係に着目しなければならないでしょう。あるべき姿としては、企業は、今後益々総力戦で戦っていく必要がありますので、社内SNSなど、デジタル技術を活用することによって、従業員一人ひとりの見識やノウハウ・スキルなどの能力をフルに発揮している状態を目指していくことになります。

しかし、日本では、一般に従業員が企業に対して強い従属関係にあるため、上意下達風土が蔓延しやすく、単純にSNSなどを導入して、多少なりともコミュニケーションの活発化には寄与できても、まだまだ社会の一員としての見識が企業の運営に活かされる状況にはありません。また、活かすべく個人としての見識やノウハウ・スキルを高める意識も低いという現実を踏まえざるを得ません。
言うまでもなく、企業が用意する研修プログラムなどもあてがいぶちになりやすく、歩留まりも低いのは、異論のないところだと思います。

つまり、企業と従業員の関係を、契約としてとまでは言いませんが、従属関係から対等関係に変えていく必要があるということです。

業務処理が硬直的で変えにくいという問題

さらに、コンピュータ化されている如何に関わらず、紙ベースの業務になっているので、ルーティン業務が硬直的で、表面的なことであっても変更コスト(時間と手間)が高くつため、環境変化等についても追加追加の積み増し方式になりやすく、時間経過とともに業務負荷が高まることになります。

そして、ある程度積み増しが限度に達すると、システム化している場合にはシステムの再構築が実施されますが、物理制約と取り除いた論理プロセスと、物理制約部分の制御プロセスを分けて設計構築するスキルがないため、結局はバッチシステムの作り直しとITの裾野が広がるだけ(不良資産が増えるだけ)でになってしまうケースが大半です。

日本のDXに必要な人財と育成

今の日本のDXに必要な人財はデータサイエンティストではない。

DXに必要だが、不足している人財は、いわゆるデータサイエンティストではありません。そもそも、データサイエンティストが活躍できる状況にないということと、ある一定レベルのAI活用や統計解析は、ソフトウェアサービスとして提供されていますので、ベーシックな需要は特別なスキルまでは不要な企業が大半でしょう。
DXに必要だが、不足している人財は、論理空間設計、つまりデータモデリングを行えるビジネスプロセスモデラーと、全体最適視点で問題分析/課題設定/課題解決ができるオペレーショナルエクセレンスリーダーです。

ビジネスプロセスモデラーの育成

1980年代に遡って、正面からビジネスプロセスモデルを設計できるモデラーを育成するのは難しいので、一つはPC系のパッケージソフトウェア開発をしていた技術者をモデラーとして育成するというのが有力な案ですが、自社に該当する人財がいない場合および足りない場合には、リアルに業務プロセスと同機させるのは、難しいとしても、プロセスマイニングの対象として利用できる全社データマネジメントプラットフォームを設計構築する過程で、一般のシステムエンジニアにモデラーとしてのスキルを身に着けてもらうというのが最も現実的な方法と考えます。そのうえで、場合によっては、データサイエンティストとしての基本機能を担ってもらうことで、ベーシックな解析を自前で行えるだけでなく、新規データの取り込みなど、DMPの機能拡張においても、ハイレベルのデータサイエンティストと円滑に連携して過不足ない設計構築が可能になるでしょう。

オペレーショナルエクセレンスリーダーの育成

オペレーショナルエクセレンスを実現する手段として、リーンシックスシグマの手法は様々な場面で活用できますが、今の日本の現状では現場改善で留まってしまうので、DXのプロジェクトにそのまま適用することは難しいと思います。しかし、外部の研修等を活用してDMAICなどの基本的な知識を身に着けてもらったうえで、今の日本の現状を踏まえたDXにおける業務オペレーションレイヤーの進化をリードする役割を担ってもらうべく、実際の業務で担当者とともに課題解決を実行することで、育成していくことが可能です。ただし、全体最適感を明確に認識してもらうために、ビジネスプロセスモデリングの概念についてはきちんと理解してもらう必要はあるでしょう。
また、データサイエンティストとしての基本機能を担ってもらうことで、ベーシックな解析を自前で行えるだけでなく、ハイレベルのデータサイエンティストと連携して高度な問題解決を図ることが円滑になるでしょう。

#DX
#デジタルトランスフォーメーション

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