「一人ひとりにとってのDX」
DXを考えるうえで重要だけれども、言及されないDXのレイヤー構造と、各レイヤーを同期させながら、DXのステージを上げていって、社会のデジタル変容を牽引する存在になってその先へ進んでいく、というのがDXロードマップの王道と言えます。
これまでの記事は、DXを推進する立場の人向けですが、ここで少し視点を変えて、企業や組織に努める役員や従業員個人にとってのDXについてまとめてみたいと思います。
企業のDXの成功は、個人のDXの成否で決まる
ビジネスプロセスモデリングのスキルをもったエンジニアが圧倒的に不足していることに加え、企業への強い従属(依存)関係にある従業員と柔軟性のないバッチ中心の業務処理など、日本固有の問題を無視してDXを進めても、早晩バスワードで終わり、日本は取り残されていることに気づかないまま、どんどん外国資本に浸食され、外国資本の下請けで生きていくことになるでしょう。
私は、是が非でもそれを避けたいと思っていますし、みなさんもそんなことはまっぴらごめんでしょう。しかし、DXの成否は皆さん一人ひとりのデジタルフォーメーションの成否がその鍵を握っていることに気づいている人は少ない気がします。あるいは自分一人くらい大した影響はないと思っているかもしれません。でも、みながそう思っていたらどうでしょう?本当に関係ないと言えますか?
関係ないわけがありません。一人ひとりの問題です。
DXレイヤーとDXのステージ
DXのレイヤー
一人ひとりの個人
すべての基本となる一人ひとりの働き方、企業・団体との関係性のレイヤー業務オペレーション
特定の何かをアウトプットするための様々な業務オペレーション(コンピュータ・専用機器・人間の作業による)のレイヤー組織と組織間連携
企業内の組織、業務委託先、購買先、販売先、仲介先など、お客様がその企業が提供する価値(製品・サービス)を受け取っていただくための価値創造ネットワークのレイヤー事業(ビジネスモデル)
お客様の問題解決に寄与する価値(製品・サービス)を創造し提供する仕組みのレイヤー社会
企業が属する業界のみならず、学会なども含めた社会全体におけるあり方のレイヤー
DXのステージ
DX0.0:働き方改革⇒一人ひとりの個人のワークインライフの充実
DX1.0:業務改革⇒顧客価値提供のために最適化された社内業務プロセス
DX2.0:組織改革⇒市場競争力を最大化したエコシステム
DX3.0:事業改革⇒高い参入障壁で代替不能/困難なビジネスモデル
DX4.0:社会改革⇒自他共に認識される社会における高い存在価値
社会における生き方が問われる
すべての基本となる一人ひとりの働き方、企業・団体との関係性に関する、一人ひとりの個人のレイヤーでは、デジタル変容する社会における、働き方や個人と企業・団体との関係性のありかた、少し大げさに言えば生き方が問われます。
企業から見ると、経営者がリーダーシップを発揮するのはもちろんですが、様々な人やモノがネットワーキングする社会においては、如何にして提供する価値の不可欠性や代替不能性を高めるための総力戦の体制を作っていくか?ということになりますので、個人のパフォーマンスを最大限発揮してもらうための仕組みや体制を整えていくとともに、如何に高いパフォーマンスを発揮する人を仲間になってもらうかが極めて重要な経営課題になります。
先進国では少子高齢化が進み、特に日本では、いかにして介護と子育てと仕事を両立させるかというのが、このレイヤーでの基本的なイシューだと言えるでしょう。
そのために働く場所や時間を限定しない自由度の高い働き方を提供する企業も出てきましたし、フルリモート勤務前提での雇用形態を選べる企業も出てきました。地方の企業などでは人財確保が難しいため、フルリモート雇用によって、都市部の優秀な人財を確保するという狙いです。
一人ひとりの個人にとっては、雇用形態を問わず、
如何にして高いパフォーマンスを発揮しつづける人になるか?
が重要な課題になります。
そしてそれは、公私の区別なく全人格的に取り組まないといけない人生の課題ということで間違いないでしょう。
健全で対等な関係になる
雇用形態を問わず、競争優位な高いパフォーマンスを発揮しつづけるために、いうまでもありませんが、常に知識・ノウハウ・スキルを磨き、少なくともマインド的には企業と対等の関係になる必要があります。
個人としては、その創出価値によって、企業にとって不可欠で代替不能な存在となるということですが、決して仕事を抱え込んでブラックボックス化し、属人化を目論めということではありません。お互いに不健全な状態ではあるけれども離れられない、個人と企業の共依存関係ではなく、いつでも離れられる健全で対等な関係でなければ意味がありません。
実際には、企業や組織における、あるテーマを実行するために集められた、競争優位な知識・ノウハウ・スキルを持ったチームの一員やリーダーとして、高い価値を創出する役割の一部を担うということになるでしょう。
目指す姿は個人個人がお互いに尊重するとともに尊重されるにふさわしい存在であり続けんとし、個人と企業の関係も対等な関係として価値提供とそれに対する対価(対価は金銭だけではなく、成長の場、出会いの場も含みます。)を提供するという状態です。Web3.0の時代にはまさにそれがグローバルに拡大していくことになるでしょう。
したがって、企業の中においても、個人と個人の関係は、上司部下の関係も仕事においては対等であり、購買先であれ販売先であれ、パートナー企業に属する個人との関係も対等にならなければ、競争優位な価値を創造し、お客様に届けることはできなくなるので、人としても成熟が求められることになります。
例えば、購買元企業の担当者が購買先企業の担当者に対して横柄な態度をとる、子会社の社員に対して親会社の社員が横柄な態度をとるような人は、バリューネットワークにふさわしくないということになって、存在感を示すことはなくなるでしょう。
高いパフォーマンスを発揮しつづける
自分の時間を何に使うか?
「高いパフォーマンスを発揮しつづける」というのは、どういうことなのでしょう?かつての猛烈サラリーマンでしょうか?
瞬間最大風速で高いパフォーマンスを発揮することはできても、学ぶ時間のない生活では、社会的にはあっという間に陳腐化し、気が付いたらレガシーサラリーマンになってしまうのか、身体か心を壊してしまうのが関の山です。
企業側からは、ワークライフバランスやワークインライフという取り組みがありますが、ただ単に労働時間の短縮を目指したものではありません。もちろん仕事以外の時間の充実が高いパフォーマンスを発揮するワークを継続的に生み出すことを企図した取り組みであり、創出した時間の使い方は個人に委ねられるが、より高いパフォーマンス発揮を目指した学びや、自己認識の外側にある学びに繋がりうる多様性の高い人的ネットワークの拡大などの連続非連続の自己成長のための時間投資の拡大にも期待が込められていると言っていいでしょう。
自分自身のDXによる更なる時間の創出と学びの効率化
ワークインライフやリモート勤務で創出した時間だけではなく、デジタル化された各種のサービスを有効に活用することで、更なる時間創出や学びの効率化を図ることもできます。つまり最先端の生活者になってデジタルの恩恵を存分に生活に取り入れるということです。
SNSやチャットツールを上手に使った人的ネットワークの維持・活用・拡大
ECサイトによる各種アイテムの調達時間の短縮
国内実店舗での入手困難アイテムの海外ECサイトでの入手
様々なイベントの企画・集客、イベントの発見・参画
ブログ記事発信などによる付加価値の拡大再生産
本読みサービスによる隙間時間の有効活用や、何かしながらの聞き取り。
等々
日々登場する様々なサービスを上手に生活に取り入れることによって、時間当たりの生産性を随分と向上させることができます。
生活の中での時間の使い方を点検し、価値を生まない時間を短縮して時間を創出し、より良い自分のために効果的に時間を使うのが大切です。
時間の使い方次第で大きくパフォーマンスが変わるし、人生の充実感すら変わってくることでしょう。
日本人はITリテラシーが低いと言われますが、つまらないこだわりを捨て、学ぶことでリテラシーを高め(ITリスク回避含む)、上手に道具を活用して高いパフォーマンスを発揮しつづける存在になってください。
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