卒業写真
母校の中学から封筒が届いた。
何事かと思った。
もう卒業して20年になるのに。
昔割った窓ガラスの代金を請求されたりしないだろうな……。
中を開けると、紙が一枚入っていた。
内容は『卒業アルバムを受け取りに来い』というもの。
俺は不良だったこともあり、卒業式には出ず、友達と酒を飲んでいた。
だからアルバムを受け取っていなかったのだ。
それにアルバムなんて、一家に一冊でいい。
うちには兄のものがあったので、それで十分だった。
まあでも、取りに来いって書いてあるしな……。
俺は、近々、兄の三回忌で実家に帰る機会があるので、その時に寄ってみることにした。
◇
「ほれ」
あの頃と変わらないぶっきらぼうな担任に、卒アルを手渡された。
「ありがとうございます」
「優介、最近の卒アル、見たことあるか?」
「いえ」
少し慣れたとはいえ、まだその名前で呼ばれるのには抵抗がある。
「最近の、すごいぞ!」
俺は開いて驚いた。
何と、個人写真のページに再生マークがついており、タッチすると動画が見られるようになっていたのだ。
「今こいつ何してんねん、って思うことあるやろ?」
「はい」
「見えんねん」
担任はそう言って、得意げにアルバムを指差した。
俺は楽しくなり、どんどん再生した。
ミュージシャンの夢を語っていた宏樹は、金沢のライブハウスで歌っていた。
元カノの美咲は、子供3人を連れてテーマパークではしゃいでいた。
まさか鬼ギャルだった麻里が、海外の一流ホテルで働いてるなんてな。
そして不良仲間だった和夫と鉄心は、物理の先生と警官か……。
ページをめくるたび、懐かしい顔が並び、当時が浮かび上がる。
俺は和夫や鉄心とタバコを吸い、カツアゲし、原付を乗り回し、他校の生徒ともめてばかりいた。
今ではそんな日々を少し反省している。
あの時、兄の言うことを聞いておけば……。
「自分のとこ見てみ」
そう言われ、恐る恐る5組を開くと、俺は黒く塗り潰されていた。
「そこちゃうやろ」
「え?」
「だから呼んだんや。お前が優介じゃないことに、気が付いてないとでも思ったか?」
俺は黙るしかなかった。
「浩介、まさかお前が優介として生きてるとはな。双子の兄を殺して、財産奪って。どんな気持ちで、三回忌に出席したんや」
俺は次のページを開き、本当の自分を見た。
そこには青ざめる今の俺が写っていた。
くそおおおお!
俺は久しぶりに母校の窓ガラスを叩き割った。
同時に、見覚えのある警官が突入してきた。
面白いもの書きます!