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CEOが語る、Fabeeeの地平線

2024年、Fabeeeは創業15年目を迎え、
新たなバリューとミッションを掲げました。

「世界の心拍数を1上げる」
「知覚」「思考」「実行」

この数年間、Fabeeeが経験し、生み出してきたものとは何か。
どこに向かうのか。メンバーが自身の軌跡を交えて語ります。

まずは佐々木淳・Fabeee代表取締役CEOから。

バンソウDXという「新機軸」

ー 2020年から始めた企業向けDX支援事業「バンソウDX」が、Fabeeeの新たな柱に成長しています。2023年からはコンサルティングパートナーにも認定されました。「すべての企業にDXを」を掲げ、問いに重点を置いたコミュニケーションで顧客企業の課題と背景の理解を深め、着実な開発で実装まで伴走します。

佐々木:
「バンソウDX」のもとをたどると、2020年、九州拠点の大手メーカーへの支援がきっかけでした。製品のユーザーと強い絆がありながら、新規顧客の獲得に苦慮していました。打ち手を模索する中で、Fabeeeが新規事業開発とデジタル変革を支援することになったのです。

DXといっても、実は非常に人間臭い仕事です。組織そのもののありよう、そこで働く従業員の方々の意識を変えていかないと、絵にかいた餅になってしまう。


佐々木:
プロジェクトにかかわったメンバーは「10を与え1を得る」のマインドで取り組みました。誰もやりたがらないことを自ら引き受け、時には泥臭く、粘り強く少しずつ組織や働く人の意識のギャップを埋め、DXへのコンセンサスを広げていきました。

そのうち「運用コストが下がった」「次の事業につながるヒントを得られた」と、小さな手ごたえが積み上がり、組織が少しずつ変わっていきました。

このプロジェクトで、FabeeeならではのDX支援の原型が固まりました。それをメンバー自身が「バンソウDX」と名付けました。僕が関わらなくても、彼ら自身でボトムアップで生み出した事業。本当に嬉しかったです。

今はさらに、その先を描こうとしています。エンジニアやコンサルタントだけではなく、経理やコールセンターのオペレーターも含めた多様な職種の人材にも来てもらい、企業のDXから派生する業務の川上から川下まで、Fabeeeが関わっていきたい。

九州という「ポテンシャル」

ー 九州の企業のDX支援で、「九州」という地域と経済の可能性も実感したといいます。

佐々木:
全国的な知名度のある企業が九州各地にあって、つながりあいながら地域経済を盛り上げる力を生み出している。台湾の半導体企業「TSMC」も熊本に進出しましたし、地元経済への波及効果も期待できそうです。一方で、デジタル・IT企業の競合は東京ほど激しくはありません。京阪神や広島への地の利もある。さっそく福岡・小倉に支店を開設し、そこから西日本一円に出向いています。

九州に限らず、地方にはキラリと光るものがたくさんあるんですよね。最近、いくつかの食品企業にお邪魔して、もったいないなあと思ったことがありました。質の高い調味料で名が知られているのに、特定の得意先にしか卸していないそうなんです。びっくりするくらいうまい納豆を作っていて、海外から引き合いが来ているのに、展開していない工場もありました。

資本やノウハウ不足が足かせになって、従来の商慣行や事業形態から自由になれていないように見えました。直販モデルを導入できたら消費者と直接つながり利益が増えるのに、なんてもったいない。でも見方を変えれば、そこにこそ支援のチャンスがあるのだと気づかせてもらいました。

地方の小さな企業に、Fabeeeとしてどんなバンソウができるんだろう。事業継承も見据えたファンドやM&Aなどで、支えられないだろうか、と考えているところです。

Salesforceという「基盤」

ー Fabeeeは2023年、Salesforce社のコンサルティングパートナーに採用されました。ビジネスプラットフォーム「Salesforce」を基盤に、顧客企業の事業や業務の変革を支援しています。同年11月の同社の年次カンファレンス「Salesforce World Tour Tokyo」では、支援先の企業の事例も紹介されました。

佐々木:
国際物流企業「フライングフィッシュ」のDXプロジェクトの支援がそれですね。

同社の基幹システムをSalesforce上に構築し、アナログの業務をデジタル化するプロジェクトで、Salesforceのカンファレンスでも紹介されました。「バンソウDX」の実績が、広く認知されるきっかけになった事例です。

佐々木:
国際物流という業界は、たくさんの事業者が関わっています。荷主から問い合わせがあれば、同社が情報を取集し、報告する役割を担っています。

積み荷や船名などの「船荷情報」を、基幹システムと社内エクセルに二度入力していたり、荷主から船の寄港情報などの問い合わせが来ると、その都度電話やメールで船会社に確認したりと、業務をもっと効率化させたい、とDX化に踏み切られました。

Salesforce上に構築した基幹システムに業務や情報を一元化したほか、顧客が自社の荷物や運搬状況を追えるポータルサイトを作るなど、業務の重複、縦割りを減らしました。その結果、営業活動に時間を振り向けられるようになったそうです。情報の一元化によるデータの可視化で、物流で生じる二酸化炭素の排出量を顧客に提供する新たなサービスも検討されているそうです。

DXで求められるスキルと思考胆力

ー 「バンソウDX」を通じ、顧客のニーズのコンテクスト(背景・文脈)まで理解する思考が問われるようになりました。顧客が想定していなかった事象を組み合わせる力、具現化させる技術力も求められている、と佐々木CEOは話します。

佐々木:
Fabeeeでは、新卒数年のコンサルタントやエンジニアも、顧客企業の幹部と対話し場に臨み、課題解決とDX支援に直にじかに関わります。普通の企業なら、なかなか実現しないような成長のチャンスになっています。

ただ、顧客と同じようなことを考えているのなら、指示に対し忠実でいるだけなら、僕らがやっている「DX支援」なんて、名ばかりなものになってしまう。

佐々木:
その企業の文脈や背景(コンテキスト)を深く理解するために対話を続けること。当事者ですら気づいていない課題や変革のヒントを見つけ出せること。納得いくものを提案し、さらにそれを形に落とし込むこと。時には、異なる領域のものとかけ合わせる「掛け算」もできること。 

こうしたことができるようになるには、どんな状況でも思考をあきらめない「思考胆力」が必要、とバンソウDXのメンバーは言っています。解決を求め右往左往する前に、「なぜその障壁があるのか」「なぜこの方向へ進む必要があるのか」と顧客や同僚に躊躇なく問える姿勢とも言えます。

エンジニアであれば、生成AIなどの技術が普及するにつれ、ゼロからフルスクラッチで作るというプロセス自体、どんどん減っていくだろうと考えています。むしろ生成AIをうまく使って、発想豊かな開発ができるかどうかが、次のキャリアだと思っています。

例えば、日本酒の酒蔵で「新しいビジネスを作りたい」と相談されたらどうします? 日本酒の製造の仕方を聞いたところで、それまでの枠から飛び出せません。仕組みはいったん置いておき、むしろひとっ飛びに「日本酒をワインとして販売してみませんか」と提案して、実現のアプローチを模索する。少なくとも「これ、こうした方がいいんじゃないですか?」と提案してほしい。

たとえ技術力がそれほど高くなくても、そんなアプローチができる人と、一緒に働きたいと思います。

「心拍数を1上げる」ミッションにたどり着くまで

ー 15年目を前にした2023年は、Fabeeeにとって経営の方向性を模索する、いわば「踊り場」の年でもありました。一時悶々としていた佐々木CEOは4月、親しい知人に相談しました。

佐々木:
2023年が明けたころから、経営の先行きに悩んでいました。売上は振るわず、創業以来続けてきた自社製品の開発もうち手がない。資金を調達するにも、IPOを見据えた配分を考えなければならない段階まできていました。

Fabeeeで僕が成し遂げたいことと、現実との乖離がさらに大きくなっている。こんな状態でいつか上場できたとしても、それが真にあるべき未来なのか。何のために会社をやっているのか、考えあぐねて親しい人に心の内を打ち明けました。

「人生で何をしたいの?」。そんな問いかけから始まって、彼と語り合いました。

いつか自社開発の製品を世に広めたい。創業当初からの夢(ウィル)でした。でも気持ちだけが先走り、方向性が散漫になって、結果的に社員を翻弄してしまったこともあった。今も自社開発にこだわっているのなら、「ウィル」に自分が縛られているのでは。そんなことに気づきました。

友人はこんな言葉で、僕が「ウィル」を手放す後押しをしてくれました。
「そのウィルから自由にならない限り、人生を本当に楽しむなんてのは難しいんじゃないかな。僕がリングにタオルを投げますよ」

ー  退くことで新たな方向へ。5月にはブランドの刷新へと動き出します。佐々木CEOは「ワクワク」という言葉を出発点に、メンバーとさらに言葉を探していきました。

佐々木:
「創業者としてFabeeeで何を実現したいのか」。リブランディングの際、そんな問いを投げかけられました。借り物でない自分の言葉を探っていったら「ワクワク」という言葉が一番しっくり来たんです。幹部からは最初、「意味がわからない」「まったく共感できない」なんて言われて不評でしたが(笑)。

でも、「ワクワク」はあちこちで生まれています。「これ、いい!」とユーザーがワクワクするアプリや、ディズニーランドに入った時のワクワクもそう。僕たちがやるべきは、そういう「ワクワク」を世に出し続けていくことなんじゃないか、と。

そう説明するうち、幹部の1人が「ワクワク」の絶妙な言い換えーー「心拍数を1上げる」という言葉を思いついてくれました。
ミッションの言語化は、メンバーの共通の目標と覚悟が固まっていったプロセスだったと思います。これからはこの言葉が、皆がFabeeeに集まる「この指止まれ」の目印になっていくのだろうと思っています。

代表取締役CEO 佐々木淳
大学卒業後、不動産デベロッパーにてコンサルティングセールスや大手人材企業のコンサルタントとして実績を上げた後、2010年、20代で株式会社フォトメを創業。2019年にFabeee株式会社に社名変更。現在はDX支援「バンソウDX」を主軸にした事業をいくつも展開。

★撮影場所:SPACES新宿





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