『源氏物語』の「女楽」の光景を手に。華やかに宴を彩る女君たちの「装束イメージきんちゃくポーチ」
女三宮、紫の上、明石の上、明石の女御。それぞれの女君にまつわるエピソードから作り上げたオリジナルの有職文様風デザインが、かすかに垣間見える……。主人公・光源氏の絶頂期に開かれた演奏会・女楽のシーンで、彼女たちが身にまとった美しい装束に思いをはせて生まれた、彩り華やかなきんちゃくポーチをご紹介します。
みなさま、こんにちは! 歴史と読書が好きな、フェリシモ「ミュージアム部」プランナーのささのはです。
みなさまに質問です! 平安時代における超有名な文学作品と言われたら、何を思い浮かべますか?
おそらく、清少納言の『枕草子』と並び、紫式部の『源氏物語』を挙げる方も多いのではないでしょうか?
『源氏物語』とは平安時代中期に成立した、世紀のプレイボーイ・光源氏を主人公に据えた長編小説です。彼と様々な女性たちとの間に生まれた恋心、そして政界でも活躍するなど大成功を収めた光源氏の華々しい姿に、当時『源氏物語』を手に取ることができた上流階級の人々は、老若男女問わず熱中しました。
魅力的な場面が数多くある名作の中でも『源氏物語 第三十五帖・若菜下』には、彼の栄光の絶頂期に開かれた華やかな演奏会・女楽の様子が描かれていまして……。
~源氏物語『若菜下』・女楽のあらすじ~
咲き誇る梅の花に、春も近づく頃。色鮮やかな装束を身にまとった女君たちが奏でる美しい調べに、誇らしげに彼女たちを称える光源氏。
光源氏と彼を軸に集まった女性たちが築き上げた、華やかな女楽の光景を、何か形にできたら……。
そんな想いから生まれたのが、女楽にて女君たちが身にまとったうつくしい装束に思いをはせて生まれた、彩り華やかなきんちゃくポーチです。
それぞれの女君たちのエピソードから作り上げた、オリジナルの有職文様風デザインが、彼女たちが秘めた思いのごとく、シースルー生地からかすかに垣間見えるのをお楽しみください。
早速ですが、きんちゃくのデザインを詳しくご紹介します。
〈女三宮〉
女楽では琴の琴を奏でた、光源氏の正妻(死別した葵の上に次ぐふたり目)・女三宮。彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、『若菜下』にある「桜の細長に御髪は左右よりこぼれかかりて、柳の糸のさましたり」とあるように、白に赤色がにじんだ桜の花をイメージした色合いで全体をまとめました。
きんちゃくポーチを結ぶリボンの色は、源氏によって女君たちが花にたとえるシーンより着想し選びました!
女三宮は「二月の中の十日ばかりの青柳の、わづかにしたりはじめたらむここちして」とのことなので、柳の葉を彷彿とさせるような、やわらかい薄緑色のリボンに。
有職文様風デザイン
~宝相華に猫~
きんちゃくの袋部分は、当時の装束に使われた非常に薄い絹に着想を得て、シースルー生地を重ねてみました。
生地の下に垣間見える有職文様風デザインは、女三宮に一方的な思いを寄せる柏木と出会うきっかけにもなってしまった、女三宮が飼っていた「猫」と、柏木や源氏との関係、そして柏木との間に生まれた子供に対する源氏の振る舞いに思い悩み、最後は出家したことから、仏教にゆかり深い唐草文様「宝相華」に仕上げています。
まだ若く可愛らしい女三宮の出家を残念に感じる光源氏と、尼となった彼女が交わした歌、
から着想を得て、ふたりの交わらない来世を思い、蓮の花を思わせる宝相華の花びらを散らせるデザインにまとめています。
〈紫の上〉
女楽では和琴を奏でた、光源氏の最愛の女性・紫の上。彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、作中に綴られた「葡萄染にやあらむ、色濃き小袿、薄蘇芳の細長に、」から着想を得て、紫の上にぴったりの濃く贅沢な紫色をメインにした色味にまとめました。
紫の上のきんちゃくを結ぶリボンは、桜色。「花といはば桜にたとへても、なほものよりすぐれたるけはひことにものしたまふ」と、光源氏は彼女を、桜に勝るほど美しい姿であると称えました。
有職文様風デザイン
~七宝に樺桜と露~
出家を望んでいたことから仏教にゆかり深い「七宝」文様をベースに、作中で紫の上を例える表現として使われた「樺桜の花」を組み合わせました。
また、最期の時を悟った紫の上と、そんな彼女と光源氏が交わした
の歌から着想を得た「露」イメージのデザインも取り入れています。
〈明石の上〉
女楽では琵琶を奏でた、光源氏が流れ着いた土地で恋をした女性・明石の上(作中では明石の御方)。
彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、作中の「柳の織物の細長、萌黄にやあらむ、小袿着て、羅の裳のはかなげなる引きかけて」より着想を得て、風にそよぐ涼やかな柳の葉の色のような色合いにまとめました。
彼女は「五月待つ花橘、花も実も具しておし折れるかをりおぼゆ」とあるように、花と実を一緒に摘んだ香り高い花橘に見立てられました。今回は、橘の真っ白な花をイメージしたリボンに。
有職文様風デザイン
~青海波に松~
実の娘・明石の女御の幸せを願う母親としての姿から、未来永劫続く幸せと平和な暮らしへの願いが込められた吉祥文様「青海波」をベースに。そして教養はあったものの、身分があまり高くない出自であることを常に意識していた彼女の姿から、出身地である明石の浜辺にあったと伝わる「松」を組み合わせたデザインにしました。
その他にも明石の上は、明石の女御との別れの際に、彼女を「松」にたとえた
の歌も詠んでおり、明石の上にとって松は、何かと縁がある植物であります。
〈明石の女御〉
女楽では筝の琴を奏でた明石の女御。
彼女の装束をイメージしたきんちゃくポーチは、作中に「紅梅の御衣に、御髪のかかりはらはらときよらにて、火影の御姿、世になくうつくしげなるに、」とあるように、赤い梅の花をイメージした色合いで全体をまとめました。
「よく咲きこぼれたる藤の花の、夏にかかりて、かたはらに並ぶ花なき朝ぼらけ」とあるように、源氏は自らの娘である明石の女御を、初夏の夜明けに咲く藤の花のようだと例えました。明け方の柔らかい光を受ける藤の花を想像し、柔らかい藤色のリボンを採用しています。
有職文様風デザイン
~波立涌に樺桜~
天皇の妻である中宮となり次期天皇を生んだ背景から、特に高貴な文様である「立涌」をベースに、生みの親・明石の上のデザインから「波模様」を、育ての親・紫の上のデザインからは「樺桜の花」をそれぞれ組み合わせました。
生みの親である明石の上のことはもちろんですが、明石の女御は育ての親である紫の上を本当に大事に思っていました。
第四十帖・御法では、早く帰ってくるよう促す御所からの催促を振り切って二条院に滞在し、病床の紫の上を見舞って手を握り、そのまま彼女を看取りました。
きんちゃくの絞り口は、それぞれが着用していた装束をイメージした4色を配しました。まるで女君たちが身にまとう装束の袖口のように雅です。
底には約7cmのまちがついているので、物を入れたら自立!見た目も麗しく、使い勝手も抜群です。
コスメの持ち運びなどにぴったりの収納力で、雅に日々をサポートします!
大成功を収めた女楽。
しかし、実はその晩、源氏最愛の女性・紫の上が病に倒れてしまうのです。
病身の紫の上が二条院に移されて楽器もしまい込まれた六条院は、あの宴が嘘だったかのように、まるで火が消えたようになってしまい、彼の光につつまれた人生もが、少しずつ陰りを帯び始めます。
「沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理をあらわす」というように、永遠の幸せというものは物語の上にもないのかもしれません……。
かつて栄華をきわめた貴公子と、彼を取りまく女性たちに思いをはせつつ、物語の片鱗を日常生活でお楽しみいただけたら幸いです。
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