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UIデザインと神経美学

はじめに

今回の記事は美と脳科学、そしてユーザーインターフェイスを結び付けようと試みた記事です。

神経美学とは

神経美学とは、美的経験(ヒトの主観)を神経学(脳科学)によって測ることを試みる学問領域です。

私は当初勘違いしていたのですが、この学問の問いは『美しい物事は何か』ではなく『美しいという経験は何か』というものです。絵画を見たとき、音楽を聴いたとき、新しいOSからAppleの思想を感じたとき、私たちが感じる「あの感覚・経験」を解き明かそうと試みているものです。

そして研究の結果、内側眼窩前頭皮質が美的経験の共通部位ということがわかっているそうです。脳の活動を計測しつつ、美しいという感覚・経験が生じたタイミングと照らし合わせることで内側眼窩前頭皮質という部位が美的経験の発生タイミングに共通して活動することがわかっています。

また、内側眼窩前頭皮質の働きを抑える背外側前頭前皮質という部位も存在しています。エキスパート脳とも言える部位で、注意の向きやすい外敵刺激を受けたときにグッと堪えて全体像や細部に意識を向ける働きをします。これによって、例えばデザイナーが過去のデザイナーによるアウトプットを分析して学ぶ、というようなことが可能になっていると考えられます。

(神経美学は「美しい」を切り口とした脳科学なので、このほかにもたくさん内容があります。)

ちなみに、私がこの学問に触れたきっかけはデザインにおける様々な定説「円・丸は柔らかく矩形は硬い」「青色は消極的で赤色は積極的」や、ユーザーインターフェイスにおける「セマンティックカラー」などの原理を説明できないことに納得できないところからでした。

UIデザインでの活用

それではUIデザイナーとして活用できることはあるのでしょうか。
(「UIデザイン」というか「デジタルプロダクトのデザイン」でしょうか。)

まずUIデザイナーの業務としては、ざっくり『画面設計』『ワイヤーフレーム作成』やそこから最終リリースへ向けて『表層的なデザインを仕上げる作業』『意思決定者への説明』などがあるかと思います。これらの業務のなかでできることを考えてみました。

まず、デザイナーの向かう相手は『ユーザー』と『意思決定者』の2者がいます。この2者へのコミュニケーションの結果として、先述の内側眼窩前頭皮質の活性化背外側前頭前皮質の非活性化を目指すことがわかりやすい目標だと思います。(実際に数値化して測ることはほぼ不可能ですが)

内側眼窩前頭皮質の活性化をする方法のひとつとして、文脈効果を使う方法があります。文脈効果とは、周囲の情報・状況によって対象の認識・評価が変わることがあるという現象です。
例えば『意思決定者への説明』をするときに、専門的な知識・用語を織り交ぜたり、実績を明示するなどです。
『ユーザー』に向けた活用方法としては、『プロモーションやアプリのオンボーディング時に、評価のある人物や専門性を感じる人物を見せる』などが考えられます。某メンタリスト監修のマッチングアプリは文脈効果の活用が顕著ではないでしょうか。

背外側前頭前皮質の非活性化をする方法としては、クリエイティブなことを楽しむという方法があります。
創造性を測ろうと試みたある実験では、ジャズピアニストの脳を測ったところ即興演奏中では背外側前頭前皮質が非活性化するという結果が出ました。人の感情や創造性は単純ではないものの創造性と背外側前頭前皮質には関係がありそうです。

上記の実験結果をもとに考えてみると、例えば『意思決定者への説明』の直前に深く思考する必要のない創造的な議論やワークを共にする。そうすると提案が受け入れやすい状況になるかもしれません。
(ちなみに共に議論する・ワークするといった行動のあとは、ミラーニューロンの働きで内側眼窩前頭皮質の働きが活性化しやすくなることが期待できます。)

まとめ

最後まで読んでいただきありがとうございます。今回は美と脳科学そしてユーザーインターフェイスを結び付けようと試みた記事ですがいかがでしたでしょうか?

最後に、コメントやスキをいただけると大変喜びますのでぜひぜひ。それでは次の記事でお会いしましょう

ありがとうございました!


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