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「銀行とデザイン」から考えるインハウスデザイナー戦略

こんにちは。
建築写真や都市写真を撮っております、
フォトグラファーのゴトウ リョウスケです。

今回は、先日大学を卒業し、いよいよ社会人になるこのタイミングで気になる書籍を本屋さんで見つけたので、まとめてみたいと思います。

それが三井住友銀行でインハウスデザイナーとして活躍するお三方の共著「銀行とデザイン」です。三井住友銀行に"インハウスデザイナー"として入社してから、デザインを企業文化に浸透させるまでの様々なお仕事の数々がまとめられていたので自分なりに咀嚼してみたいと思います。

そのため今回は、書籍の紹介というよりは、自分のためのまとめであり、自分なりの意見が強めに出ています。あくまでも個人の考えということを最初に記しておきます。

デジタル社会

まずはじめに"デザインシフト"や"デザインの可能性"、"デザイン経営"といったものを考えるまでに、なぜそれらが必要なのかを振り返り、出発点としたい。

それは紛れもなく"デジタル社会"だ。生活やビジネスのありとあらゆるものがデジタル世界で機能、完結し利便性が向上しているこの時代。
もはや我々のように若い世代は、それが当たり前過ぎて「便利になった」とも思っていない領域も数多くあるほどにまで浸透している。

そんな人々には、例えば"家から近いか"、"長年使っていて安心か"、"担当の人にお世話になっているか"などは商品やサービスが選ばれる理由にはなりえず、"便利か"、"直感的にわかるか"、"使っていてお洒落か"みたいな要素が強まっていっている気がする。
そしてBtoCの領域では浸透しつつあるこの風潮も、BtoBの領域では遅れている気がする。

戦うためのツール

そんな"デジタル社会"で戦うための一つのツールとしてUI/UXデザインを始めとする「デザイン」が登場する。

デザインによって見た目を整えて興味を引きつける。
デザインによって情報を整理して直感的に理解してもらう。
デザインによって幅広い人に受け入れてもらう。
デザインによって問題を解決する。

デザインは見た目を整えるだけにとどまらず、情報を整理して可視化することによって、理解者を増やすことに繋げたり、問題解決の鍵として機能することがある。

それが「デジタル社会」、そしてそれに伴う変化の激しい時代だからこそ求められるデザインの力であり、デザイナーならではの視点から成る価値でもあると思う。

内製化

デザインの力を必要とする背景とその価値を理解したところで、ここからはどのようにデザイナーが巨大組織に浸透していくかを考えたい。

多くの場合、旧来の事業会社がデザイナーを取り入れる場合、外注という形で組織外の人に仕事を委託する形がよく取られると思う。それもプロジェクトごとに都度都度の形で。

この形態を否定するわけではないが、これはあくまでもデザインの一面しか恩恵を受けられないように感じる。"デザインで見た目を整えて興味を引きつける"という一面だ。でもデザインには情報を整理して理解者を増やしたり、問題を解決するというもっと大きな力がある。
そしてそれを本気でやってのけたいなら外注ではなく内製化が必至だと思う。内側にデザインを理解できる人を置く。それも意思決定者に近い位置に。

得体のしれない存在

インハウスデザイナーは多くの場合、既存の社員から「得体のしれない存在」だと思われる。デザイナーがプロジェクトのどの場面で必要になるのかがわからず、何を相談して良いかもわからない。

そこで大切なのは、インハウスデザイナーはただのデザイン係ではないという考え方。インハウスデザイナーには情報の整理や発信、理解者の拡大、問題の解決といった大きな使命がある。
ビジネス視点以外の視点からプロジェクトを支える大きな力になり得るし、インハウスデザイナーはその役割をしっかりと果たす必要があるように思う。

通訳者はいるか

インハウスデザイナーの役割の浸透にいたって重要な鍵を握るのが「通訳者」の存在だ。デザイナーと企画の担当者では見ている視点や使う言葉、価値観が違うのが当たり前で、どちらも間違っていることはない。

そのギャップを上手く噛み合わせるための「通訳者」、MT車で言うところの「クラッチ」のような役割を持った人が大切だ。
(個人的にはここのポジションを取りに行きたい。)
上手くギャップをすり合わせられる人が近くにいるとインハウスデザイナーは本領を発揮しやすいし、きちんと組織内にその意義が伝播していく。

浸透プロセス

インハウスデザイナーの浸透プロセスとしては4つの段階に分けられる。

Phase1.信用の積み上げ
まずはできることをコツコツとやって信頼を積み上げていく。
そのなかで自分の役割を発信し認知してもらう。

Phase2.介在価値の発揮
インハウスデザイナーとしての仕事を果たし一つの新たな成果を確立する。
社内での認知を高めたり、社外への発信に繋がる。

Phase3.標準化
組織内に横串を指して、デザインに関わる意識や規格を統一する。
会社の体外的なブランディングにも繋がる。

Phase4.仕組み化、組織化
持続可能性を高めるために仕組みや組織を作る。脱属人化。
より良いアウトプットを継続して生み出す。

プレゼンスを高めるために

インハウスデザイナーが会社内でのプレゼンスを高めるためのアクションとして「ビフォーアフターの可視化」と「過程の共有」が大切だと思う。
(てかこれはインハウスデザイナーに関わらず普通に大切だと思う。)

ビフォーアフターの可視化

自分が関わったことで何がどう変わったかがパッと見てわかるものがあると誰の目から見ても評価しやすい。
図やグラフ、数値、画像、言葉など必要に応じて使い分けるられると良い。

過程の共有

成果物の共有だけでなく、意外と大切なのが過程の共有だ。
プロジェクトの過程での努力やアイデア、葛藤をうるさくない程度に発信しておく。いわゆる「種まき」。
この種がいつか芽吹くかもしれないし、発信した過程が一つのノウハウとして誰かの参考になるかもしれない。

あとがき

実は今回紹介した書籍を書いているインハウスデザイナーの方々はSMBC DESIGNとしてnoteでも情報発信をされていてかなり有名なので、ご存じの方も多いかもしれません。

フォトグラファーをしながらデザインもやってきた自分としては、就職先でもクリエイティブ周りで自分なりのポジショニングを取っていきたいと思っているので、老舗大手企業にデザイン文化を浸透させたお三方はある意味ロールモデルでもあります。

4月からいよいよ社会人です。
フォトグラファーとして駆け抜けてきて、個展までやり遂げたここ最近はありがたいことに「就職しちゃうのもったいないよ」とおっしゃって頂く機会も増えましたが、僕の本領発揮はまだまだこれからです。
もっと大きな野望があるので。
長い長い腕試し、スタートです。

ゴトウ リョウスケ | GOTO Ryosuke
2000年、神奈川県生まれ。
大学在学中にフリーランスのフォトグラファーとして活動を始め、建築を中心に大都市を舞台にした写真を撮影。
2023年3月には、建築物の幾何学的な模様に注目した個展「#キカガクケンチク展」を吉祥寺で開催。
その他デザイナーやZINEクリエイターとしても活動中。
2023年4月〜大手ゼネコンに就職。
Instagram:https://www.instagram.com/ezlo_00

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