24 この世界の秩序

ある日、俺は学校の図書館にいた。この世界で人間がどうやって子供を作るのか調べに来た。

図書館か…中学のときまでは授業でしか使ったことなかったな。知りたいことなんか無かったし。

にしても、人間の生殖に関する本を手に取るの気が引けるな。読んでるとこ見られたら恥ずかしい。棚の間でこっそり立ち読みするか。席まで持っていけない。

「人間及び多くの哺乳類は体内で繁殖します。男性の性交渉はペニスと肛門を用いて行われます。
挿入側は被挿入側の肛門にペニスを挿入し、内部で射精します。そのとき被挿入側は大腸にある小子宮への道が開いており、精子がそこに流れます。」

「そして被挿入側の精子が体内で精巣から小子宮に送り込まれ挿入側の精子と混ざると細胞分裂します。このとき混ざった精子同士で更に混ざることを繰り返しやがて1つだけ残ります。約20週で出産となります。」

「女性の場合は性器同士を重ね合わせて生理中である一方がもう一方の体内に卵子を入れます。卵子が子宮に達するともう一方の卵子も排出され、結合すると着床します。約40週で出産となります。」

そして他のページも読んでみると、どうやら男からは男しか生まれず、女からは女しか生まれないみたいだ。わざわざ触れられてもなかったから、当たり前の話なんだろう。

また大昔、オスの特徴を持って繁殖する個体とメスの特徴を持って繁殖する個体が生まれ、そのまま2種類存在するままでそれぞれが同様に進化して現在に至ったようだ。

だから生物によっては一方の性だけが絶滅した種もいるし、種によってはその後新たな性が生み出されたものもいる、というようなことが書かれてあった。

それにしても衝撃だった。は?肛門に突っ込むの?汚くね?男に子宮出来たの?俺にもあるの?

…それをしないと子供が出来ないのかよ。ん、これどっちがどっちやるかはどうやって決まるんだ?
…ああ、好みとか適正とかお互いの状況見て自由に選べるのか。

でも、俺はどっちも出来ない。そもそも男となんてやりたくない。無理だ。ましてや結婚して何年も一緒に子育てなんか、男と出来るはずがない。

異性同士では無理なのか?まあ書かれてないから無理なんだろう。元の世界でも同性同士なんか存在すらしてない感じだったもんな。言うまでもないんだろう。

…そうか。そうかぁ…。
俺は子供を作ることは出来ないんだ。まだそんなに子供とか意識したことなかったけど、漠然と大人になったら結婚して子供を作るもんだと思ってた。

でも、今の時点から選択肢が絶たれている。自分で選んで作らないならいいけど、そもそも選択肢がないんだ。そういうことだ。

将来のことを意識させられて、また不安になった。そうか、大人になると結婚とか子供とかの話出てくるよな。周りから言われたらどうすればいい。いつまでも隠したまま独身を貫くのか。

そんな新しい悩みを抱えたまま図書館を出て下校した。家に着くと、家の前に誰かが立ってる。よく見ると、少し久しぶりな顔だった。

一輝「あれ、健太郎じゃんか!」
健太郎「か、一輝…!」
一輝「よう、どうした。2ヶ月ぶりだな!」

健太郎は中学のとき同じグループだったやつだ。健太郎を始めとして俺と同じグループだったやつはみんな別の同じ高校に行った。俺だけ割と勉強が出来たからちょっとレベルが上のとこに行ったんだ。

一輝「高校、どうだ?」
健太郎「ああ、まあ…。」
一輝「てか、俺に用事あったんじゃねえの?」
健太郎「ああ、え〜と実はさ…。」

なんかぎこちない。2ヶ月会わなかっただけでこんなよそよそしくなるか?

すると、健太郎の口から出たのは予想外の言葉だった。

健太郎「お前さ、世界変わったなって感じてねえ…?」

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