23 家族だからこそ

いつか来るとは分かっていたけど、このタイミングか。意外と早いな。

一輝「あ、そうなんだ。いいじゃん。おめでとう。」
一輝の父「それでな、その前に一輝に聞いときたいことがあるんだ。」
一輝「…なに。」

いつになく神妙な顔してるな。まあ、聞くことは大体分かるけど。

一輝の父「一輝…俺が再婚すること、良く思ってなかったりするか?」
一輝「なんで?全然そんなことないよ。」
一輝の父「本当か?」

父さんは俺が座ってる椅子の正面に座り、話を続けた。

一輝の父「結婚を意識していろいろじっくり考えるようになったんだ。そしたら、大輔との関係を築くのを意識しすぎてて、あんまり一輝の気持ちを考えられてなかったんじゃないかって思って。」

一輝の父「2ヶ月ぐらい前 大輔と初めてあったとき、ちょっと驚いてたよな。でも段々と普通に話すようになってて安心してたんだ。打ち解けてきてくれてるって。」

一輝の父「でも一輝は優しい子だから、俺に気を遣ってくれてるんじゃないかと思って。なんというか、年頃だってことを差し引いても前より距離を感じる気がしてな。」

…なんか、意外とちゃんと俺のこと見てくれてるんだな。

でもそれはまた違う理由なんだ。同性愛の世界に変わったからなんだ。だから心配しないでくれ。結婚はホントにしてほしいと思ってる。

一輝の父「今更にはなるけど、一輝が一番大事だからな?もし思うことがあったら正直に言ってほしい。」

正直に、か…。言いたいけど言えないんだよな。前にテレビでノンケが出て来たときにあんなこと言ってるの聞いちゃったらな…。

怒ってるわけじゃないけど、今のセリフを聞くと、本当に正直に言っていいの?受け入れる覚悟ある?って思ってしまう。まあそこまで考えられるはずがないのも分かってるけど。

…一番身近で一番信頼できる存在のはずの家族にも言えないことなんだよな。いや、むしろ家族だからこそか?なんか、俊の方がもうちょっと言いやすい気がする。

今の俺は父さん無しでは生きていけない。家族の関係はずっと続いて卒業みたいな終わりもない。関係が悪くなる可能性を考えると、やっぱり家族だからこそ言えないな…。

一輝「ホントに大丈夫だから。俺も大輔さん好きだよ。」
一輝の父「…そうか、分かった。ありがとな。」

聞くところによると結婚はすぐではなく、ちょっとずつ準備を進めて夏頃にする予定だそうだ。

一輝の父「これからは、まあ俺と2人だけのときはいいけど3人でいるときは俺のことは竜一父さんって呼んでくれな。大輔にも大輔父さんって呼んでやってくれ。きっと喜ぶと思うから。」

そうか、2人とも父さんだからそういう言い方になるのか。

…竜一父さんか…。

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