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10 目の当たりにして

ある日、また大輔さんが家にやってきた。

大輔「こんばんは、一輝くん。今日はお家に泊まらせてもらうけど、よろしくね。」
一輝「あ、はい、こんばんは。」

俺ももう慣れてきた。大輔さん自体はいい人だから、同性愛の世の中に慣れれば大輔さんにも慣れるのは当然だ。
だから父さんも前ほど大輔さんのことで俺を心配する様子はなくなった。

3人で夕食を食べながら俺はいくつか質問をした。

一輝「父さんと大輔さん、どこで出会ったんだっけ?」

一輝の父「俺がよく行くバーで知り合ったんだ。」
大輔「お互いそのバーで知り合った共通の飲み友達の女の人がいてね。たまたま3人とも居合わせる日が何度かあって、それでその女の人を介して話すようになって。」

飲み友達は男の人だって聞いてたから、そこだけ違うな。

一輝「…へえ、お互いどういうところが良かったの?」
一輝の父「お、恥ずかしいこと聞くなぁ。」

そう言いつつ、父さんは当時の話を始めた。

一輝の父「えーと俺は、バーでマスターといろいろな、相談話とかしてたんだよ。そしたら大輔も悩んでることがあって。それですごい優しくてな。俺の気持ち分かってくれるし、支えになってたな。」

…そこは同じだ。性別以外はあんま元の世界と変わらないようになってんのか。

大輔「僕は結婚目前までいった人と別れたことがあって、それをずっと引きずっててね。死別と一緒には出来ないけど、竜一くんとはお互い大事な人を失った悩みで分かり合えて。僕も竜一くんが心の拠り所になってたな。」

一輝「そうなんだ…。その、見た目とかは、どう…?」

大輔「僕は最初話したときからカッコいいなと思ってたよ。」
一輝の父「まあ、俺だってイケメンじゃなきゃここまで気ィ許してねえよ。髭とか胸筋とか、大輔は男らしい見た目だしな。」

髭、胸筋、男らしい…。やっぱ性別に関わるとこだけ変わってるんだな。

父さんも大輔さんも、話し終わった後、ちょっと照れ臭そうにしていた。本当に好きなんだな。母さんが生きていた頃も、父さんは母さんに対してこんな表情するときあったんだろうな。

でも、相手の性別が変わっただけなのに、その照れ臭そうな表情を見るのが辛い。多分大輔さんに当たる人が女性のままだったら普通に、父さん嬉しそうで良かったって思ってたんだろうな…。

食後、父さんがお風呂に入ったタイミングで大輔さんから話しかけられた。

大輔「竜一くんは前の旦那さんを亡くしてからずっと一人で一輝くんを育てていて、寂しい思いをさせてるとか、申し訳ないみたいな思いがずっとあったみたいなんだ。」

一輝「あ…そうなんですか…。」

大輔「うん。一緒にいれる時間も少なかったし、もしそれで非行に走ったりしたらどうしようとかって。真っ当な人間に育てたいって言ってた。」

真っ当…。

大輔「前のお父さんの代わりが務まるように頑張るから。これからもよろしくね。」

真っ当な人間か…。ノンケを嫌いな父さんが、俺がノンケだって知ったらどう思うんだろ。真っ当じゃないって思うのかな。男を好きになった方が父さんのためなのかもしれない…。けど…。

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