3 異変の正体
一輝「…は?男同士で結婚?どうなってんの?」
意味が分からなかった。でも、ニュースは当たり前のように話を続ける。
キャスター「かねてから交際の噂はありましたが、この度めでたく…。」
他のチャンネルに変えてもニュースは同じだった。どこもこの男性俳優同士の結婚を当然のように祝福していた。
一輝「なんだこれ…ドッキリか?」
目の前の状況に戸惑いながら、ふと家の端っこに積まれたチラシに目がいった。
何か情報を得ようと思ってチラシを漁った。すると新築のマンションのチラシが目に入った。上側に大きく「あなたの街 あなたの家族 その全てを好きになる」という謳い文句が書かれてあった。
そしてその下に載っていたのは、男同士、女同士のカップルの写真だった。それぞれ、子供を間に挟んで手を繋いでいる。
そんなわけないだろ。そう思って他のチラシも探したが、結婚式場のチラシも、保険のチラシも、どれも同じだった。男女のカップルなどひとつも載っていなかった。
いや…は?んなわけないだろ。は?俺がおかしいの?
嫌だ、そんなわけない。そう思いながら、俺は頭に浮かんだ一つの結論を認めるしかなかった。
同性愛が普通な世界になっている
朝起きたときに感じた違和感はこれだったんだ。世界が変わってる。俺だけがそのことに気付いてる。
昨日まで普通だったのになんで。マジで意味が分からない。しかも多分俺以外みんな同性愛者になったんだ。そして、俺だけが異性愛者。
あ、そうか、だから誠慈はあんな反応をしたのか。俺が彼女がほしいとか言ったから…。
バレたらダメなんだ。バレたら今日の誠慈みたいな対応をされる。あっ、もしクラスの奴らにバラされたら…。いや、まだ入学初日だし友達でもないやつにいきなり言わねーよな?大丈夫だよな…?
一気に不安が押し寄せてきた。普通なのは同性愛。俺は異常な異性愛。バレたら差別され、いじめられる。そういうことなんだ。中学で俺がそうしていたように。
そのとき、玄関のドアが開く音がした。
一輝の父「おっ、一輝、もう帰ってたのか。」
父さん!そうだ、父さんなら大丈夫じゃないか?
急いで玄関に向かった。父さんの姿が目に入った。そしてその後ろにもう一人、男の人が、いた。
一輝の父「実はな、そろそろお前に会いたいって言うから急遽連れてきたんだ。」
…いや、待ってくれ。じゃあその人は…。
一輝の父「ああ、紹介するよ。この人が…。」
父さんまで…そんな…。
一輝の父「俺の彼氏の、大輔だ。」
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