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【映画】JUNK HEAD【感想】

※この記事はネタバレを含みます※


●あらすじ


人体を無機物に転化する技術により、人類は生殖機能を代償に不老不死を手に入れた。しかし、新種ウイルスの発生によって人類は存続の危機に陥ってしまう。
そんな中、遥か昔に創造した人工生命体「マリガン」に生殖能力の可能性を見出し、調査を開始する。
主人公パートンは地下調査員に応募し、マリガンと協力して地下の探索を始める。


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●『 JUNK HEAD 』の感想(※ネタバレ注意)


結論から言うと、めちゃくちゃ面白かった。

ここ最近で見た映画の中で、No.1に輝くほどのポテンシャルを秘めていた。

ここからは、本作の魅力について一つづつ述べていく。


【 魅力① 主人公パートンのポジション変化が多様的 】

1時間40分ほどの映画の中で、主人公の立場が色々変化する。

しかも、立場だけではなく、環境や主人公の状態までもが次々に変化していくので、見ていて本当に飽きることがない。

人間のころの、人間らしいパートン。

地下への降下任務が失敗して、記憶喪失のロボットとして働くパートン。

村のエンジニアに改造され、会話不能なポンコツロボットとなるパートン。

主人公の見た目や性能が2転3転するので、一人の主人公であるのにも関わらず、複数の主人公の目線から物語を味わっているような印象を受ける。

また、最終的に全ての立場の記憶を取り戻す展開は、王道ではあるものの、今までの主人公の紆余曲折を見てきた視聴者にとっては、主人公の記憶が戻ったことに安堵し、これからの主人公を応援したくなるような構成になっており、非常に熱い展開となっている。


【 魅力② 個性的なキャラクターとマリガンたち】

今作、登場人物はそれほど多くなく、特定のキャラがひたすら出ずっぱりということもない。

にも関わらず、登場してきたキャラクター一人一人がとても個性的で、印象に残る存在となっている。

特に魅力的だったのが、『3バカ兄弟』だ。

序盤は、記憶喪失の主人公に振り回されながらも、地下での作法を伝授したり、心配してくれたりする。太っちょで、ちょっとおバカだが、非常に良い奴といった印象を抱く。

しかし、終盤になると、3バカ兄弟の印象はガラリと変わる。

彼らは『地獄の三鬼神』と言われる凄腕のハンターで、本気を出すと、筋骨隆々な強い奴らへと変貌する。

序盤のほのぼのした三人の掛け合いや行動があったからこそ、この終盤でのギャップに度肝を抜かれたし、普段のほほんとしている奴が実は強いという、これもまた王道でありながら、視聴者のテンションが上がる要素をキャラクターに付与しているのが、とてもよかった。

本作を見た人で、3バカ兄弟を嫌いになる人はいないだろう。見た人もれなく全員が好きになるキャラクターである。

また、食べ物を与えたのがきっかけで、主人公に懐くようになった、赤い頭巾を被った少女ニコちゃんが、健気でとても可愛らしかった。

主人公にかわいいと言われて顔が赤くなるシーンは、思わず悶絶した。

他にも、ニコちゃんと共に行動し、彼女を守る存在である『 ホクロ 』。主人公をロボットにして延命させた、親切な博士やエンジニア。嫌味だが憎めないバルブ村の職長とその下っ端。主人公を助け、主人公に助けられた技師のおじちゃん。バルブ村のお局的存在の筋肉質なオバチャン。お使い中の主人公を騙し、最後には因果応報で死んでしまうサギ師のおばちゃんなど、本当に個性豊かなキャラクターが多い。

そんな彼らと様々な立場と性能の主人公が絡み合うことで、関係性も変化していくので、物語が進むたびにキャラクターの印象が変化していくのが、見ていてとても楽しかった。

ただ、本作のキャラクターは軒並み特徴的な容姿をしている。

率直に言えば、ちょっとグロくてキモい。特に、主人公たちを襲う凶暴なマリガンはかなり気持ち悪い見た目をしている。しかし、ただ気持ち悪いというわけではなく、嫌悪感を抱きすぎないような良い塩梅のデザインがされており、その辺りの工夫がとても上手であると感じた。


【 魅力③ 提示する世界観の加減 】

本作の世界観は、作中ではそれほど多く語られることはない。

本作はストップモーション作品であり、そもそもキャラクターたちの台詞が多くないため、見ている側は、世界観を風景描写などで保管する必要がある。

しかしながら、本作は作中での世界観の表現が秀逸であり、見ていて理解が追い付かないということがない。独特な世界観をすんなり受け入れることができる。

そもそも、ストーリーが理解しやすい。世界はいまどういう状況なのか?主人公たちは何を達成したいのか?何をしに地下を訪れたのか?という理由や目的が確立しているという部分が、理解のしやすさに大きく貢献しているように思う。

また、作中で舞台背景をしっかり見せることで、地下の空間はどのようになっているのか?『 マリガン 』たちはどういった生活をしているのか?という、主な舞台の状況や環境に説得力が生まれる。これにより、物語に深く入り込むことができ、視聴者が世界観の概要を雰囲気として咀嚼することができる。

視覚情報だけでどのような世界かが伝わるのは、描写や舞台セットが細かく、それでいて監督自らの設定の重厚さがあってこそであると考える。素晴らしい。

キャラクターたちの言語が特定の言語ではないという点や、デフォルトで付いている字幕のフォントが状況によって変化する点も、世界観の確立を手助けする一因になっていると思う。

基本のことはストーリーを見ていればわかるが、深く言及されていない点や謎もあり、考察要素が少なからず存在する。視聴者の想像の余地が残されているのは、作品を楽しむ要素として良いポイントであるので、これもまた絶妙な塩梅で成り立っているなと思った。


【 まとめ 】

どちらかというと、本作はギャグ要素強めである。特に、下ネタが多い。

しかし、作中の所々でギャグ要素があるからこそ、凶暴なマリガンに追いかけられるシーンや戦闘シーンなどの魅力が増している。

物語が2転3転していくため飽きることがなく、最初から最後までずっと楽しめる映画となっている。

ただ、本作は3部作のうちの1作目らしく、最後は消化不良で終わってしまう。

1作目で残された謎や、まだ言及されていない部分などが残っているため、続編でその辺りを知ることができれば良いなと思う。

ストップモーションや、ちょいグロキモい見た目が苦手でなければ、是非見てほしい作品である。


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●今回レビューした映画の詳細


題名:JUNK HEAD

監督:堀貴秀

2021年公開


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