あれ?意外に美術好き?

日本は美術作家が活動を継続していくには不向きな環境、市場だとよく聞
確かにネットや本にも海外の活動を勧めるような文言が多い。ただどれも日本美術市場を紐解いて言及している記事はないように思った。
なので現在の美術市場を考察して、日本は本当に作家が活動を継続していくことが難しいのか考察してみた。


現在の日本美術市場

 2016年から文化庁主導のもと「日本のアート産業に関する市場調査」という調査レポートが作られているので、まずはそこから市場を見てみる。

・2016年以降2018年まで2400億円から少しずつ市場は拡大を続け、2019年には2500億円を迎えた。

2019年のコロナウイルスの流行により市場は縮小したが、日本美術市場は頭打ちを迎えているのかもしれない。
それでも2500億円規模であれば十分なようにも思う。
それでは別の産業と比較してみる。

アニメ産業との比較

日本を代表する娯楽文化といえばアニメ。ではアニメ産業を簡単に比較してみる。

・2020年のアニメ産業市場は2兆4261億円。
!!!!
さすがアニメ大国なだけある。
美術産業の約10倍。
フィギュアなどの商品や配信、音楽まで幅広く集計しているからしているから比較するのはナンセンスだがそれでも凄まじい差がある。

美術産業もこれくらいの規模になれば楽しいんだけどね。

では続いて海外との比較


日本美術市場と美術大国との比較

2020年の世界全体の美術品市場5兆2000億円

人口とあわせて市場規模を見てみる。

アメリカ:人口3億3100万人=美術品市場42%(2兆1800億円)
中華圏:人口10億9000万人=美術品市場20%(1兆400億円)
イギリス:人口6,708万人=美術品市場20%(1兆400億円)
日本:人口1億2000万人=美術品市場3.7%(1900億円)

す、すごい、圧倒的な差… これは引くレベルの圧倒的な差ではないか…
特にイギリス。人口に対して市場規模はんぱなくないですか。
これは日本社会で美術家が日の目を見れると言われることもうなずける…

うーん ここまで絶望しかないじゃないか笑

日本の社会動向はどうだろう。
これから美術市場が伸びる可能性について考えてみる!

民間 : アートマインド
最近「美術×ビジネス」、「美術×教育」のような書籍をよく見る。また、現代美術を主としたアートマインドに関する事業を大手広告代理店が展開したりとセミナーなどが活発に行われるようになっている。

社会情勢 : 室内装飾品需要
また、コロナウイルスによるテレワークを実施する企業が増えたことで、インテリアなどの室内装飾品に気をかける人が過去最大に増えていると帝国データバンクが調査結果を出している。

行政 : 政権が掲げる美術業界における課題
2021年5月に美術業界における課題を政府としても明確に掲げ、美術作家が継続して創作活動が取り組める社会の実現を目指している。
これまでも市場が活性化されるよう税制の見直しがされてきたが、今後も市場活性化に向けた動きが加速すると思われる。

以上のことから美術業界、特に現代美術は盛り上がりの兆しがみえる。
いい! すごくいい!! もしかすると日本美術市場も今後大きく拡大していくかも!!!

じゃあ次はどれくらい市場拡大が見込めるか。

市場拡大スケール

美術品購入のハードルが下がった際にどれだけの市場拡大が見込めるかを考えてみる。

日本のアート産業に関する市場調査によると
・美術品購入に関心のある人は17% 
 ⇒日本の総人口(1億2570万人)に換算すると約2136万人いると推計

あれれ?意外に美術品購入に関心がある人いるじゃん…
なんで市場がこんなに小さいんだ?
さらに深堀ってみる。

こんなデータがあった。

・関心がある人の内、購入している人は12%の256万人
 ⇒88%の1880万人が非購入

むむ、ほとんどの人が買っていないではないか!!!!!
でも逆に考えると関心がある方を購入に繋げればまだまだ市場の拡大はできる!!!!!
例えば非購入者(1880万人)の1%が5万円程度の作品を購入するだけでも94億円。5%が5万円購入するだけでも470億円!!
え、行ける気がしてくる。日本市場も頑張れば行けるじゃん。

そしてさらに面白いデータを見つけた。
野村総合研究所が2014年に出したデータだ。

・100万円以上の作品を購入した方の80%は初回の美術品購入金額は50万円未満

要するに美術品を1回でも購入に繋げることができれば将来的に高額な作品を購入する可能性が生まれるのである。

となれば次はどうすれば美術品の購入を活性化させるのか。
これは体感の話になるが課題はなんとなくわかる。
一部展覧会情報が探しづらいからだ。

画廊、ギャラリー、大規模なアートイベントは調べれば十分な展覧会情報が出てくるが、若手作家が貸しギャラリーで開催するものに関しては情報が非常に探しづらい。
若手作家の開催する展覧会情報や、画廊、ギャラリーの展覧会情報を収集しやすい環境を作れば美術品市場の活性化に繋がるのではないかと考える。

総括

日本は美術における認識は発展途上だが、高められる余地があると思うし、高めらるだけの状況も整いつつある。


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