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【短編】『大キライとロープとハサミ』

そのロープの片端には「大スキ」が。
そしてもう一方の端には「大キライ」がありました。
 
「大キライ」がなくなったら「大スキ」だけになる! 
 
そう思って「大キライ」の部分を、ハサミでチョキンと切りました。
「ふぅ、これで気持ちよく過ごせる」。
 
ところが、しばらくすると、いつの間にか
また「大スキ」の反対側の端は
「大キライ」になっているではありませんか。
 
「おかしいな、さっき切った時は気づかなかったのに」
 
だから、また「大キライ」の端を切りました。
「大スキ」だけになったら幸せに暮らせると思ったからです。
 
それなのに。
「また大キライができている、切ろう」
 
「大スキの端にも、嫌いな色が混ざってる。そこは抜こう」
 
「なんで、大スキばかりにならないの?また切らなきゃ」
 
「私ばっかり、なんでこんなことをしなきゃいけないの?」
 
切って、抜いてを続けても
いつまで経っても、「大スキ」だけの
ロープにはなりませんでした。
 
どうしても「大スキ」の反対側の端は
「大キライ」になってしまうのです。
 
 
そうしているうちに、そのロープは、細く、何も結べないほど
短くなってしまいました。
 
「おかしいな。私は何も間違ってないのに、
 なんで何も結べなくなっちゃったの?」
 
そのロープの名前は「ご縁」でした。


 

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