イグゼロ

色んな視点が持てるような記事を書いています。

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最近の記事

【短編】『理想的な都市』

もう、10年以上会ってない友人から 一通の手紙が届いた。 「お互いに仕事も ひと段落しただろうから、  会って思い出話でもしようじゃないか」 そんな内容だった。   たしかに、だいぶ仕事も落ち着いてきた。 ここらで、長めの休みを取って 彼に会いに行くのもいいかもしれない。 彼は現在、「理想的な都市」として有名な ある街に住んでいた。 私はどのような都市なのか、まるで知らなかったが とても豊かで安全な街のため、 世界中のリッチな人々が、こぞって集まっているらしい。   ものはた

    • 『カードの力』

      男は途方に暮れていた。 自分の人生は順風満帆だ、と思っていた。昔は。 ところが、年齢を重ねるにつれて 少しずつレールがずれていくような、 そんな感覚に見舞われるようになっていった。   昔は、もっとチャレンジ精神があったのに。 以前ならば、もっと無理が利いて、 欲しいものを手に入れてきたはずなのに。 「なぜだ....?  どうして、うまく行かないんだ...?」 うつむき加減で考えながら歩いていると、 「こんにちは」 と、どこからともなく現れた小男が声をかけてきた。   誰だ?

      • 【短編】『来世』

        どうやら私は、天に召されたらしい。   身体が軽いし、なんなら半透明だ。 空を飛んでいるみたいで、 はるか先の光の球に向かって勝手に進んでいる。   「お疲れさまー」 私に向かって笑顔で話しかけてくる人がいた。 「あなたは?」 「私?私は、あなたの前世。  普通はこんな風に話せることはないのだけれど  なんかの天のミステイクかもね」 私の前世と名乗る人は、そう言って肩をすくめた。   「あなたが私の前世.....?  そう。もう疑っても仕方ないから、それでもいいわ。  あれ?

        • 【短編】『余命』

          彼女は絶望していた。 ほんの少し前までは、自分の身にそんな不幸が降り注ぐとは 思ってもみていなかった。 しかし、先日知った現実は、彼女の世界の見え方を変えるのに 充分なインパクトを持っていた。   彼女が知らされた現実。それは、 「自分の余命が、あと3ヶ月である」 ということ。    彼女は、特に他の誰かと変わった毎日を送っているわけではなかった。 朝眠りから覚めればご飯を食べ、そのために働きに出かけ、 自由な時間には仲間と語らい、夜になれば眠る。   そんな普通の毎日の中で

        【短編】『理想的な都市』

          【短編】『なんでも叶うチケット』

          「あの」   男が仕事帰りの夜道を一人で歩いていると、 後ろから背の低い男が声をかけてきた。  「なにかご用でも?」 と男が聞くと、小男は 「ちょっと面白いものがあるんですが・・・」 と、男に紙の束を差し出して見せた。   その紙の束は、ちょうど映画のチケットくらいの大きさで かなり分厚い束だった。 男は「こんなところで、何か売りつけられるのか?」と 不審に思ったが、その小男の声には、 なぜか興味をかき立てられるような響きが含まれていた。   小男は、男が立ち去ろうとしないの

          【短編】『なんでも叶うチケット』

          【短編】『大キライとロープとハサミ』

          そのロープの片端には「大スキ」が。 そしてもう一方の端には「大キライ」がありました。   「大キライ」がなくなったら「大スキ」だけになる!    そう思って「大キライ」の部分を、ハサミでチョキンと切りました。 「ふぅ、これで気持ちよく過ごせる」。   ところが、しばらくすると、いつの間にか また「大スキ」の反対側の端は 「大キライ」になっているではありませんか。   「おかしいな、さっき切った時は気づかなかったのに」   だから、また「大キライ」の端を切りました。 「大スキ」

          【短編】『大キライとロープとハサミ』

          【短編】『支配者は宇宙人に誘拐された』

          「ふぅ、もうお腹いっぱいだ」   今日も召使いから運ばれてきた食事を食べ終わると、 私はソファに、ごろりと寝転んだ。   召使いは、私が何か用事を言いつけるのではないかと しばらく様子をうかがっていたが、 私がゆっくりと休んでいるのを見て、 静かに部屋から出て行った。   私が呼べば、すぐに隣室から飛んでくるだろうが 今日は、もう呼ぶこともないだろう。    「この時間は、実にいい」 あたたかな部屋で少しウトウトとしながら 私はつぶやいた。   変化のない、平凡な毎日。  

          【短編】『支配者は宇宙人に誘拐された』

          【短編】『思い出を買わない老婆』

          とある老人ホーム。   とりたてて、これと言った特長もない老人ホームの中で、 今日もホームに住む老人たちが会話を楽しんでいた。   「いやぁ、昨日は月まで旅行に行ってきましたよ。  月から見る地球が、本当に青く美しく、びっくりしました」  また別の老婦人が話す。 「私は、先週オリンピックに出ましたわ。  一着でゴールのテープを切ったあの感触は、  一生忘れられない思い出ですわ」 さらに別の男性は 「オリンピック、いいものですなぁ。  私も以前、マラソン、スキー、フィギュアスケ

          【短編】『思い出を買わない老婆』

          【短編】『 Called Rein 2118 』

          西暦2118年7月26日。 今日も、わたしはハウスキーピングに 明け暮れていた。   今は野菜を作るのも、他の食べ物を作るのも、 料理するのも、服を仕立てるのも、家を建てるのも、 ロボットが無料でやってくれるが当たり前。   コンピュータをメンテナンスするのもコンピュータがやり、 どんな作業も全部機械がやってくれる。   裁判も、政治的な判断も、 人間には到底思いつかないような 大局的な見地から、テクノロジーが決めてくれる。   わたしが生まれる前には、 「機械に支配されるの

          【短編】『 Called Rein 2118 』

          【短編】『魂を交換する男』

          薄暗いボロアパートの一室。   痛みきった古畳の真ん中に、 男が一人、首をうなだれながら あぐらをかいていた。   「はぁ、、、恵まれないなぁ」 男は、自分の過去を振り返っていた。   頭も悪かったわけじゃない。 運動神経も、そこそこよかった。 外見だって、人に不快感を与えるようなものじゃない。   でも、いつのまにか、 こんなボロアパートにしか住めないように なってしまった。   「俺に、もっと運があればなぁ。  せめて、もうちょっと環境が違っていたら  全然違う人生を歩め

          【短編】『魂を交換する男』