生ぬるい対話をしている経営と人事コンサルに捧げる

企業内での対話、ワークショップ、グループコーチング。

いいと思います。
私もよくやります。

でも、それって生ぬるくなってないですか?

対話、ワークショップ、グループコーチングの定義などはいったん横に置いて、ここでは対話としましょう。

対話の枠組みは大方決まっています。
・現在、過去、未来
・Mission、Vision、Value
・戦略、戦術、施策
・組織、個人
・論理、感情
・対立、協働
・ポジティブ、ネガティブ
・個人の価値観、Will・Can・Must

進め方の形式は、こんな感じ。
・説明、質疑応答、意見交換、議論、対話(※)
・ファシリ介入あり/なし
・経営(もしくは特定の役割)の介入あり/なし
・個人、グループ、全体
※対話の説明なのに、進め方の形式に「対話」と入れるのは、対話以外の手法も行われるから。

大体は以上の枠組みや進め方を組み合わせることで成り立っています。
後はポストイットとかホワイトボードとかの細かいことも大事。

例えば、50人ぐらいの規模になってきたスタートアップ企業で、今後のValue(ここでは行動指針の意味)をみんなで考えよう!という対話をするとします。
流れはこんな感じでしょうか?

1.社長あいさつ、対話の目的説明
2.歴史の振返り
 ①個人ワーク:これまでの仕事でのポジ・ネガを出す
 ②グループワーク:2のポジ・ネガをKJ法でまとめる
 ③全体発表:いくつかのグループから共有(拍手w)
3.Mission、Visionと戦略
 ①社長からMission、Visionと戦略の説明
 ②質疑応答
4.価値観ワーク
 ①個人ワーク:価値観の洗い出し、整理
 ②グループワーク:個人の価値観の共有
5.Value策定
 ①個人ワーク:Mission、Vision、戦略の実現のために必要な行動を考える
 ②グループワーク:グループ内でまとめる
 ③全体発表・質疑応答・意見交換
6.その後、経営が持ち帰ってバリューをまとめる

「会社のMission、Vision、戦略を先に話してしまったら、個々人が価値観を掘下げるのに影響を与えてしまうから逆の方がいいのでは?」という疑問はあるでしょうが、まあ、ざっくり大体こんなことをやるでしょ、ってことでラフに書いています。今回の話の目的は対話の設計じゃないので。

これで4時間~7時間ぐらいかけてやる感じですかね。

こういう設計は別に人事コンサルじゃなくて、何回かこういった対話の場やワークショップを経験していればできるようになります。
進行もさほど難しくない。

ちなみに、本論とずれますが、ガチ対話と言われる、対立や感情を深堀している対話の場は難易度が高く、「グループコーチングで学んできました。対話で世界平和を実現したいです」みたいな人にはできないです。(世界平和は私も望みます。)
一度、グループコーチングを学びたての人の対話の場に参加したことがありますが、反吐が出るほど意味のない「仲良しごっこ」で、反吐が出ました(あ、出るほどじゃなくて、出てしまったかw)。

本論に戻ると、先ほどの対話の場はさほど難しくない。
でも、人事コンサルとかが「今こそ対話しましょう」とか「みんなの価値観を出し合って一体感を出して、未来を創っていきましょう」とか適当なことを言うから、経営も「そうなのか」「やっぱり話し合いが大事だな」「メンバーの声を聴かなきゃな」と軽く考えてやってしまう。

でも、その前に考えてますか?

・経営としてプライオリティの高いイシューは何か?明らかになっているか?アクションしているか?
・戦略は明確になっているか?自社のコアバリューは?機能しているか?
・財務状態は?いつまで持つのか?何に優先的に投資するべき?
・人事システムはあるのか?おざなりになっていないか?
・現場でリーダー、マネジメントは育っているか?
・3か月後にキャッシュがなくなるとして、残ってほしい人は?
…などなどなどなど

これは別に50人規模の会社ではなくても、同じ問いを立てたい。

対話とかする前に、考えることないですか?と。

経営と人事はすごくシンプル。
経営は戦略を考え、人事は組織の面から戦略目標を実現するようにする。
もちろんMission、Vision、Valueは大事。
Mission、Vision、Valueが必要なのはどの組織でも同じですよね。
でもね、企業は利益を出すから企業なの。

必至こいて経営が考え抜いて、最後の最後に現場に任せる部分についてだけ考えさせないと、さっきみたいな対話の場は、なんとなくみんなが言いたいこと言って、いいこと言ってお終い。
いや、正直メンバーの発言は参考にはなるけど、経営には役に立たない。

何故ならば、メンバーはついてこれないから。
理由は、シンプル。
・階層性の差があるから。これは成人発達理論で説明がつく。
・情報に差があるから。経営、リーダー、マネジャーが知っていること、考えている、経験してきたことが半日や一日で共有され、メンバーに理解されるわけがない。
・能力が差がある、もしくは違いがある。リーダー、マネジャーはそれなりの知能がある人が多い。あとは、こういった対話に向いている能力とそうでない能力がある。メンバー層には向いていない人がリーダー、マネジャー層よりも多い。

生ぬるい対話は2つ。
1:経営が考え尽くしていないのに、現場と一緒に考えよー、現場の声を聴こー、みたいな責任放置対話
2:さっき余談で出したガチ対話にならない、みんながただ言いたいこと言ったり、いいこといったりするだけのワイワイ対話
(野中郁次郎氏が言うような、暗黙知の共有みたいのだと、技術部門がただ集まって話すだけみたいのもあり。あと、集まってワイワイするだけで身体性が同期して一体感が出たり、いい情報共有にはなるから、全ての生ぬるい対話を否定するわけではない。)

あとね、全員がMission、Vision、Valueに目覚めて、「わーい、やりがいのためにがんばるぞー!」なんてことは、理想にするのはいいけど(自分もそれが理想!)、いきなりはならないし、全員がなると思うのは危険。この話もどっかでちゃんとしたい。

ということで、対話の前に経営が考え尽くしてますか?
ガチ対話してますか?