見出し画像

(40)産後1週間の栄養バランスと心のバランスとマトさんのターキー。

パツキンのハイライトと黒髪と、黒のコンバースでいざ車に乗り込んだ。私達、この日からホテル住まいです。とりあえずの目的地は....

Asheville, North Carolina
(ノースカロライナ州、アッシュビル)

以前のお話にも出てきた土地ですので、聞き覚えのある方もいらっしゃるかと思いますが、そう、マトさんの家族が暮らしていたいた町です。

家族とは遠い関係のマトさん。私達はこの後ハワイへ引っ越す事を考えると、多分赤ちゃんを連れてわざわざノースカロライナまで帰って来ることはこの先限りなく少なそう。。。出産直後だけど、どうせホテル住まいになるのならば、どこのホテルでもいいんじゃないかと言うことで、義母 & 義祖父母にリサを一目会わせたくて、思いきってノースカロライナまで行ったんです。片道約9時間のロングドライブ。さすがに1泊途中で入れて、2日に分けてのドライブ。

生後7日、赤ちゃんは授乳さえすれば寝てくれたので、その点はドライブしてても苦ではなかった。時間見計らって搾乳しておいて、ボトルで授乳しながらのドライブ。オムツ変えたり、食事の時間で途中どこかで止まってという感じで4、5時間のドライブ。赤ちゃん連れてたから大変というよりも、むしろ大変だったのは、

•長時間座っていなくてはいけなかったこと。
•寝不足だったこと
•外食で食事のバランスが偏りがちだったこと

長時間座るのが大変だったのは、産後のジヌシ問題が絡んでまして(笑) 座っているのが辛くて、お行儀悪いけどダッシュボードに足を乗せて、なるべく患部はずらして座って何とかしのいだ。

寝不足なのは、新生児といればこれは仕方ない訳で。数時間置きの授乳でまとまった眠りが取れないから、1日中眠い。運転はずっとマトさんがしてくれたけど、運転してもらってる横で眠るのも申し訳なくて出来ないし、あの頃はカーナビもGoogle Mapもないから、地図を見ながらナビもしてたし、結局車では眠れない。

外食続き、これも結構なストレス。授乳してるからお腹が凄く減るんだけど、アメリカで外食って、かなり栄養バランスが偏る。何しろ毎回レストラン行く訳じゃなくて、時間選ばずに買えて、手軽でお値段なのはファストフードが多い。産後で何もかもが心配だった私は、お腹が空いても脂っこい、身体には悪そうなファストフードを食べるのが怖いというか、不安で余り食べたい気持ちになれなかった。お腹が空いても、なんとなく我慢しちゃってたんですよね。。。日本だったら大抵どこでもコンビニがあって、栄養バランスも少し考えて食べるもの選べたりするけど、アメリカのコンビニには、美味しいもの、身体に良いものは見当たらず。リンゴとか、バナナとかはあるけど、なんとなく買う気にならない。

ちなみになんとなく食事をしていたこの時期、心配、不安、産後7日間で自炊する気力、体力、環境が整わず。食事の時間がきちんととれなかったのもあり、生後5日目の検診では、妊娠時に13kg増えた体重もほぼ元に戻ってたからびっくりした。

ホテルに着くと、ベッドに座ってリサにゆっくり授乳をする。この頃は母乳も驚く程出ていて、普段の自分のサイズよりも数段大きくなった期間限定巨乳も出現して、搾乳すればボトルいっぱいに絞れちゃう。髪型は虎だけど、身体は牛だった。パンパンに張って痛いおっぱいをリサが飲んでくれると本当にスッキリした。でもそのスッキリと同時に、栄養分っていうか、同時に身体の成分がスゥーっと身体から出ていくような感じでもあって、どんどん疲れて萎れてく気分。

でも今考えると、出産直後、仕事に行ってマトさんもいなくて、新生児と2人でアパートに残されても、多分自分1人じゃ食事もろくに作れなかっただろうし、買い物にも行けないし、掃除だって出来なかったと思う。その点、ホテル住まいは掃除はしてもらえる。引っ越し休み中で常にマトさんが一緒だったから、必要な買い物はマトさんがしてくれたし、横に誰かが一緒にいてくれるということだけで安心感があった。

2日かけて辿り着いたノースカロライナ。約9ヶ月前に始めて会った義理の家族の家に、今度は2人ではなく3人で訪ねました。マトさんのおばあちゃん、おじいちゃん、。そしてママ。小さな、小さな和風顔のこけしちゃんを順番に抱っこしてくれた。

"She is so beautiful!"

みんなそう言ってくれた。でもあんまりマトさんの面影がなくてなんだか申し訳ない気もしたけど、それでもマトさんは

"ムカシノ ボクニ ニテルヨネ"

そんな風に言うもんだから、私としては更に申し訳ない。
そして、家族は一体何て言うんだろうか、この親バカに対して。。。

"ソウネー、ニテル!ニテル!"

親バカとっくに超えて孫バカだった(笑)


9ヶ月前よりは少し私の英語も上達して、簡単な会話も出来る位にはなっていて、ママやおばあちゃんの思い出話を聞いたりして、前よりは会話は弾んだと思う。赤ちゃんを連れての滞在だったので宿泊はホテルにしたし、2日位の滞在だったから、マトさんの実家にいた時間は少なかったけど、この時少し無理をしたけどリサをお披露目したのは間違ってはいなかった。マトさんのおじいちゃんは、リサをこの時見ただけで、数年後には他界してしまったので、もう1度会うことはなかったから。

2日間の滞在、マトさんのお友達と一緒に食事をすることになって、ファミレスみたいな所に入った。もちろんリサを一緒に連れていたけど、カーシートの中でよく寝てた。ちょこっと雑談して飲み物頼んで、さぁ食べ物注文!って頃、リサがふにゃふにゃと泣き出した。はい、授乳のお時間です!"育児あるある"です。お母さんは落ち着かないよ、本当に。マトさんとお友達には、車に行って授乳してくると伝えて席を離れた。車の後部座席に座っての授乳は、デッカイカーシートがあるからとっても狭い。静かな車内で、リサに授乳をしながら、もう眠気限界、私もウトウトしちゃったんですよね。赤ちゃん抱っこしてるから、熟睡は出来ないけど、それでももう目を開けられず。やっと眠ったリサを起こさないように私も動かない。何分くらいそんな事してたのか、気がついたのはマトさんが車のドアを開けた時。

既に食事も済ませて、お友達とも別れたという。それでもそんなに長い時間じゃなかったはずだけど、多分マトさんが気を利かせて早めに切り上げてくれたんだと思う。私は食事をたべられなかったから、何か買ってからホテルに戻ろうってマトさんが言うんだけど、もう食べる事より眠りたい。ベッドで横になって眠りたい、ただそれだけ。だから食事いらない、帰りたい、そう伝えて、ホテルに向けて出発した。

私とリサを部屋に送って、マトさんはなんか買いに行ったのか、すぐ戻ると言って出ていった。リサはスヤスヤと眠ってた。私は眠りたかったはずなのに、やや目が覚めちゃって、なんだかもう疲れ果ててしまって、思考能力ゼロ。今まで身体の限界なんて感じた事なかった私も、ここ数日で何でか両肩に出来物がぶつぶつと出始めて、暑くても肩を出すのが恥ずかしいくらい荒れてしまってた。しかも髪型がオーマイガーな虎カラーだから、帽子もかぶって、更にストレス。1人で結構落ち込んでたと思う。その時は必死で分からなかったけど、気持ちも身体も相当無理してたと思う。そんなタイミングで、帰って来ましたマトさんが。

"コレ、タベナサイ"

近くにあったCracker Barrel というアメリカのファミレスのようなレストランがあったので、そこに行って食事を買って来てくれた。怪訝な顔の私に、とにかく食べろと、そう言います。

私、気がついたらその日はまともに食事してなかったんですよね。そして何食べたい?って聞かれても全部身体に悪そうで選べないから食べたくなかった。マトさんは多分、私のイライラとか覇気のなさとかにちょこっと気がついたっぽくて、とりあえず食事しろと。

マトさんが買って来てくれたのは、ローストターキーと、グリーンビーンズ、マッシュポテトやらが乗ったサンクスキビングデーのディナーのようなプレートだった。

全然好みじゃなかったし、食べたくなかったけど、マトさんが優しかったし、食べろって引かないから食べることにした。

"お、お、美味しーーー(涙)"

私、お腹が空いてたんだ。
それは自分でも分かっていたけど、不安が先走り、外食、ファストフードは身体に良くないから、多分極力食べないようにしていたと思う。我慢して食べないほうが、よっぽど身体にも精神的にも良くないのにね。母乳のメカニズムみたいな事も分かってなかった私は、本に書いてあった"栄養バランス"という言葉を気にしすぎて、"心のバランス"を崩していた気がする。

出産後は赤ちゃんの安全、健康、色々な注意すべき点はあるけれど、育児、子育てにあたり大切なのは

母親の心の健康

今だからそう思えるんです。栄養バランスよりもこっち。
産後の母親ってもう無我夢中で必死だから、自分の事をケアする暇もなけりゃ、自分の心の状況がどうかなんて考える余裕もない。とにかく1日中半裸状態で授乳して、髪はボサボサ(私の場合はボサボサよりも虎カラーが問題)、身体は疲れ果ててる。食べなきゃ母乳だって作られにくいと思う。

幸い、うちはマトさんが優しかったから、何とか乗り越えていたと思う。このターキー食べないで、また一晩中授乳して寝不足で。。。を繰り返してたらどうなっていただろうと思う。

これから赤ちゃんを迎えるご夫婦、今まさに育児に奮闘している方々、産後の母親って、男性が想像するよりもずっと身体も心も疲れていると思います。寝れないし、赤ちゃん泣くし、心配だし、不安だし、ってか何で泣いてるんだー!どうして良いのかわかんねー!みたいな感じですから。多分 "あ、なんかうちの奥さんいつもイライラしてる"って思う方多いんじゃないかなって思います。ご家庭によっても状況違うだろうから、こうした方がいいっていう正解はないけど、産後の母親はそういう状態だって分かっててあげるだけでも違うかなと、私の経験談からするとそう思う。出産後、夫婦で子育て一緒にするのは何もオムツ替えやミルクをあげるだけじゃなくて、"産後の母親の心のケア"とかも大切な子育ての一部かと、今ではそう思う。

夢中で食べました、あのターキー。味がどうだったのかとかは記憶にないけど、ムシャムシャと頬張って、お腹が満たされて行くと同時に、とにかく身体が充電されていくような、そんな感覚。食べ終わったら眠くなって少し眠れた。

マトさんの運んできてくれたターキーのお陰で、また少し頑張れた。数日のノースカロライナの滞在を終えて、次の行き先はアラバマ州のモービルという街。この街で、待ち合わせをしていました。さて、誰と待ち合わせをしていたでしょうか?

次回に続く。

《今日のヒトサラ》

•ローストターキー

アメリカでは11月の感謝祭で食べるのが恒例のローストターキーですが、結構レストランとかのメニューにもあったり、冷凍食品とかにもあるのでいつでも食べられるけど、私はやっぱりあの時マトさんが買って来てくれたターキーが一番思い出深いかな。味は覚えてないけど、身体に染み渡る感覚をハッキリ覚えてる。

エッセイに登場する”出演者”である家族に”出演料”として温泉旅行をプレゼントするのが目標です。イッテQ!の温泉同好会の様な宴会をすべく、各自芸を磨いて待機中との事ですので、サポートしていただければ幸いです。スキ、シェアだけでもすごくうれしいです。よろしくお願いしますm(‐‐)m