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マーティン・フリーマンへの愛しみが募る/NETFLIXオリジナル『Cargo カーゴ』レビュー

マーティン・フリーマン、不思議な魅力を持った俳優さんだと思う。

彼との出会いは結構昔、『ラブ・アクチュアリー』から。

イケメンというわけではないかもしれないけど、時にははっとするほど紳士だったり、時にはマフィアみたいな圧も出せるその顔力。
あの少しこじんまりした全体のシルエットから醸し出される可愛さに反して、すぐ中指立てて毒のあるジョークを放つ曲者力。
その割に、『シャーロック』のワトソンしかり、『ホビット』のビルボしかり、とにかく曲者に振り回されてわたわたする(そしてしっかり成し遂げる)役が多くてしかもめちゃくちゃはまってる。

特に私が好きなのは、困り顔のバリエーション、独特の印象的なセリフ回し、全身(特に肩周り・手振りの使い方)を使って混乱ぶりを表現している時、そして凄く間の取り方が上手いところ。
なんだろう、本当に笑っちゃうくらい上手くて、『ホビット』のビルボなんて何時間でも眺めていられるなと思ったほど。

そんなマーティンの中の“静”の演技がすごく活かされた作品が、NETFLIXオリジナルで先日より配信開始されていたので早速鑑賞。
とにかく、マーティン・フリーマンが好きな人には必見の作品です。

※ネタバレあります。

■『Cargo カーゴ』----------------------------
あらすじ:
ゾンビが蔓延するオーストラリア。妻に噛まれてゾンビ化まで48時間をきってしまった主人公アンディが、愛する娘を生き延びさせるための方法を探して旅をする。
予告編:

実はこの作品、数年前に高評価を受けた短編映画がもとになっていて、YouTubeでも観られます。

個人的には、今から観るなら短編は見ないでこちらから観てもらった方が良いかなと思います。(鑑賞後に短編は観ました。)
なので、ここにはリンク載せないでおきます。

この作品は、どこの国までゾンビ化が蔓延してるんだろうとか、ゾンビたちは何に反応するのか?とか、ゾンビ化の後の情報と死を迎えるためのグッズを政府が配布してるって事はパンデミックからかなり時間が経っているんだろうか?とか、そういった「ゾンビ映画で押さえるべき設定」みたいなものに特に時間も描写も割かれていないし、そんなに重要じゃない。
そこは、前半の妻との別れまでで察するレベルでOK。

ゾンビ要素は最低限に抑え、愛する子供を守るための父の旅に焦点をあてているので、ゾンビものが苦手な人でもきっと大丈夫。
That'sゾンビ映画!みたいなNETFLIXのビジュアルはもったいないなあ。
(どう考えても写真のチョイスミスなサムネイル)


大切なのは、残された48時間の中で、自分がゾンビ化した後でも幼い娘が生き延びていけるように何とかする事。

“ゾンビ化世界で僕と君だけ”映画では、ウィル・スミスの『アイ・アム・レジェンド』も結構好きでした。
相棒の犬・サムと車を駆って狩りに出る毎日。
しかしある日サムは。。。というシーンで、とにかく泣いたものです。

あの時は、「残された側」の主人公だったけど、今回は「残して逝ってしまう側」の主人公の苦悩。
しかも残すのは、生後間もない赤ちゃん。
絶対に一人では生き延びられない。
最悪、ゾンビ化した時に一緒にいたら自分が喰ってしまう。。

そんな苦境をマーティンに背負わせるのは、NETFLIXのプロデューサーさんさすがだなと思います。
混乱と苦境の中に放り込むほど、あの巻き込まれ型演技のスペシャリストは輝くわけです。
今回も、妻がゾンビ化するわ、その妻に噛まれるわ、勘違いされて檻に閉じ込められるわ、自分もゾンビ化して痙攣がひどいわ、頼りにしてた人もダメな状況だわ、自分のゾンビ化がもう最終段階に来てるわ、、、と、とにかくファンとしてはおつらみの連続。
それでもこの作品が好きなのは、そんな主人公が見せる最後の優しさ、愛娘への愛、それを演じるマーティンを観てほしいから。

ラストシーン、ちょっと間違ったら滑稽に見えてしまう可能性もあったと思うけれど、それまで父から愛娘への愛情を見続けていたから、涙なしには見れませんでした。
(そして、それが短編にも共通した要素なので、マーティンファンはできればこっちから観てほしいんですよね)

映画としては、派手さはないけどしっかりと父の変化と心情を描いていて、つらい中に優しさを感じる良い作品。
短編にはなく長編化でプラスされた要素が、マーティン演じる主人公のキャラクターをよりはっきりさせ、心の旅路をより深く描く事に寄与している成功例だと思います。

NETFLIXで配信中。

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※そしてやっぱり、最後にこっそりオリジナルの短編も載せておこう。


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