30日間の革命 #革命編 19日目
馬場は体育館で江藤と話した後、その足で生徒会室へと戻った。生徒会室には副会長の仙波の姿があった。
「おはよう。こんな時間までどこに行ってたの?」
仙波は馬場の姿を見つけると、少し驚いたような表情を見せて質問をした。馬場は普段、朝は生徒会室で過ごすためこの時間に戻ってくることは珍しかったからだ。
「いや、ちょっとバレー部の練習を観に行ってたんだ。結構面白かったよ」
「……そう。江藤さんの様子はどう?」
「うん。まあ大方予想通りってところかな」
「でも意外ね。あの江藤さんがまさか革命派に寝返るなんて」
「いやぁ、まだ100%寝返ったって訳じゃなさそうだけど、もう気持ちはあっち側に行ってるね。でも良かったよ。念のため偵察隊を送っておいて。まんまと江藤さんを取られるところだった。美波もよく気づいたね、彼らの動きに」
「まあ私は彼らと同じ学年だし、情報も入ってきやすいのよ。それに今は強力な味方もいるしね。で、今後江藤さんはどうするの?」
「うん、彼女はまだ泳がせておくよ。彼女が白の会側につけば、文化祭に向けて動きも大きくなると思うから、その時を狙うよ」
「そう。なら、また動きがあったら報告するわ」
「ありがと。頼もしいよ」
馬場はこの時点で、坂本たちが再び革命を起こそうとしていることを既に知っていた。それだけではなく、江藤と接触をしていたことまでも把握していたのであった。それも全て仙波率いる『偵察隊』により、坂本や加賀の動きが常に二人の耳に入っていたからだった。
馬場は表面上では坂本や加賀の監視役として、江藤を置いていた。もちろん坂本や加賀、江藤自身もそのことを認識している。しかし、仙波の助言もあり、裏で彼らの動きを監視する『偵察隊』を作っていた。坂本たちと同級生である仙波が組織し、各クラスに数名ほど坂本らの動きを監視する役割を持った学生がいたのだ。
加賀と坂本が江藤と接触してことなども逐一仙波達に報告されていたのであった。
「やっぱ坂本先輩は凄いよ。こうじゃなきゃ、生徒会長になった意味がないもんな。次はどんな動きをしてくるか楽しみだよ」
馬場は未だに坂本と張り合うことを楽しんでいるようだった。そんな馬場の姿を見つめながら仙波は、
「楽しむのもいいけど、あんまり浮かれないでよ。相手はあの坂本さんなんだから。それにもう向こうも時間がないはず。次は大胆な動きを仕掛けてくるかもしれないし、もし江藤さんが本番に寝返ったとしたら、いくらこっちが動きを把握してたとしても結構大変よ」
と釘を指した。
「まあまあ、江藤さんの件にも手を打つつもりだから大丈夫だよ。それよりも俺が驚いているのは、美波だよ。前にも話したけど、最初は人気のある上級生と付き合うっていう話題作りのために近づいたんだけど、まさかここまで頭の切れる人だとは想像もしてなかった。特に手崎さんの件だね。あの作戦は俺も考えつかなかったし、美波がいなかったらバレー部の動きも読むことが出来なかったよ」
「……そんなことないよ。私はただ情報を伝えているだけだから。とにかく、これからも坂本さんたちの動きをしっかりとみていきましょう」
そうして二人は生徒会室を後にした。
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