30日間の革命 #革命編 57日目
その翌日、橋田は昼休みに手崎の姿を探した。橋田は女子バレー部のキャプテンになったものの、結局手崎との関係はうやむやになってしまっていた。橋田と手崎はお互いに自分が望んでいた結果を得ることが出来たのに、二人の距離は開いていった。
橋田は手崎のクラスや、図書室を訊ねてみるも、そこに手崎の姿はない。そこでクラスの人に話を聞いてみると、「最近友達と屋上でご飯食べている」という情報を得ることが出来た。そこで屋上へと言ってみると、6人ぐらいのグループでご飯を食べている手崎の姿があった。みんなで話しながら、時にお弁当の中身を交換したりしながら、とても楽しそうな様子だった。
橋田はそのままドアの陰に隠れた。かつて、手崎と屋上のベンチで話したことを思い出すと、少し胸が痛くなる。今の手崎はもう自分のことを必要としていない。そんな自己嫌悪感が橋田を襲う。もうこのまま手崎とは関わらず生活をした方がお互いのためになるんじゃないかという気持ちも生まれている。そのまま手崎に背を向けて教室へ戻ろうと一歩踏み出した。
しかし、そこで橋田の足は止まった。
”ここで手崎から逃げていいのか? 今、自分は女子バレー部のキャプテンとして伝統を壊すために動いているのではないのか? こんなところで、友達一人にも向き合えなかったら、何かを変えることなんて出来ない”
そんな気持ちが橋田の足を止める。そして、すぅっと大きく息を吸うと、振り返り、手崎の元へと歩みだした。ゆっくりと、まっすぐ手崎のもとへ。
「あのさ、急にごめん。手崎さんちょっといい?」
橋田は、お弁当を食べている手崎たちの前に立ち声をかけた。急に話しかけられた手崎たちは皆驚いた表情を浮かべている。ヒソヒソ話す手崎の友人たちには気も留めず、まっすぐ手崎だけを見つめた。すると、手崎の友人の一人が、
「あの、女子バレー部のキャプテンの橋田さんだよね? 手崎さんに話しって何?」
と橋田へと問いかけた。
「二人で話したいことがあるの」
橋田は短く答える。
「だから、その話って何なの?」
「二人きりで話したいことだからここじゃあ言えないよ」
「何それ。……もしかして、また手崎さんに意地悪しようとしてるんじゃないの?」
その言葉を聞いたとき、橋田は鋭い目つきでにらんだ。
「違うよ。そんなことしない。二人で話したいだけ。ただそれだけだよ」
橋田ににらまれ、その友人は少しひるみながらも、
「な、なによ。そんなこと信じられないよ。それに今だってこっちをにらんだりしてさ、やっぱり女子バレー部ってそういう人達の集まりなんでしょ」
と食い下がる。さらに
「だいたいね、いきなり話しかけてきて……」
とたたみかけようとしたとき、
「ごめん、ありがとう。もう大丈夫だよ」
と手崎が口を開き静止した。そして橋田を見つめ、
「いいよ。二人で話そう。でも、今は私たちの時間なの。だから、また今度にしてほしい。……部活が終わるまで待ってるから、その後でもいい?」
と話した。
「うん、わかった。ありがとう。ならまた場所とかは連絡するよ」
と橋田も答えた。そしてそのままその場から去ろうと背を向けて歩き出したが数歩歩いたところで振り返り、
「今日は楽しんでいるところに急に話しかけてすいませんでした」
と深く頭を下げ、再び歩き出した。
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