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30日間の革命 #革命編 89日

 神原は、自身が生徒会とつながりをもった経緯について話した。

 「……ってことは、特に俺たちを裏切ろうとかそういう意図はなくて、何となく仙波さんと話すようになったら密偵みたいな役割にさせられてたってこと?」

 森下は、神原の話を聞いてそう質問した。

 「……は、はい。何か取り繕っているように聞こえるかもしれませんし、仙波さんに責任をなすりつけているようにも聞こえるかもしれませんが、これが真実なんです。この前、白の会が再結成するミーティング現場を仙波さんにリークしていました。それは坂本さんと加賀君に阻止されたんですが、そこで自分の立場に改めて気づいたんです。自分が参加していた白の会と敵対する側に自分がいることに。本当に意志が弱くて、皆さんには申し訳ないと思っています」

 神原は再び皆の前で頭を下げた。

 「……と言ってもねぇ。何か『はいそうですか』って言える状況ではないよね。私もさ、元々は生徒会側の人間だったからこんな偉そうなこと言えた立場じゃないんだけどね。でも、だからこそ向こう側の手段とかはもっと警戒すべきだと思うんだ。それに、セトだって棚橋のことを疑ってたんだろ? それなのに、神原だけは簡単に許すって、ちょっと都合が良すぎるんじゃないのかな」

 江藤は神原を許そうとする加賀に対しても疑問を呈した。

 「……うん。それは十分わかっている。俺だって、棚橋さんを疑った以上、このまま神原をすんなりと元に戻すわけにはいかないと思ってる。でも、今革命に向けて一気に流れを作りたいんだ。それには神原の力が必要なのは事実。だからこうしてここに来てもらったんだよ」

 加賀は少し思いつめた表情で話した。

 「……セトはどうするつもりなの?」

 坂本は加賀へと問いかけた。加賀は、ぐっと拳を握りしめて、

 「……もし、もし神原がまだ生徒会側とつながっていて、今言ったことも嘘だったとしたら、俺は責任を取って学校を退学するよ」

 加賀のまさかの発言に一同は再び驚きに包まれた。

 「ちょ、ちょっと待てよ。何でお前が退学することになるんだよ」

 まずは森下が加賀に向かって話すと、

 「そ、そうだよ。セトが退学したところで何になるって言うんだよ」

 江藤もそれに続いた。

 「そ、それに、加賀君が退学しちゃったら白の会はどうするの? 君は白の会の幹部なんだろ? むしろ辞められたら余計に困っちゃうよ」

 棚橋も、森下たちに続いて加賀へと話した。

 「うん。みんなの言うことは十分わかる。でも、聞いて欲しい。俺はただ責任を取って辞めるって言ってるわけじゃない。退学する前には、この経緯を全て公表して退学する。つまり、生徒会は人を使って色々なことをやっていて、友達までも裏切らせたってね。そうすれば、ますます学校や生徒会に対する不信感は増していくと思う。それを革命へのきっかけにしてほしい。もし神原が裏切って、今回の波が消えたとしても、俺が退学することでまた大きな波は作れると思うんだ。俺は棚橋さんのことを疑った以上、これくらいの覚悟は必要だと思ってるし、これくらいのことを神原にも背負ってほしいと思ってる」

 加賀は力強く話した。加賀の言っていることは無茶苦茶だったが、その力強い話しぶりに、一同は何も言い返せずにいた。そして、一瞬の沈黙が流れる。その沈黙を切り裂いて、坂本が話を始めた。

 「……いいんじゃないかな。セトが自身の進退をかけても神原君を仲間に入れるってことは、それだけ今回の作戦は成功する可能性が高いって思ってるってことでしょ? それに、もし神原君が裏切っていたとしても、セトの言う通り、革命の活路は見出せそうだし。冷酷かもしれないけど、革命を起こすにはそれくらいのことは必要だと思う。私はセトの覚悟を信じて、神原君のことも信じようと思う。でも、神原君が裏切っていた場合は、本当に学校を退学してもらうわよ。それと、条件がもう一つあるわ」

 「条件?」

 「ええ。もし神原君が裏切っていかなったとしても、生徒会に上手く利用されていて、今回のことが全て生徒会に筒抜けだった場合も、セトには退学してもらおうと思う。つまり、神原君の意思関係なく、神原君が仲間に加わることによって白の会の行動が生徒会に把握されていた場合も含めるということよ。厳しいようだけど、裏切るつもりだったのかそうでなかったのかっていう真意は確かめようがないからね。ここは結果だけを見て判断したいと思うの」

 坂本は少し厳しい口調で加賀へと話した。重たい緊張感がメンバーの間に流れた。

 「……もちろんだよ。例え神原が裏切ってなかったとしても、生徒会に利用されてたら、その時点でも俺は退学するよ。その覚悟は出来ている。これも中途半端な覚悟じゃない。みんなの前に来る前に、このことは神原にも話してあることだから。何があっても途中で撤回したりしない。だから、今回の作戦は俺たちにやらせてほしい。お願いします」

 加賀はそう言い頭を下げ、続いて神原も同じく頭を下げた。

▼30日間の革命 第一部
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