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30日間の革命 #革命編 1日目

 都立武蔵中央高校では、毎年11月3日の文化の日に文化祭が行われる。ただ、文化祭と言えどみんながイメージするような楽しいものではない。各クラスで演劇を作り発表するというものだ。高校生にもなり演劇に力を入れるのはもはや演劇部くらいしかいなかった。特に3年生にもなれば、受験勉強とも重なり、ほとんどの学生は片手間でしか参加していなかった。

 しかし、3年1組だけは違った。「革命」をスローガンに掲げ、本気で文化祭に取り組もうとしていた。その中心にいたのが、元生徒会長である坂本小春である。彼女は学校で革命を起こすべく組織した「白の会」を率いて革命を実行に移そうとしたが、ギリギリのところで現生徒会長である1年生の馬場に阻止された。そこから彼女は鳴りを潜めたかのように見えたが、彼女の中で、革命の炎はまだ消えていなかった。

 生徒会長選挙が終わってから数日後、坂本は学校を欠席した。彼女は今まで一回も学校を休んだことがなかったので、周囲の人たちは少し驚いていた。同級生の加賀セトは、翌日坂本に欠席の理由を聞くことにした。

 「昨日は小春には珍しく学校休んだね。体調でも悪かったの?」

 「ううん。昨日はちょっとお墓参りに行ってたんだ」

 加賀の質問に、坂本はあっけらかんとして答えた。

 「お墓参り!? それだけ?」

 「うん。それだけだよ」

 平然と答える坂本に、加賀は少し戸惑った。

 「そ、そっか。でも何でまた学校休んでまでお墓参りに行ったの? 別に日曜日とかでも良かったじゃん」

 「そうね。別に急いで行かなくちゃいけない訳じゃなかったんだけど。でも学校だって毎日ある訳だから、1日くらい休んだっていいかなって思ったんだ」

 「何か小春にしては珍しいな。今までは1日も学校を休まず来てたのに」

 「もう生徒会長でもないし、1日くらいサボったって文句は言われないでしょ」

 そう言うと坂本はいつもと同じようにニコッと笑ってみせた。

 「……そうだよな。俺ももう生徒会副会長じゃないんだし、明日サボろっかな」

 加賀もこの前まで生徒会副会長を務めていたが、白の会の件により辞任し、坂本が選挙で敗れたため現在は生徒会役員から外れていた。

 「セトはだめだよ。真面目に学校来なきゃ。ちゃんと勉強しなさいよ」

 「なんだよそれ。自分だけずるいな」

 「冗談よ、冗談」

 加賀は少しほっとしていた。いくら坂本と言えど、あの大差で1年生に敗れたことはショックに違いないと思っていたからだ。なので、昨日の欠席もそれが影響しているのではないかと思っていたが、今の様子を見るといつも通りの坂本に戻っていた。

 「でもさ、この前は『革命はまだ終わりじゃない』って言ってたけど、具体的にどうするの? もう生徒会にも目をつけられてるから、白の会も動けなさそうだし、目立ったことは出来ないぞ?」

 加賀の問いかけに、坂本は少し表情を変えた。そして、真剣な眼差しで加賀に向かってこう話した。

 「そうね。だからこそ、やれることがあるわ。ここからが本当の革命の始まりだよ」

 坂本の言葉には、再び熱い革命への意志が感じられた。

▼30日間の革命 第一部
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