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30日間の革命 #革命編 29日目

 坂本の次の計画は教師を味方につけること。もしそれが成功すれば、革命を実行したあとも、大学への進学など、生徒たちの進路も確保することが出来る。そのために目をつけたのは担任の高橋だった。加賀の反対を押し切り、坂本は高橋に焦点をあて接触を試みることにした。

 ある日の放課後、ホームルームが終わり、教室を後にしようとする高橋に坂本が声をかける。

 「先生、ちょっと相談したいことがあるんですが、今日お時間ありますか?」

 坂本に呼び止められた高橋は少し驚いたような表情を浮かべていた。坂本から教師を呼び止めて相談なんてする姿を初めて見たからだ。

 「……悪い、今日この後は職員会議なんだ。急ぎの用事か?」

 坂本は少し間をおいてから、

 「……いえ、急ぎではないのでまたお時間あるときにお声がけしてもよろしいでしょうか?」

 と高橋へ訊ねた。

 「ああ、もちろん。ならすまんが、また今度つかまえてくれ」

 そう言い残し、高橋は職員室へと帰っていった。

 「あれ、先生今日だめだって?」

 その様子を見ていた加賀が坂本へ話しかける。

 「……ええ、会議みたいね」

 坂本は口元に手をあて、何かを考えているようだった。

 「どうしたの? 何か気になることでも?」

 「……ううん。多分私の思い過ごしかな。また今度先生に話しかけてみるよ」

 一方、職員室へ戻った高橋は、自席につき緑茶を口にし一息ついていた。そんな高橋に他クラスの担任が声をかけた。

 「高橋先生、明日の職員会議の資料、机に置いておきましたから。目を通しておいてくださいね。では私は部活があるので失礼します」

 「……ああ、ありがとうございます。目を通しておきますよ」

 そう、職員会議は今日ではなく、明日だった。高橋は敢えて坂本の相談を断っていた。それも嘘をついてまで。

 「さて、坂本たちに見つかるとまずいから会議室へ逃げるとするか」

 高橋は職員会議の資料を持ち、会議室へと移動した。

 「おっと、念のため念のため」

 会議室に入る前に、職員室にある自分の予定表を「職員会議」と書き加えた。そしてその読みは的中することになる。

 高橋が会議室へ入った数分後、職員室に加賀がやってきた。

 「すいません。高橋先生いらっしゃいますか?」

 当然高橋は職員室にいないため、他の教師は高橋の予定表を確認した。

 「高橋先生は今職員会議みたいよ。急ぎの用事?」

 「……あ、いえ。ちょっと暇だったんで雑談でもしようと思っただけなんで大丈夫です。失礼しました」

 そう言うと加賀は職員室を後にした。そして、廊下で待っていた坂本に報告をした。

 「やっぱ先生本当に会議らしいよ」

 加賀を職員室へ向かわせたのは坂本だった。

 「……そっか。やっぱり私の思い過ごしね。ごめんね使い走りみたいなことさせて。私が直接行くと、本当に疑ってるみたいに思われるから。帰りにアイスでも奢るよ」

 「マジで! 小春に奢ってもらえるなら使い走りでも何でもするよ!」

 そうして二人は帰っていった。

 高橋は会議室で一人、緑茶を飲みながら黙々と仕事を続けていた。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

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