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30日間の革命 #革命編 156日

 都立武蔵中央高校の文化祭がいよいよ始まる。全校生徒は体育館に集まるように放送が入った。学生たちはぞろぞろと体育館へと向かっていく。

 期待と不安。

 その両方が入り交じった一種異様な雰囲気をまとっていた。

 しばらくすると、全校生徒が体育館へと集まった。会場は少しのざわめきをみせている。体育館のステージには幕が降りており、その裏では最初に発表するクラスが準備をしているのであろう。机などの大道具を設置する音やそれらを指示する学生の声が聞こえていた。

 加賀たちの作戦では、革命を実行に移すのは全ての演目が終わった後である。それまでは、例年通りの文化祭を行う。学生たちの発表の場を奪いたくないという坂本の意向からそう決まっていたのだ。なので、白の会のメンバーを含め、この場にいる全員はまず自身のクラスの演目をしっかりとやり切ることを目標にしていた。

 全ての準備が整ったのか、体育館の明かりが全て消えた。そして、幕のしまったステージの前にスポットライトが当たると、そこから登場したのは棚橋だった。

 「全校生徒の皆さん、おはようございます! 文化祭実行委員長の棚橋です。いよいよ、武蔵中央高校の文化祭が始まります! 今年の文化祭は例年になくきっと一生の思い出になると思います。これまで準備してきたことをこの場にぶつけましょう!」

 棚橋は文化祭実行委員長として、文化祭全体の進行を任されているようだった。“一生の思い出になる”という棚橋の言葉は、何か含みを感じさせるようで、加賀は少し笑ってしまった。

 「ではまず、生徒会長の馬場くんからあいさつをしていただきます。馬場くん、よろしくお願いします!」

 棚橋がそう言うと、ステージの袖から馬場が姿を現した。棚橋よりマイクを受け取り、全体を見渡してから話しを始めた。

 「皆さん、おはようございます。生徒会長の馬場です。今日は待ちに待った文化祭当日です。我々1年生にとっては初めての文化祭なので、とても楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。私も今日と言う日をとても楽しみにしていました」

 馬場は軽快に話しをしていく。馬場が生徒会長に就任した経緯を踏まえても、白の会と生徒会が対立関係にあることはほとんどの学生が知っていた。そして、この文化祭で白の会が革命を起こそうとしていることも同様にたくさんの学生に知られている。なので、学生たちは馬場がどんなことを言うのか注目していた。また、加賀も馬場の話しには注目をした。

 “革命に協力してほしい”

 先日、馬場に直接お願いをしてからは馬場とは何もかも話していない。なので、現時点で協力してくれるのか、それとも反対に革命を阻止しにくるのか。それがまだわからないので、馬場の発言を注意深く聞いた。

 「それでは皆さん、間もなく文化祭が始まります。楽しんでいきましょう。ありがとうございました」

 そう言うと、馬場は早々にマイクを棚橋へと返し、ステージから去っていった。馬場の発言に注目してた分、加賀のみならず、全員が拍子抜けした。当たり障りのない、まさにテンプレートのような挨拶で去って行った馬場。そこからは、革命に反対なのか、それとも協力してくれるかは計り知れなかった。

 「馬場くん、ありがとうございました。ではいよいよ1演目がスタートしますが、皆さん準備はよろしいでしょうか? 最後まで楽しんでいきましょう! それではよろしくお願いします!」

 棚橋はお辞儀をし、ステージからはけていった。そして会場は再び暗転。少しの間を置き、幕が開いていく。最初の演目がスタートした。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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