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30日間の革命 #毎日小説39日目

 翌日加賀は、またいつもよりも早めに登校した。目的は坂本と会うためである。加賀は、坂本に話があるときは決まって早めに登校し、その道すがら話しをすることにしていた。何せ、坂本はいつも全く同じ時間、全く同じ通学路で通っているため、見つけやすいのであった。そして、いつも通り、通学中の坂本を見つけることが出来た。

 「小春! おはよう」

 「あらセトおはよう。今日も早いってことは、何か相談でもあるの?」

 坂本も、加賀が早めに登校するときは何か相談事があることに気づいていた。

 「あ、やっぱバレてる。まあ昨日の担当分けの意味を改めて聞きたくてね」

 「担当決め? 馬場君のこと?」

 坂本は、加賀が相談内容を全て伝える前に、その内容を察していた。

 「そ、そうだね。そんなに俺って分かりやすいかな? まあいいや。馬場君を計画班に入れた真意を聞きたいと思って」

 加賀は、気になっていたことを坂本へ聞いてみた。

 「そうね。理由は2つあるわ。1つは昨日話した通り、2,3年生の参加者をもっと集めるためよ。いくら馬場君でも、先輩の2,3年生を多く集めるのはさすがに難しいと思ったからね」

 「でも、それなら俺と馬場君が勧誘班もいいだろ? 馬場君を勧誘班から外したのには、もう少し理由があるんだろ?」

 「ええそうよ。だから理由は2つあるって言ったじゃない。人の話は最後までちゃんと聞くものよ」

 「へいへい」

 坂本は加賀をそう言い聞かせ、2つ目の理由を話しはじめた。

 「2つ目の理由は、馬場君の動きを制限するためよ。制限と言っても、別に馬場君が悪いことをしているわけじゃないわ。でも、昨日の彼の余裕を見る限り、彼も何かしら考えていることは確かね。ここ数日、私も忙しくて彼の動向を細かくは見れていないから、彼の反応を確かめるためにとりあえずああいう配置にしてみたけど、正解だったわね」

 「え? なら、奴の反応を確かめるためだけにあんな分担にしたってわけ?」

 「ええ。だから、意見があったら言ってと最初に聞いたでしょ」

 次の集会がとても重要なのは坂本自身が言っていたことなのに、そんな理由で配置を決めていたことに加賀は驚いた。

 「ちょっとちょっと。いくら馬場だからって、そこまでしなくてもいいだろ。それに、奴だって白の会の幹部なわけだし、俺とペアでもあるんだからさ。監視なら俺がやるよ。次の集会は重要なんだろ?」

 「ええ、重要だからこそよ。前にも言ったけど、彼を侮ってはいけないわ」

  坂本はそう言うと、少しあらたまってから話を続けた。

 「彼、隣のクラスの仙波さんと交際してるって話は有名だよね」

 「ああ、入学してすぐ3年と付き合ったってかなり噂になったよな。しかも、その相手が仙波さんだって言うんだから、俺らもかなり驚いたよ。そういえば、馬場が有名になったのも、そこからだよね」

 「そうね。これから話すのは、あくまで私の勘の話しだけど、恐らく彼は、自分自身の名前を売るために彼女と交際したと思うわ」

 再び加賀は驚いた。

 「いやいやいや、さすがにそれは考えすぎだよ。いくら馬場が狙ったって、仙波さんに断られる可能性だってあるわけでしょ。入学したての1年が3年と付き合うなんて失敗するリスクが高すぎるよ」

 坂本は表情を変えず、淡々と話しを続けた。

 「普通の学生ならね。高校生がドラマみたいにそこまで策略で動かないわよね。私も普通だったらそう考えないわ。でもね、馬場君は、中学の時にも同じようなことをしているのよ」

 「は? どういうこと?」

 「彼のプライベートなことだから、細かくは話せないけど、恐らく私のことを詮索するために、私の友人と交際していたことがあったわ。偶然かもしれないけどね」

 「いやいや。小春の言う通り、偶然だろ」

 「そうね。私も最初はそう思ったわ。ただ、私たちが卒業したあと、何の理由も言わず、すぐ別れたみたいよ。人の色恋に口を出すつもりはないから、深く詮索はしなかったけど」

 「……うーん。でも、やっぱり偶然だと思うけどな。それこそ小学校上がりたての奴に、そんな策略まで思い浮かばないだろ」

 「だから、私の勘だって言ってるでしょ。確証はないわ。でも、何か馬場君にはそういったことを感じてしまうの。だから、念のための措置よ」

 「ふーん、用心深いねぇ。まあ、小春がそこまで言うなら、俺は従うけどさ」

 加賀は、半分納得のいかないような表情で答えた。

 「でも、彼の教育係を外したわけじゃないわよ。担当は違っても、プライベート含めて彼と関わって、しっかり教育してね。馬場君もセトのようにまっすぐな人間になれるはずよ」

 坂本は、最後に笑顔になってそう言うと、教室へと走っていった。ちょうど学校の校門についた頃だった。

 「……なんだよそれ。そう言われちゃ、やるしかないじゃん。はぁ、やっぱ俺って単純なのかな」

 加賀の表情からは少し笑みがこぼれた。そして、坂本のあとを追いかけるように、走って教室へと向かった。


▼30日間の革命 1日目~38日目
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