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30日間の革命 #毎日小説97日目

 馬場が生徒会長になってから数カ月、学校の生活はいつもと変わらないものとなっていた。馬場はいつもと変わらない学校生活を目指し、行事やイベントなども特別なものをせず、粛々とこなしていった。

 白の会は、坂本が選挙に敗れたため、その活動は休止していた。馬場も公約通り、白の会の活動を生徒会として監視しており、生徒の間では白の会について話す人はいなくなっていた。

 「白の会もすっかり忘れられて、坂本さんたちも鳴りを潜めているわね」

 新たに生徒会副会長になった仙波は、馬場に話しかけた。

 「そうだね。意外とあっさり引き下がったなって感じかな。坂本先輩たちなら、あの選挙にときに大どんでん返しでもしてくるかなと思ったんだけど、何か拍子抜けだったよ」

 馬場はイスに座りながら、少しため息をつく。

 「なんかちょっと残念そうね」

 「残念だよ。正直、坂本先輩を超えることをずーっと目標にしていたからね。頑張って登った山が、案外低い山だったみたなね。そんな感覚だよ」

 馬場は目標を少し見失っている様子だった。生徒会長になることが目的ではなく、坂本を超えることが目的だった馬場にとって、生徒会の仕事は退屈でしかなかった。

 「これならまだ白の会にいたときの方が、毎日が楽しかったな。みんなも、最初は『史上初の1年生生徒会長』なんて盛り上がっていたけど、今はもう普通に戻っちゃってるしね。なーんか面白いことでも起きないかな」

 「そんなこと言ってないで、次は文化祭でしょ。色々と決めなくちゃいけないことも多いんだから、やる気出してよね」

 仙波はそう言うと、馬場の肩を叩いた。

 ここ、都立武蔵中央高校では毎年11月3日の文化の日に文化祭が行われる。文化祭と言っても、みんながイメージするような、屋台を出したりするようなものではない。各クラスで演劇を作り発表するといったものだった。それも学校側が、生徒たちが浮つかないようにと決めたこと。そのため、この文化祭を楽しみにしている学生はあまりいない。特に3年生は受験の時期とも重なるため、ほとんどの学生は適当に済ませていた。今年もその雰囲気は変わっていなかった。ただ1つのクラスを除いて。

 坂本はクラス委員として文化祭で発表する演劇についてを取りまとめていた。選挙の時、馬場から「革命を起こそうとしていた」と暴露された坂本だったが、その後も特に変わった様子は見られず、教師や生徒からの評判は下がることはなく、いつもと変わらない生活を送っていた。担任の高橋も、クラスをまとめる坂本の姿を見て安心していた。これまでと変わらず、またいつも通りの日常が送られる。そして、あれだけ進路について譲らなかった加賀も、最近は落ち着いて勉強をしている様子で、「世界に旅に出る」なんてことも言わなくなっていた。高橋の望む日常がまた訪れたことに、ひそかに喜びを感じていた。

 そんな3年1組の今年の文化祭のスローガンは「革命」であった。

▼30日間の革命 1日目~96日目
まだお読みでない方は、ぜひ1日目からお読みください!

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