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30日間の革命 #革命編 120日

 坂本は多くは語らずそのまま教室へと戻っていった。加賀はその後ろ姿をただただ見送るしかなかった。

 大丈夫だと言われてしまえばそれ以上何も言えない。朝少し遅れてきたこと以外は普段と変わらない坂本である。この違和感は自分だけなのか。この不安は思い過ごしなのか。加賀は自分自身にそう問いかける。

 「昨日のことも大したことなかったのかもしれないな。俺が気にしすぎなのかも。小春が大丈夫だって言うんだから大丈夫だろ。……よし、大丈夫だ」

 そうやって自分に言い聞かせるしかなかった。そして、加賀も教室へと戻っていく。教室では相変わらず楽しそうに準備が進められていた。加賀も準備に加わることにした。今は坂本を信じて余計なことを考えずに。

 時間はあっという間に過ぎていき、終業の鐘が鳴った。文化祭の準備は全て順調に終えることが出来た。しかし、その間やはり坂本の口からは"革命"という言葉は一切出てこなかった。

 全ての作業を終え、クラスメイトたちは片付けなり帰り支度を始める。その全てが落ち着いたことを確認した坂本は教壇へと立つ。そのことに気づいた学生たちは坂本に注目をする。そして、坂本が何も言葉を発さずとも自然とクラス全員の注目を集めた。

 加賀は少し安心した。やっぱり最後に何かを言うつもりだったんだと。加賀も荷物を置いて坂本に注目した。

 坂本は全体を見渡してからいつも通りの笑顔を浮かべてゆっくりと話し始めた。

 「みんな、今日は準備お疲れ様でした。みんなのおかげで無事に文化祭を迎えられそう。これまで準備してきてとっても楽しかったし、もっとこのクラスで色々やっていきたいなって改めて思いました。……今年の文化祭はいつもの文化祭とは違うものになるかもしれない。そう感じています」

 坂本がそう言うとクラスメイトからの拍手や歓声が上がった。見事にクラスが1つにまとまっていることを誰もが感じることが出来た。

 (この一体感を作るために小春は敢えて何もしなかったのか)

 加賀は心の中でそう思った。やっぱり全ては坂本の作戦で革命に向けて計画通りに動いているんだと改めて安心した。

 クラスが盛り上がりを見せる中、改めて坂本は口を開く。

 「みんなありがとう。……本当に……本当にここまで一緒にやってこれて良かったです」

 坂本は少し涙を堪えるように、言葉を振り絞っているようだった。その様子をみたクラスメイトの一人が、

「まだ文化祭終わってないのに泣くのは早いよ!」

 と声をかけると、クラス中に笑いが起きた。坂本の涙を見るのはクラスメイトも初めてだったが、この雰囲気の中なので特に疑問を持つ生徒はいなかった。

 坂本は、

 「……ありがとう。……本当にごめんね。ごめんないさい」

 と涙を拭いながら頭を下げた。クラス中からは「大丈夫だよ」「頑張れ!」という声がたくさんかけられた。クラスメイトのほとんどが、泣いてしまったことに対して謝っているのだと思い何も違和感を持っていないようだったが、ここでも加賀は少しだけ違和感を覚える。この場面で坂本が涙を流すこと、そして謝ったこと。これもクラスの一体感を出すための演出なのか。それとも本当に感動しているのか。もしくは別の意味があるのか。

クラス中が坂本に向けて温かい拍手が送られる中、加賀だけはどうしてもその違和感を拭えずにいた。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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