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30日間の革命 #革命編 154日

 文化祭当日。いつもより早くから学校は賑わいを見せていた。例年はいまいち盛り上がりに欠けるこのイベントも、今年だけは雰囲気が違った。

 白の会の発足から生徒会長選挙、女子バレー部問題と坂本の停学。それら全ての行き先がこの文化祭に向かっている。白の会のメンバー以外も、そんなことを感じていた。

 “今年の文化祭では何かが起こる”

 そんなことを予感させたため、学生たちの間には、楽しみと不安が混じったような混沌とした雰囲気が漂っていた。

 そんな学生たちとは対象的に、坂本に停学処分を下した学校側はいつもと変わらない様子だった。

 「……しかし、あの坂本小春がそんなことを考えていたなんてねぇ。人は本当に見かけによらないね」

 職員室内の小部屋から校庭を眺めながらそうつぶやいたのは、都立武蔵中央高校の教頭である鳥越克己だった。

 「はぁ、おっしゃる通りです。我々も坂本のことは“模範的な生徒”だと認識しておりました。まさか学校をひっくり返そうなんてことを考えているとは……。お手を煩わせてしまい申し訳ありませんでした」

 そう言い頭を下げたのは、野球部顧問である大友だった。

 「いやぁ、仕方がないよ。最近の学生は何を考えているのかますます分からなくなったよ。まぁあれだね。SNSだのYou Tubeだの、余計な情報が入りすぎて彼らを惑わすんだよ。あんなものなくても、学校で一生懸命勉強して良い大学に行き、良い会社に入ったり公務員にでもなれば自ずと幸せになれるんだよ」

 「はい。スマートフォンが普及してから、学生の学習意欲や生活態度も変わったように思います」

 「そうだろ? 我々の時代は何でも我慢してきた。だから、どんなに辛いことがあってもぐっと耐えられる忍耐力が自然と身についたものだ。でも今の学生はどうだ? 何かあればすぐにスマートフォンで調べられるし、人と繋がれる。我慢なんてしなくてもいい時代になったんだよ。だから、学校に対する不満があればすぐにクレームだの、今回みたいな反抗が起こるんだよ」

 「はい。おっしゃる通りですね」

 大友は鳥越の話しにただただ同意しながら聞くだけだった。なので鳥越の話は止まらない。

 「でもどうだ? 停学にした途端、学生の雰囲気も変わったそうじゃないか。所詮は学生なんだ。敵わないものがあると気づけば、良くも悪くもすぐ学習する。学校には逆らったらダメだってね。まあ今回は良い機会だったんじゃないかな。他の学生は元より、坂本くんも頭を冷やして学校へ戻ってくるだろ。そうなれば、またいつも通りの学校だ」

 「はい。ただ、まだ坂本のことを慕っていた学生たちが何やら動いているそうです。まあでも、坂本が不在の今、彼らが何を起こそうがそこまでの影響力があるとは思えませんが。念の為、警戒はしておきます」

 「そうだね。また万が一変なことを起こそうとする学生がいたら、坂本くんと同じ処分でいいよ。大人には絶対に逆らえないんだということを強く思い知らせてあげるといい。とにかく学生は教師の言うことにちゃんと従えばそれでいいんだ。変な気は起こさせないように、しっかり頼むよ」

 「はい。しっりと見ていきます」

二人はそんなことを小部屋で話していた。ドア越しに、高橋が二人の会話を聞いていたことを知らずに。

▼30日間の革命 第一部
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