30日間の革命 #毎日小説95日目

 学生たちにとって、激動の夏休みが終わりを迎えた。坂本や加賀、そして馬場達にとっても特別な夏となった。

 夏休み明け初日は再び全校集会が開かれ、最後には生徒会長を決める投票が行われた。あの時の演説は果たして学生たちに響いたのか。加賀たちは最後まで不安だった。ただ一人、坂本を除いて。坂本はこの日もいつもと変わらず穏やかな笑顔を見せていた。

 学生すべての投票が終わり、開票が始まった。選挙管理委員会により集計され、投票の結果は明日の朝掲示にて発表される。最後まで投票を見守った白の会のメンバーは、放課後に第二視聴覚室へと集まった。

 「いやー、終わったね。まじで明日の朝緊張して掲示板見れなさそう」

 森下はタオルで汗を拭きながらそう話した。

 「本当に体に悪いですよ、この緊張感は」

 神原も机に伏せて森下に同調した。

 「……もしさ、これで馬場が勝ってたら、白の会も今日で解散なのかな?」 

 加賀はぼそっとつぶやいた。加賀のつぶやきに、一同は沈黙した。

 「ご、ごめん。暗くさせるつもりはなかったし、負けるつもりも全然ないんだけど、もしそうなったらどうなるのかなって単純に思ってさ」

 加賀は慌てて取り繕った。

 「そうね。全学生による投票で馬場君が勝ったということなら、学生の総意として『白の会は不要』ってことになるから、解散するしかないわね」

 坂本は窓辺から校庭を見ながら、そう答えた。坂本の答えに、再びメンバーは沈黙した。

 「ほら、そんな落ち込むことじゃないわ。私たちがこうやって動いたことで、変わったこともあるかもしれないじゃない。それに先生たちだって、大慌てしてたよ。まさか私が革命を起こそうとしてたなんて、夢にも思っていなかったと思うし。先生たちの考え方も変わるかもしれないね」

 坂本の言葉から、今回の投票が馬場に集まることを悟っていることを感じられた。それは、どのメンバーも同じだった。実際に、選挙活動期間中も、必死にメンバー一丸となって広報活動を行った。地道に全学生へと声をかけていたが、その反応は冷ややかだった。

 「現実的じゃないよね。革命なんて起こして何になるだよ」

 そういう言葉もたくさんの学生から聞いた。だからこそ、今回の選挙は厳しい結果になることは、メンバー全員が感じていたのだった。

 ただ、加賀だけどこか府に落ちない点があった。あの坂本小春が、このまま簡単に引き下がるのかということだ。先ほどの発言も、もはや負けることを悟って、「私たちは頑張ったよね」とあきらめているような感じだった。

 そして演説もそうだ。もっと具体的に馬場を負かせるようなことも、坂本なら十分に言えたはずだ。今の坂本の落ち着き様が、逆に違和感を覚えさせた。

 「よし! ならいったん今日が白の会の最後の日かもしれないから、最後に写真撮って解散しよう!」

 ここでも坂本は元気にそう言った。森下、神原は本当に最後の記念だと思い、笑顔で写真に写った。

 ただ一人、加賀だけはその疑問が晴れず、困ったような顔で写真に写った。


▼30日間の革命 1日目~94日目
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