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ネオドリーム 毎日ネタ出し52日目

【タイトル】

ネオドリーム

【あらすじ】

この50年、俺はコイツと共に過ごしてきた。雨の日も風の日も、どんなひどい嵐でさえ、コイツがいればそれで良い。そして俺はもう間もなくこの生涯を終えようとしている。最後までこいつと寄り添えて人生を終えられたらそれが本望だ。俺は、自分の死に場所を探し求めて長い旅に相棒と出掛けた。

コイツと出会ったのは50年前。新車として発売されていたお前は世間から大注目を浴びていた。

「3世代乗り継げる車」

というコンセプトで開発されたのが、ハルミ自動車が社運をかけて販売した「ネオドリーム」だ。とにかく耐久性に優れたこの車。通常、10万キロ走ればどこか故障してもおかしくはないが、この車は新品同様の走りをする。

しかし、そのため価格は非常に高い。当時、普通の新車の価格は高くても数百万円ほど。しかしコイツの値段は破格の2千万円だった。どこの高級スポーツカーだと言わんばかりの値段に、多くの人は呆れて買う人はいなかった。ハルミ自動車は世紀の大失敗をしたということで、日本ならず世界から大注目を浴びていたのだ。

そうしてネオドリームは生産中止に追い込まれる。さらには販売元のハルミ自動車もこの大打撃により、倒産を余儀なくされた。

しかし、俺は当時たまたま当選した宝くじで偶然にもこのネオドリームを購入していたのだ。ディーラーからも強く勧められたのでつい買ってしまった。その当時、俺には家族がいた。息子もいたので、孫の代まで乗れる車だという謳い文句に乗せられてしまったのだ。

自慢気にこの車を買ったことを妻に告げると、顔面蒼白となった。そう、宝くじで当てたお金のほとんどをこの「ネオドリーム」につぎ込んでしまったからだ。世間から大バッシングを浴びている車にアホみたいな笑顔を見せて自慢してくる夫に、怒りを通り越して感情を失くしてしまったらしい。

その数年後に妻は子どもをつれて出ていってしまった。そして間もなくして離婚。息子も妻に引き取られ面会も許されなかった。残ったのは、このネオドリームのみ。私は働く意欲も薄れ、コイツと各地をフラフラ移動しながら人生を過ごしてきた。

でもさすがは「3世代乗れる」車だ。ここまで一度も故障はしたことがない。あのまま順調に人生を送っていれば、今頃孫がこの車に乗っていたのかもしれない。でも、未だに乗っているのはこの老いぼれ一人。

コイツもさぞ寂しかろう。

でも、俺は最後まで乗る。死ぬまでコイツと一緒だ。そうして俺とコイツの最後の冒険が始まったのだった。

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