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30日間の革命 #革命編 147日

 神原はカメラを回した。放課後の誰もいない図書室。そこで一人の女子生徒が学校を変えるため自らの思いをカメラに収める。

 手崎は一度大きな深呼吸をしてから話しを始めた。

 「わ、私は武蔵中央高校2年の手崎恭子です。今日は皆さんに私の気持ちを伝えるために動画を撮ってもらっています。そんなに長くは話しませんので、少しの間だけ聞いてもらえると嬉しいです」

 少し緊張した面持ちながらも、言葉ははっきりとしていた。

 「今回、3年生の坂本小春先輩が停学になったことは皆さんも既にご存時だと思います。そして、その理由が“革命”を起こそうとしたことだということも知っていますよね。坂本先輩は、白の会という組織を作りこの学校を変えるために色々な活動をされていました。私もその白の会に入っていました。……そして私は、坂本先輩と同じくこの学校は変えるべきだと思っています」

 そう言うと、少しだけうつむいてから、何か決意を決めたように再びカメラへと目線を上げた。

 「……学校は何で坂本先輩を停学にしたんですか。それは誰のためですか? 私達生徒のためですか? 違います。学校のためです。学校は生徒が本当に困っているときは何もしてくれません。……正直、私は少し前にこの学校でひどい仕打ちを受けていました。もちろん、今は大丈夫です。その人たちとも話しをして、私自身はそのことは引きずってません。……ただ、その辛かったときに手を差し伸べてくれたのは友達です。多分私が辛い目にあっていることは噂になっていたので皆さんも知っていましたよね。恐らく学校側の耳にも入っていたと思います。でも、何もしてくれませんでした」

 手崎は話しながら、膝の上においていた拳をぎゅっと握りしめた。

 「私を救ってほしかったっていう話しをしたいのではありません。でも、何で自分たちの立場が危うくなった時だけスグに動くんですか? 坂本先輩を停学にするなら、私が辛い目にあっていたときも学校は何か出来たはずです」

 手崎の言う通り、江藤を中心とした女子バレー部からの嫌がらせが起きていたとき、学校は何もしなかった。その時に手を差し伸べたのは、女子バレーを変えた橋田である。そこから救ってくれたのは、馬場であり、江藤を変えたのは加賀や坂本だった。

 「……私たちは良くも悪くも、学校に従うこと、先生の言うとおりに従うことに慣れてしまっています。おかしいと思うことは学校であれ、先生であれちゃんと言う。それは決してクレームとか反抗とかとは違うと思うんです。私たち一人ひとりが動けば学校は変えられます。坂本先輩がその道標を残してくれました。残された私たちが何をするのか。それは私たちに託されています。……私は私自身の意志で革命を起こしたいと思います。皆さんももう一度考えてみてください。……今日は生意気なことばかり言ってしまったかもしれませんが、最後まで聞いていただきありがとうございました」

 そう言うと手崎は深く頭を下げた。そして、神原はゆっくりと録画の停止ボタンを押した。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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