30日間の革命 #革命編 151日
メンバーとの最後の打ち合わせが終わった。あとは当日を迎えるだけ。帰り支度をし、メンバーとは校門で別れ、帰路につく。
「いよいよ明日か……。ここまで来るのに色々なことがあったなー。まさか、こんな形で高校生活最後の文化祭を迎えるとは思いもしなかった」
加賀は歩きながら一人つぶやく。すっかり日も暮れ、道路の街灯に明かりが灯っていた。色々なことを思い返しながら、ゆっくりと歩いていき、家へとたどり着いた。
「ただいまー」
玄関を開けると、何やら美味しそうな匂いがする。荷物をおろし台所へ向かうと、そこでは母親が料理を作っていた。
「お、今日は豚カツなんだ」
「あら、帰ってたの。手は洗った? もう少しで出来るから、さっさと着替えてきなさいよ」
「へーい」
母親に促され、加賀は自分の部屋へと向かった。制服を脱ぎ、部屋着へと着替える。なぜか今日は母親の料理が無性に食べたい。いつもなら、呼ばれるまでは部屋でゲームなどをして過ごすのだが、今日は待ちきれずリビングへと向かった。
「母さん、飯まだ? 何だったら手伝おうか?」
「え? もう少しかかるって言ったでしょ。手伝ってくれるなら、お皿とか箸とか出しちゃって。あ、机ちゃんと拭いてからよ」
「はいはい、やりますやります」
加賀は母の言う通りに机を拭き、食器を並べ始めた。その様子を見た母は、
「……なに今日は。やけに動きがいいじゃない。いつもなら呼ばれるまで何もしないくせに」
「腹減ってんだよ。早く食べたいからね」
「……あんた、何か学校で悪さでもしたの?」
「はあ? なんでよ」
「あんたが積極的に手伝う時って、だいたい何かやらかしたときだからよ。なに? また先生と進路のことで揉めたとか?」
「ちがうよ。何もないって。ただ本当に腹へっただけだよ」
「……ふーん。白状するなら今のうちよ?」
「だから何もないって。たまには息子を信じてくれよ」
そんやりとりをしていると、2階から妹が降りてきた。手伝いをしている加賀の姿を見ると、
「あれ? お兄ちゃん帰ってたんだ。何してるの?」
「見りゃわかんだろ。夕飯の準備を手伝ってるんだよ」
「えー、またお兄ちゃん何かやらかしたの?」
「何でお前までそうなるんだよ!」
「だって普段やらないことをやってるんだから、疑いを持つのは当然でしょ?」
「うっ……。俺って普段何も手伝ってないっけ?」
妹と母は顔を見合わせて、
「うん。全く」
と口を合わせて答えた。
「はいはい。日頃の行いが悪いってやつね。すいませんでしたね。ただ、腹へってんのも本当だし、別に今は何もやらかしてないから安心して。ほら、お前も手伝えよ」
加賀はそう言うと再び手を動かした。
(“今”はね。明日次第では家族にも迷惑かけちゃうけど、それも覚悟のうえだ)
心の中でそうつぶやいた。
「よし、豚カツ揚がったわよ。さ、食べよ食べよ」
母はそう言い、それぞれの皿に豚カツを振り分ける。香ばしい良い匂いが部屋の中に漂う。
「待ってました! よし、食おうぜ」
「お兄ちゃん急ぎすぎ。もっと落ち着かないとモテないよ」
「うるせー。まったく生意気な妹をもったもんだ」
そんな冗談を言いながら、食卓へとついた。そして家族と顔を見合わせ、
「いただきます」
と声を合わせた。この日の夕食はいつもと違う味がした。そして何より、家族と過ごす何気ないこの日常が尊く感じた。
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