![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/40891665/rectangle_large_type_2_265a96441701496caad887330519317a.png?width=800)
営業時代の話part⑬
おはようございます!
今日は「営業時代の話」をお送りします!
▼第1話はコチラ
それでは本日もよろしくお願いします!
※登場人物、企業、団体は全てフィクションです。
●へべれけ
社長は登場するや否や、すぐさま大将へビールを頼んだ。厨房の奥からは再び、
「はいよー!」
と威勢の良い大将の声が店内へと響いた。
「何なに? まだみんな1杯しか飲んでないの? ダメだよそんなんじゃ。ほら、次々! 頼んで頼んで!」
社長はそう言うと、私たちにメニュー表を渡した。
「は、はい。え、えーと……何飲もうかな」
我々がそう悩んでいるところに大将がビールを持ってきた。
「はい、生お待ち! あれ、社長さんじゃない。久しぶりだね」
「お、来た来た。いやー、最近出張が多くてね、本当は週3くらいで来たいんだけど中々来れなくて寂しんだよ。あ、ごめんけど、この二人にも生二つ追加でお願いね」
「はいはい、ちょっと待っててね」
大将はビールを置いて、再び厨房へと慌ただしく戻っていった。
「もう、二人が決めるの遅いから勝手にビール頼んじゃったよ。ビールで良かった?」
社長はあきれ顔で我々に向かってそう話した。私たちはメニュー表をさっと机におき、
「す、すいません。ビールで全然大丈夫です!」
と答える。
「ならさっさと決めなよ。そういう決断力も大事だぞ」
「は、はい! すいません」
今日の会議で怒られたばっかりの私たちは、またしても社長に怒られてしまった。その後、すぐさま大将は私たちにビールを運んでくれた。
「まあまあ、そんなことはいいんですよ。まずは乾杯しましょう、乾杯を」
藤橋さんはそう言うと、強引に乾杯の音頭をとった。ここから地獄が始まることをこの時の私はまだ知らなかった。何故ならこの時の時間はまだ7時前。どれだけ飲んでも、9時には帰れるだろうと踏んでいた。しかし、藤橋さんと社長の飲みを甘くみていた。
次から次へとお酒を身体に流し込んでいく。そして、それは酔いが回るほどペースは上がっていった。我々も、焼き肉を食べる暇もなく、とにかく二人のペースについていくのがやっとだった。そして、その後二人は今日の会議のことでヒートアップしていく。
「俺が二人の教育係だろ? 何で会議に遅れて来た人にいきなりあんなことを言われなくちゃいけないんだよ」
藤橋さんは社長にそう詰め寄った。社長も、
「そりゃ二人の出来があまりに悪いからだろ? お前が教育係についていながら、何やらせてるんだよ。もっと高いレベルを目指せよ」
と言い返す。どんどんと声が大きくなる二人を新人の私たちがなだめる。しかし、当然矛先は我々にも向く。
「そもそもお前たちがこの1週間何やってたんだよ? ちゃんと本読んだのか?」
酔いも回った社長は、再びそう我々に詰め寄る。
「すいません、すいません」
この場ではただ謝ることしか出来なかった。気づけば時計の針が9時を回っていた。そんなやり取りがしばらく続き、そして私自身もたくさんお酒を飲んだので、疲れが出て来ていた。その時、
「お、もうこんな時間か。早いなー」
とトイレから戻った社長が時計を見てつぶやいた。私は心の中でガッツポーズをし、ようやく解放されると喜んだ。そして、
「大将、そろそろお会計お願いね」
と厨房に向かって話した。厨房からは相変わらず威勢よく
「はいよー!」
という声が聞こえてきた。そして、大将が伝票を持ってくると、私たちは財布をかばんから取り出す。すると、
「ああ、いいからいいから。俺が払うよ」
と社長はここの飲食代を全て支払ってくれた。4人で相当飲み食いしたので、結構な額になったと思うが、何も気にせず支払う様子を見て、そこはさすがだと思った。ふぅつ一息つくと、
「おい、お前らこっち来い」
と藤橋さんが私たちを呼ぶ声がした。藤橋さんの方を見ると、店の出口で扉を開けて待っていた。
「いいか。こういう時は、すぐに出口でスタンバイして、ドアを開けておくんだよ。これから、絶対こういう礼儀は忘れるなよ」
あれだけ社長に歯向かっていた藤橋さんとは思えないほど、強めの口調で私たちにそう教えた。そして、私たちは藤橋さんの後ろにつき、社長が出ていくのを見送る。
「ごちそうさまでした」
三人声を合わせてそう挨拶した。
「いいよいいよ。これくらい。さ、次はどこへ行こうか」
私は頭を下げなら、自分の耳を疑った。
「そうですね。やっぱあそこじゃないですか?」
藤橋さんは上機嫌で答える。
「お、いいね。なら次行くか。君たちもおいで。良いところに連れてってあげるよ」
社長がそう言う間に、藤橋さんはタクシーを捕まえていた。素晴らしいほどの連携だった。
もう開放されると思っていた私はひきつった笑顔になりつつ、
「あ、ありがとうございます」
と言い、タクシーへと乗り込んだ。
To be continued…
▼アニメ制作時代の話はコチラ
色々な実験を行い、その結果を公開していきます!もし何かしらの価値を感じていただけましたら、サポートしていただけますと幸いです!