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30日間の革命 #革命編 118日

 加賀はそのまま帰宅した。携帯を何度見ても、坂本からの連絡は入ってこない。

 「……大丈夫。きっと何にもない」

 加賀は自分にそう言い聞かせてその日は就寝した。そして翌日、加賀は早く起き早めに登校をした。理由はもちろん坂本に会うためだ。昨日何を高橋と話していたのか、職員室に呼ばれた理由は何なのか。とにかく不安を消したい。その一心で通学路を駆けていった。しかし、坂本と会うことはなかった。学校に着くも坂本の姿はない。

 「あれ、小春まだ来てないのかな」

 加賀はしばらく辺りを見渡すも、やはり坂本の姿は見つからなかった。

 「どうしたんだろ……。もしかして休みとか?」

 それからしばらくして、江藤が教室へと入ってきた。

 「おはよう。あれ、今日小春は?」

 江藤も教室を見渡して、坂本がいないことに気づいた。

 「いや、まだ来てないんだ」

 「そっか。小春にしては珍しく遅いね」

 「……昨日さ、小春と一緒にいた?」

 「昨日? ううん。昨日は私は部活見に行ってたから別々に帰ったよ」

 「……そっか」

 「? 何かあったの?」

 「い、いや、何でもないよ」

 江藤は昨日坂本が高橋と話していて、職員室に呼ばれたことを知らない様子だった。恐らく、そのことを知っているのは自分自身のみだと加賀は思った。そして時間は過ぎていき、始業を告げる鐘が鳴った。

 (今日は休みか)

 と加賀が思ったとき、教室前方の扉が開いた。誰もが担任の高橋が入ってきたと思ったが、入ってきたのは坂本だった。そして、同時に高橋も教室へと入ってきた。

 「みんな揃ってるかー。なら出席とるぞー」

 高橋はいつも通り少し気怠そうに出席を取り始めた。そして、坂本もいつもと変わらない様子で自席へと着いた。

 「小春、珍しいじゃん。こんな時間に登校するなんて」

 加賀がそう声をかけると、

 「……ごめんね」

 と一言だけ謝った。なぜこの時坂本が謝ったのか、加賀は分からなかった。しかしそれ以上加賀は話しを聞くことは出来なかった。

 高橋は出席を取り終わると、そのままホームルームへと移行した。

 「えー、もう少しで文化祭を迎えるので、今日の5、6限目は準備の時間となる。これが最後の準備時間となるからしっかりと準備しておけよ。……最後の文化祭だ。悔いのないようにな」

 高橋はそう言うと、文化祭に向けてのプリントを配り始めた。いつもドライな高橋が「悔いのないように」ということが珍しく感じた。

 この学校では毎年文化祭と称した演劇発表会が行われる。各クラス1演目を行い、審査員となっている教師に採点してもらい、その点数を競うというものだ。毎年この文化祭を本気で行う者はいない。しかし、今年は坂本を中心として、「革命」というクラススローガンを掲げ前に進んできた。皆も賞を取るつもりで稽古を重ねてきたのである。

 その文化祭がいよいよ1週間後に迫ってきた。

▼30日間の革命 第一部
まだお読みでない方は、ぜひお読みください!

▼30日間の革命 ~第二部革命編~
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