30日間の革命 #革命編 157日
ステージの幕が開き、最初の演目が始まった。ステージに立っているのは1年生。初めての文化祭で、全校生徒の前で演技をしなければならないのだから相当緊張しているのだろう。しかし、それを感じさせないフレッシュな立ち居振る舞いで、観客を盛り上げていく。観客たちも自然に楽しんでいた。先ほどまでの異様な緊張感は徐々にほぐれていくことに、演者も観客たちも気づいていた。
そして、1クラス目の演目が無事に終わった。幕が閉まると、会場は大きな拍手に包まれた。あの緊張感の中で、初めての文化祭にも関わらず演目をやり切った1年生に対する賛辞であろう。少しの間、拍手は鳴り止まなかった。
そして、次の演目が始まる。この雰囲気に乗ったのか、次のクラスも熱の入った演技を繰り広げる。会場もそれを感じ、大いに盛り上がる。その次の演目も、またその次の演目も会場を大きく湧かせた。例年になくこの文化祭は盛り上がりを見せていた。
「なんか今年の文化祭めっちゃ面白くない?」
「どのクラスも気合い入ってて、見入っちゃうね」
そんな会話が至るところで聞こえてきた。
その後も演目は次々に進んでいき、プログラムも中盤へと差し掛かった。ここで一旦昼休憩が入る。体育館には明かりが入り、学生たちは各々昼ごはんを食べに散らばった。
加賀と森下と神原は昼食を共にするため、情報処理部の部室へと集まった。
「何か雰囲気めっちゃ良いじゃん、今年の文化祭」
森下はパンを食べながらそう話した。
「そうですね。どのクラスもクオリティが高くて、思わず見入ってしまいましたよ」
神原も持参の弁当を食べながら話した。
「これって俺たちにとっては追い風なのかな?」
森下はそう問いかけた。
「うーん、どちらともとれるね。この盛り上がりのまま革命へとつながればプラスだし、逆に俺たちがこの雰囲気を壊すような形になればマイナスだろうな」
加賀は腕を組みながらそう答えた。
「そっか。せっかく盛り上がったこの雰囲気を、俺たちが出しゃばることで壊しちゃうってこともあり得る訳ね。なーんか難しいな」
「そうですね。今、会場は文化祭を楽しむ雰囲気になっています。だから、やり方を間違えれば水をさしてしまうことにもなりかねませんね」
「そうだな。だからこそ、俺達のやり方と協力者が必要なんだよな」
加賀がそうつぶやくと、
「協力者って馬場のこと?」
と森下が問いかける。
「……うん。この雰囲気に水をささずに革命を起こすためには俺たちだけじゃ正直厳しいと思う。小春もいないしね。悔しいけど、小春並みの影響力を持つのはこの学校で馬場くらいだよ。あいつが協力してくれれば上手くいく」
「……今日の馬場くん、珍しい大人しかったですね。挨拶も驚くほどシンプルでしたしね」
「あいつ、何を考えてるんだろうな。加賀が話したときは肯定的じゃなかったんだろ?」
「うん。肯定的どころか、かなり否定的だったな。でも、ふっかけておいたから、もしかしたらっていう可能性はある。そのためにも何とか雰囲気を革命に持っていくしかないな」
時間は刻一刻と過ぎていき、昼休憩の終わりを告げる鐘が鳴った。
▼30日間の革命 第一部
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